round 1

April 9 2010
MotoGP COMMERCIALBANK GRAND PRIX OF QATAR
第1戦 カタールGP

2010年カタールGPプレビュー

ロードレース世界選手権(WGP)第1戦カタールGPが、9日、ドーハ郊外のロサイル・インターナショナル・サーキットで開幕する。カタールGPは、2004年にスタート、08年にはWGP史上初のナイトレースが行われ、世界中の注目を集めた。ナイトレース2回目となる昨年は、砂漠の国を襲った異例の大雨のために、MotoGPクラスの決勝レースが月曜日に順延された。今年はナイトレース3年目の開催。3月には2日間の合同テストが実施され、各チームともに準備万端で開幕戦を迎える。

今年は、レギュレーションの変更で、シーズン18戦を通して使えるエンジンが6基に制限される。そのためにウインターテストでは、各陣営ともに、これまでのエンジンパフォーマンスをキープ、もしくは向上させながら、耐久性の向上を図るテストを行ってきた。Hondaもシーズン6基に対応するニューエンジンを投入、2月にはマレーシアで2回、3月にはカタールと計3回の合同テストで着実にメニューを消化してきた。この3回のテストでHonda勢の4チーム6選手は、タイトル奪還に向け、2010年型RC212Vのセットアップに全力を尽くしてきた。

昨年ランキング3位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、万全の体調で開幕戦を迎える。この数年、ウインターテストやシーズン中のケガの影響で、100%の状態で戦うことがほとんどできなかった。しかし、昨年のシーズン中盤戦以降、身体の状態もよく、冬の間のトレーニングも完ぺきにこなすことができた。今年は筋力面の強化を図り、体重も増加したという。久しぶりに万全の体調で挑んだ2月、3月の合同テストでは、エンジン、車体、今年から使用するオーリンズ製のサスペンションのセッティングに多くの時間を費やした。開幕戦に向けて、一つひとつ課題をクリアしてきたペドロサ。07年、08年のカタールGPは3位。昨年はケガの影響で11位に終わっているだけに、2年ぶりの表彰台と開幕Vに闘志を燃やす。Repsol Honda Teamで5年目のシーズン。念願のタイトル獲得に向けて開幕戦からファンを魅了する走りを披露する意気込みだ。

Repsol Honda Team2年目のシーズンを迎えるアンドレア・ドヴィツィオーゾは、ウインターテストを順調に消化した。2月のマレーシアテストでは、2010年型RC212Vのセットアップに集中。走行するごとにタイムを更新。順調な仕上がりを見せた。その集大成ともいえる3月のカタールテストでは、ベストタイムもアベレージでも、十分に優勝を狙える状態に仕上げることに成功。高いモチベーションで開幕戦を迎えることになった。MotoGPクラスデビュー戦となった一昨年の大会は4位。昨年は5位と、表彰台にはあと一歩届かなかったが、今年はペドロサとともに開幕Vを狙う。

ウインターテストで好調な走りを見せたランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、開幕戦に向けて気合を入れる。Hondaチームは今季、すべてのチームがオーリンズ製のサスペンションを使用する。Hondaチームに移籍して3年目のデ・ピュニエは、Honda勢ではただ一人以前からオーリンズ製のサスペンションを使用してきた。そのアドバンテージを生かし、ウインターテストでは、順調にセットアップを進めた。Hondaチームに移籍した一昨年は、アグレッシブな走りも転倒の多い選手だったが、昨年は安定した速さで成長を感じさせた。しかし、シーズン中盤、トレーニング中にケガをしたことでランキング11位に終わった。今年はさらなる飛躍のシーズンになることは確実で、開幕戦から上位を狙う意気込みだ。

Team San Carlo Honda Gresiniは、ラインナップを一新して2010年を迎える。最高峰クラス8年目を迎えるベテランのマルコ・メランドリは、3年ぶりに同チームに復帰する。過去、Hondaでは、05年にランキング2位、06年に4位、07年5位というすばらしい成績を残してきた。ウインターテストでは、ニューマシンのセットアップに集中、RC212Vのパフォーマンスを引き出す作業に全力を尽くしてきた。ドライでもウエットでも、そして“フラッグ・トゥ・フラッグ”でもすばらしい速さを見せる選手だけに、開幕戦からの活躍に大きな期待が寄せられている。

一昨年の250ccチャンピオンで、メランドリのチームメートのマルコ・シモンチェリは、大型ルーキーとして大きな注目を集めている。昨年は、250ccクラスに参戦しながら、スーパーバイク世界選手権にもスポット参戦し、そのデビュー戦で表彰台に立つ活躍で話題を集めた。ウインターテストでは、アグレッシブな走りで転倒も多かったが、恵まれた身体を生かした豪快な走りに注目されている。

昨年、そのシモンチェリとし烈なタイトル争いを繰り広げ、日本人としては8年ぶりの世界チャンピオンに輝いた青山博一(Interwetten Honda MotoGP)も、シモンチェリ以上の注目を集める。ウインターテストでは、走るごとにタイムを短縮、着実に前進した。2月のマレーシアテストでは、Repsol Honda Teamの両選手に肉薄する走りを披露、その非凡な才能が話題を呼んだ。昨年、250ccクラスで最終戦までし烈な戦いを繰り広げた青山とシモンチェリ。Honda勢のルーキー2人の活躍が、MotoGPクラスで注目を集めることは必至。開幕戦の戦いぶりに熱い視線が注がれている。

また、この2010年開幕戦では、昨年まで61年にわたり開催されてきた2ストローク250ccクラスの代替となる、Moto2クラスがスタートする。Hondaは、このMoto2クラスに唯一のエンジンサプライヤーとして参画。市販スーパースポーツ車CBR600RRの直列4気筒エンジンをベースに、Moto2専用に開発したエンジンを全チームに供給する。

Moto2クラスではエンジンと同様にタイヤもダンロップのワンメイクとなり、競争の激化は必至。昨年MotoGPに参戦した高橋裕紀、GP2年目の富沢祥也と、次戦に母国GPを控える2名の日本人ライダーの走りにも注目だ。

コメント

ダニ・ペドロサ(MotoGP)「シーズン最初のレース。すごく楽しみにしているし準備もできている。開幕戦だからといって特にこうしたいというのもなく、神経質にもなっていない。いつも通り、予選と決勝に向けて、着実にセットアップを行い、ベストを尽くすだけだ。ロサイルは、とても特殊なサーキットで、精度の高いセットアップが要求される。ハンドリングの機敏さとストレートのスピードも要求される。一昨年のロサイルは、ウインターテストから開幕戦に向けて、信じられないほど大きなステップを刻むことができた。今年もそういうレースにしたいし、しなければならない。今年は体調も万全。これまでのシーズンに比べてとてもいい状態を作ることができた。とにかく、チームとともに可能な限りのリザルトを得るために全力を尽くしたい」

アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP)「長かった冬休み。そして、ウインターテストを終えて、いよいよ開幕戦を迎える。こうしてまた、新しいシーズンが始まるのかと思うと楽しみで仕方がない。今年のウインターテストはとても充実していた。僕もチームも、モチベーションは高い。セットアップは確実に進んだし、大きなステップを刻めた。開幕戦に向けて大きな自信を得ることもできた。前回のカタールテストの最終日の状態でスタートして、セッティングを進めていきたい。トップの何人かの選手に比べて、まだタイムは遅れているが、その差を縮めるために、まだまだがんばらなくてはいけない。カタールGPは夜に行われる特別な大会で、夜間は湿度が高くなるので注意しなければならない。開幕戦に向けて準備はできている。開幕が待ちきれない」

ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP)「いよいよ開幕戦を迎えることができる。この日を待ちきれなかったし、走り出すのをとても楽しみにしている。この冬のテストは順調だった。マレーシアでは、神経質な部分も多く、セッティングにやや戸惑ったが、前回のカタールテストで大きく前進できた。レースタイヤでいいラップを刻むこともできたし、何もかもが順調だった。しかし、トップグループと戦うには、まだ足りない部分もあるので、決勝に向けて、さらにいい状態を作り上げていきたい」

マルコ・メランドリ(MotoGP)「前回のカタールテストはあまりうまくいかなかったが、まだ、やれることがたくさん残っているし、レースウイークを楽しみにしている。きっと、決勝に向けていいペースの状態を作れると信じている。カタールは夜にレースが行われる特別なレース。2005年はすばらしいレースができた。バレンティーノ(ロッシ)と最終ラップまでバトルして、2位でフィニッシュしている。07年もいい戦いができた。テストでは、ここまでいい結果を残せていないが、これからが本番。ベストを尽くしたい」

マルコ・シモンチェリ(MotoGP)「MotoGPクラスのデビュー戦に向けて、もっといい状態を作り上げられると思っていたが、テストではいい結果を残せなかった。特にセパンはよくなくて、カタールも十分ではなかった。我々は、まだまだするべきことがたくさんあるし、しなくてはならない。前回のテストのデータを基に、今回はさらに前進できると思うし、Hondaの力を信じている。ロサイルは嫌いではないし、走っていて気持ちいいサーキットだ。ナイトレースは、時間帯によってコンディションが変わるので、特に、いくつかの右コーナーでは注意する必要がある。いよいよ開幕戦。楽しみだ」

青山博一(MotoGP)「シーズンオフの身体作りはうまくいったと思うし、コンディションはとてもいい。明日からの走行がとても楽しみだ。例年に比べて、ウインターテストの日数が短くなり、実際、もっと走りたかったという気持ちはあるが、みんな同じ条件なので仕方がない。とにかく、決勝に向けて少しでもよい状態に仕上げて決勝に挑みたい。250cc時代の目標は常に優勝であり表彰台に立つことだったが、MotoGPクラスの初めてのレースということで、目標をどこに持っていけばいいのか、正直、戸惑っている。順位の設定はまだできる状態ではないが、ベストを尽くしたい」

山路敏幸|Repsol Honda Team 監督「昨年からマシンの性能向上に努めてきたが、やり足りない部分もあり、万全の状態とはいえない。今週、両ライダーに最終的な仕様を決めてもらうことになる。ライダーに目を向ければ、これまでのシーズンは、ケガなどもあって、体調作りがうまくいかなかったが、今年は両選手ともに万全の状態で開幕戦に挑むことができる。マシンが決まれば、結果はついてくると思う。2010年型は昨年の進化版だが、今大会も決勝に向けて引き続きセットアップを進め、万全の状態に仕上げたい」

高橋裕紀(Moto2)「レースを始めてからいままで、でき上がったマシンでレースをするということに慣れていたし、今年のように、ウインターテストでマシンを開発しながらシーズンに挑むというのは初めての経験となる。やることがたくさん残っているので、今回も、一つひとつ着実にこなしていきたい。Hondaのエンジンのパフォーマンスには満足している。エンジン、タイヤはみんな同じ条件なので、当然厳しい戦いになるが、それだけにやりがいはある。いいモチベーションで開幕戦に挑むことができる」

富沢祥也(Moto2)「どのチームも同じだと思うが、初めてのシーズンなので、やること満載の状態で開幕戦を迎えることになる。僕も初日にやらなければならないことがたくさんある。最後のテストとなったヘレステストの状態で初日の走行に挑み、セットアップを進めたい。Moto2のマシンでカタールを走るのは今回が初めてなので、走ってみないと分からないという不安はあるが、きっちりと走って、完走したい」