第10戦イギリスGP決勝は、断続的に雨が降り続ける不安定な天候となり、今季3回目のフラッグ・トゥ・フラッグが適用されるレースとなった。序盤はほぼドライ。しかし、次第に雨足が強くなり、中盤からはウエットコンディションとなった。
スタートからフィニッシュまで積極的な走りを見せたアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)が、MotoGPクラス初優勝を達成した。2位はコーリン・エドワーズ(ヤマハ)。続いて、最終ラップの最終コーナーまで2番手を走行していたランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)が今季初表彰台となる3位でチェッカーを受けた。以下、Honda勢は、アレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)4位、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)9位、ガボール・タルマクシ(Scot Racing Team MotoGP)12位という結果だった。序盤トップを走ったトニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)は、転倒リタイアに終わった。
今季初表彰台がMotoGP初優勝となったドヴィツィオーゾは、ペース配分の難しいコンディションの中で、終始、積極的な走りを見せた。予選5番手からオープニングラップ4番手につけると、3周目に一気に首位に浮上。その後、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)、ペドロサに先行を許すも、中盤に入ってロレンソが転倒、ペドロサがペースを落としたことで2番手へ。9周目から19周目までロッシとトップグループを形成したが、20周目のシケインでロッシが転倒を喫し、ドヴィツィオーゾがトップに浮上した。終盤はデ・ピュニエとエドワーズに猛追されるも、再びペースを上げたドヴィツィオーゾが、MotoGPクラス2年目のシーズンで初優勝を飾った。
今季初表彰台を獲得したデ・ピュニエは、予選10番手からオープニングラップ8番手につけた。その後、エリアスが転倒したことで順位を上げ、マルコ・メランドリ(カワサキ)、ジェームス・トーズランド(ヤマハ)をかわし、トップグループに続いた。中盤には濡れた路面の中でペースの上がらないペドロサとし烈な3番手争いを繰り広げ、その後ロッシの転倒で2番手に浮上。最終ラップにはエドワーズとし烈な2位争いを繰り広げた。最終ラップの最終コーナーでエドワーズに先行を許すも、難しいコンディションの中ですばらしい走りを披露、今季初表彰台を獲得した。
その2人を視界に入れながら猛追撃したデ・アンジェリスが、今季ベストリザルトとなる4位でチェッカーを受けた。オープニングラップ10番手につけたデ・アンジェリスは、デ・ピュニエを追う形で着実にポジションを上げていった。前戦ドイツGPで今季ベストの5位でフィニッシュし、今大会はさらに順位を上げて表彰台まであと一歩の4位。上り調子をアピールした。
序盤、トップグループを走ったペドロサは、濡れた路面の中を慎重な走りで9位でフィニッシュ。過去2戦は優勝、3位と本来の走りを取り戻したことを強烈にアピール。今大会もフリー、予選ではすばらしい速さを見せた。決勝では身体の状態が回復したばかりという条件で、難しいコンディションの中を確実に走りきった。
タルマクシは今季ベストリザルトとなる12位。オープニングラップを制して快速ラップを刻んだエリアスは、トップグループの中で5番手を走行していた8周目に痛恨の転倒を喫しリタイアに終わった。
転倒したロッシは再スタートして5位。トーズランド6位。中盤にレインタイヤを装着したバイクにチェンジしたメランドリが7位。メランドリ同様、バイクをチェンジしたロリス・カピロッシ(スズキ)が11位。クリス・バーミューレン(スズキ)13位。スタートの時点でレインタイヤをチョイスしたケーシー・ストーナー(ドゥカティ)14位。ニッキー・ヘイデン(ドゥカティ)が15位。ロレンソは転倒リタイア。タイヤの選択、戦略など、チームの総合力が問われる一戦だった。
250ccクラスは、全車がレインタイヤでスタートを切ったが、序盤にライン上が乾き、中盤以降はほぼドライになる難しいコンディション。その中、オープニングラップから積極的な走りを見せた青山博一(Scot Racing Team 250cc)が独走で今季3勝目を飾った。2位にアルバロ・バウティスタ(アプリリア)。青山は総合ポイントでもバウティスタに15点のリードを築いた。3位にマティア・パシーニ(アプリリア)。以下、Honda勢はラファエレ・デ・ロサ(Scot Racing Team 250cc)7位、ヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)10位、富沢祥也(CIP Moto-GP250)は終盤に転倒を喫してポジションと落とし、再スタートを切って15位でチェッカーを受けた。
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | 4 | アンドレア・ドヴィツィオーゾ | Honda | 48:26.267 |
2 | 5 | C.エドワーズ | ヤマハ | +1.360 |
3 | 14 | ランディ・デ・ピュニエ | Honda | +1.600 |
4 | 15 | アレックス・デ・アンジェリス | Honda | +8.958 |
5 | 46 | V.ロッシ | ヤマハ | +21.622 |
6 | 52 | J.トーズランド | ヤマハ | +22.465 |
7 | 33 | M.メランドリ | カワサキ | +35.284 |
8 | 88 | N.カネパ | ドゥカティ | +38.769 |
9 | 3 | ダニ・ペドロサ | Honda | +42.112 |
10 | 36 | M.カリオ | ドゥカティ | +45.845 |
11 | 65 | L.カピロッシ | スズキ | +53.190 |
12 | 41 | ガボール・タルマクシ | Honda | +1:12.315 |
13 | 7 | C.バーミューレン | スズキ | +1:20.398 |
14 | 27 | C.ストーナー | ドゥカティ | +1Lap |
15 | 69 | N.ヘイデン | ドゥカティ | +1Lap |
RT | 99 | J.ロレンソ | ヤマハ | +22Laps |
RT | 24 | トニー・エリアス | Honda | +23Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | 4 | 青山博一 | Honda | 45:17.516 |
2 | 19 | A.バウティスタ | アプリリア | +5.723 |
3 | 75 | M.パシーニ | アプリリア | +36.161 |
4 | 58 | M.シモンセリ | ジレラ | +36.776 |
5 | 63 | M.ディ・ミリオ | アプリリア | +41.418 |
6 | 6 | A.デボン | アプリリア | +41.938 |
7 | 35 | ラファエレ・デ・ロサ | Honda | +57.483 |
8 | 40 | H.バルベラ | アプリリア | +59.975 |
9 | 12 | T.ルティ | アプリリア | +1:14.852 |
10 | 55 | ヘクトル・ファウベル | Honda | +1:16.927 |
15 | 48 | 富沢祥也 | Honda | +1Lap |
19 | 53 | V.ドゥビーズ | Honda | +2Laps |
22 | 8 | バスティン・シェゾー | Honda | +2Laps |
RT | 14 | ラタパーク・ウィライロー | Honda | +9Laps |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | 60 | J.シモン | アプリリア | 9:12.301 |
2 | 24 | S.コルシ | アプリリア | +0.390 |
3 | 45 | S.レディング | アプリリア | +3.072 |
4 | 18 | N.テロール | アプリリア | +6.209 |
5 | 73 | 中上貴晶 | アプリリア | +9.509 |
6 | 39 | L.サロム | アプリリア | +11.211 |
7 | 8 | L.サネッティ | アプリリア | +11.572 |
8 | 77 | D.エジャーター | デルビ | +13.703 |
9 | 7 | E.バスケス | デルビ | +14.101 |
10 | 44 | P.エスパルガロ | デルビ | +15.422 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | V.ロッシ | ヤマハ | 187 |
2 | J.ロレンソ | ヤマハ | 162 |
3 | C.ストーナー | ドゥカティ | 150 |
4 | ダニ・ペドロサ | Honda | 115 |
5 | C.エドワーズ | ヤマハ | 103 |
6 | アンドレア・ドヴィツィオーゾ | Honda | 94 |
7 | M.メランドリ | カワサキ | 79 |
8 | ランディ・デ・ピュニエ | Honda | 74 |
9 | C.バーミューレン | スズキ | 67 |
10 | L.カピロッシ | スズキ | 66 |
11 | アレックス・デ・アンジェリス | Honda | 60 |
12 | J.トーズランド | ヤマハ | 55 |
13 | N.ヘイデン | ドゥカティ | 47 |
14 | トニー・エリアス | Honda | 47 |
15 | M.カリオ | ドゥカティ | 34 |
16 | N.カネパ | ドゥカティ | 28 |
17 | S.ジベルノー | ドゥカティ | 12 |
18 | 高橋裕紀 | Honda | 9 |
19 | ガボール・タルマクシ | Honda | 5 |
順位 | コンストラクター | 総合ポイント |
1 | ヤマハ | 230 |
2 | Honda | 164 |
3 | ドゥカティ | 156 |
4 | スズキ | 89 |
5 | カワサキ | 79 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント | |||||||||||||||||
1 | 青山博一 | Honda | 159 | |||||||||||||||||
2 | A.バウティスタ | アプリリア | 144 | |||||||||||||||||
3 | M.シモンセリ | ジレラ | 115 | |||||||||||||||||
4 | H.バルベラ | アプリリア | 114 | |||||||||||||||||
5 | M.パシーニ | アプリリア | 80 | |||||||||||||||||
6 | A.デボン | アプリリア | 73 | |||||||||||||||||
7 | T.ルティ | アプリリア | 67 | |||||||||||||||||
8 | ラファエレ・デ・ロサ | Honda | 67 | |||||||||||||||||
9 | ヘクトル・ファウベル | Honda | 65 | |||||||||||||||||
10 | R.ロカテリ | ジレラ | 56 | |||||||||||||||||
14 | ラタパーク・ウィライロー | Honda | 38 | |||||||||||||||||
18 | 富沢祥也 | Honda | 18 | |||||||||||||||||
21 | 青山周平 | Honda | 10 | |||||||||||||||||
23 | V.ドゥビーズ | Honda | 5 | |||||||||||||||||
26 | バスティン・シェゾー | Honda | 1 |
順位 | コンストラクター | 総合ポイント |
1 | アプリリア | 193 |
2 | Honda | 171 |
3 | ジレラ | 122 |
4 | ヤマハ | 2 |
順位 | ライダー | マシン | 総合ポイント |
1 | J.シモン | アプリリア | 154 |
2 | S.ガデア | アプリリア | 104 |
3 | B.スミス | アプリリア | 98.5 |
4 | N.テロール | アプリリア | 94.5 |
5 | A.イアンノーネ | アプリリア | 93.5 |
6 | P.エスパルガロ | デルビ | 68.5 |
7 | M.マルケス | KTM | 56 |
8 | S.コルテセ | デルビ | 55 |
9 | J.フォルガー | アプリリア | 54 |
10 | S.レディング | アプリリア | 44.5 |
順位 | コンストラクター | 総合ポイント |
1 | アプリリア | 212.5 |
2 | デルビ | 96 |
3 | KTM | 58 |
4 | ロンシン | 15 |
5 | Honda | 11 |
コメント
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP 優勝)
「MotoGPで初めて優勝することができて、本当にうれしい。最高峰クラスの優勝にはやっぱり特別なものがある。今日は本当に厳しいレースだったし、最後までがんばれたことがとてもうれしい。今日は3種類のレースをしたような気分だ。序盤はほとんどドライだったが、バレンティーノの後ろで走っているときはどんどん濡れてきた。終盤は濡れたコンディションの中で、自分がレースを引っ張ることになった。そのすべてのパートでうまく乗れたと思うし、今日の自分のパフォーマンスにとても満足している。今日のようなコンディションでは、序盤の3周でタイヤの温度を上げるために多少リスクを冒してもペースを上げなくてはいけないと思った。バレンティーノの後ろについているときは楽についていけたが、彼が転んだときにはタイヤが冷え始めていたし、そこからペースを上げていくのはとても難しかった。コーリン(エドワーズ)とランディ(デ・ピュニエ)がギャップを縮めてきたときは、リスクを冒さず慎重に走り、ラスト2周でペースを上げようと思っていた。今日は難しいレースで勝てたが、次はドライコンディションで優勝したい」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP 3位)
「今日の結果は、自分にとってもチームにとってもすばらしいものだった。今日は路面がとても滑りやすく、最後まで集中しなければならなかった。慎重に走らなければならなかったし、ストレスが大きいレースだった。今日はスタートがよくて1周目から好位置につけられた。それからはリスクを犯さず自分のペースをキープしようと思った。自分の前でエリアスが転び、ペドロサもペースが上がらなかった。ペドロサを抜き、ロッシが転んで2番手に上がれたが、後ろからエドワーズが1周で2秒も速いペースで追い上げてきた。トップのドヴィツィオーゾとの差も縮まったが、あまりにもリスクが大きいので2番手争いに集中することにした。とにかく今日の結果はとてもうれしい。チームのみんなに心から感謝したい」
アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP 4位)
「今日は自分のキャリアの中でもっとも難しいレースの1つだった。そのレースで4位になれて本当にうれしい。今日は最後まで攻めの走りができたし、それをキープすることもできた。ペースはとてもよかったが、トップグループには少し届かなかった。昨年のレースは自分のミスで転倒していい結果を残せなかったので、今日の結果には本当に満足している。この結果は、自分の力を証明できたと思うし、自分の将来にとっても、とても有意義なレースになった。チームには本当に感謝している」
ダニ・ペドロサ(MotoGP 9位)
「まず最初にこの厳しいレースで優勝したアンドレア(ドヴィツィオーゾ)におめでとうと祝福の言葉を贈りたい。今大会は金曜日、土曜日と速いペースで走れたが、それを決勝レースの結果につなげられず本当に残念だ。今日は雨の影響でタイヤの温度をキープすることができず、思ったようにコントロールできなかった。グリッドでのタイヤチョイスは正しかったと思うが、10ラップを過ぎたころにピットに入ってバイクをチェンジしようかと思った。しかし、ウエットタイヤに交換した選手も、スリックとタイムは変わらなかったし、バイクチェンジの効果はなかったかも知れない。フラストレーションのたまるレースだった。こんな結果に終わったが、バイクの状態も自分も調子もよくなっていることは間違いないので、次のブルノではいいレースをしたい」
ガボール・タルマクシ(MotoGP 12位)
「とてもハッピーだ。得られたリザルトはもちろん、我々が選んだ戦略もベストだった。初めは、刻々と天候が変化する中でのタイヤチョイスに迷ったが、スリックタイヤを選択したことは正しかった。雨量は増え続けていたものの、マシン交換をせずにコースに残ったことが、このレースのカギとなった。マシン交換は不利だと思ったし、走り続けることに決めたことが正解だった」
トニー・エリアス(MotoGP リタイア)
「今日はいいレースができると思っていたので本当に残念だった。スタートもペースもよかった。しかし、リアタイヤが白線に乗ってしまい転んでしまった。今日はトップに立って、しばらくの間レースをリードすることができた。何台かに抜かれたが、トップグループにとどまれる自信もあった。残念なレースに終わったが、今日の内容は大きな自信になったし、次のレースでこの悔しさを晴らしたい」
山野一彦|Repsol Honda Team 監督
「ドヴィツィオーゾにとって今日の優勝は大きな意味を持つし、彼とスタッフには心からおめでとうと言いたい。この勝利で、彼はやっとスタート地点に立てたと思う。この結果をベースにこれからもっと強いライダーに成長してほしい。今日はとても難しいレースだったし、この勝利は大きな自信になったはずだ。ダニにとっては、本当に難しいレースだった。彼にとってはフラストレーションのたまるレースだったが、リスクを冒さず最後まで走りきったことは、後半戦の戦いに大きな意味を持つと思う。今日の結果に彼はがっかりしているが、やっと回復してきた身体の状態。この数戦のレース内容を見れば、今日の9位は決して落胆するものではない。アメリカでダニが勝ち、今回はドヴィツィオーゾが勝った。次のレースも勝利に向けて全力を尽くしたい」
青山博一(250cc 優勝)
「今日はドライでレースがしたいと思っていたし、レインタイヤでグリッドについたときは厳しい戦いになると思っていた。しかし、走り出してからは、周りのペースが遅く感じられるほどフィーリングがよくて、今日はタイヤの持ちを考えず、いけるところまでいこうと決めた。それで6秒くらいリードを広げることができて、それからは後ろとのギャップを見ながら走った。しかし、後半はタイヤの消耗が激しくてどこでも滑っていた。タイヤとの格闘になって苦しかった。今日は一歩間違えばすぐに転んでしまいそうなコンディションだったし、そういうレースで勝てて本当にうれしい。難しいコンディションにセッティングを合わせてくれたチームに感謝したい」
ヘクトル・ファウベル(250cc 10位)
「スタートがよくなくて、1周目の最終コーナーで転びそうになった。それから慎重に走ることにした。今日はとにかく完走して、少しでも多くポイントを獲得しようと決めた。ウオームアップで雨のセットアップがよくなった。今日の目標は優勝争いに加わることだったので、それが果たせず残念だ。難しいレースで総合順位を1つ下げたが、ポイント差がない状態なのでよかった」
富沢祥也(250cc 15位)
「レインタイヤでスタートして、路面がどんどん乾いていく難しいレースだった。今日はスタートもまずまずで、ファウベルについていくことができた。今日はファウベルの前でゴールできるように全力を尽くしたが、彼を抜いてから最終コーナーで転んでしまった。ハンドルが曲がってしまったがバイクを起こして再スタートを切り、15位になれた。1ポイントだけれど、今回も完走してポイントを獲得するという目標を果たせてよかった。ドニントンパークは難しいコースだった。コンディションも難しかったし、いい勉強になった」
ラタパーク・ウィライロー(250cc リタイア)
「今日のレースは早く忘れたいほど悔しいレースだった。オープニングラップは16番手だったが、それからペースを上げられず、フィーリングも悪かった。朝のウオームアップでは雨のセットアップができたと思ったのだが、決勝までには路面がほとんど乾いてしまった。どこでも転びそうだったので、今日はレースを辞めることにした。本当に残念だった」