第10戦イギリスGPのフリー走行は、青空と雨雲が交互に空を覆い、断続的に激しい雨が降る難しいコンディションとなった。最初の走行となった125ccクラスでは、セッション開始直後に激しい雨となりウエット。ただ、MotoGPクラスは雨の勢いも弱り、セッション終盤にはハーフウエットとなり、250ccクラスはドライコンディションで行われた。前戦ドイツGPも不安定な天候に選手たちは悩まされたが、2週連続となったイギリスGPも、目まぐるしく変化する天候とコンディションに翻弄されることになった。
この難しいセッションで、トップタイムをマークしたのはダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)。過去2戦、優勝、3位と調子を上げているが今大会も好調をキープ。この日は、前戦ドイツGPで投入したニュースペックのエンジンのセットアップも順調に進んだ。ペドロサは、MotoGPクラスにデビューを飾った2006年にドニントンパークで優勝している。昨年の大会は、イギリスGP前のテストでケガをしたため3位に終わっている。今年もシーズン中盤までケガに苦しんで来たが、第8戦アメリカGPで今季初優勝。ニューエンジンを投入した前戦ドイツGPも3位に入った。今大会は、車体とエンジンのセットアップも進み、難しいコンディションを克服して見事トップタイムをマーク。好調なスタートを切った。
過去3戦ノーポイントに終わっているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)も好調なスタートを切った。ドニントンパークは得意なコース。この日もフルウエットで快調にラップを刻んだが、路面が乾き始めたセッション終盤に4番手へと順位を落とした。しかし、トップのペドロサとの差は、わずか0.442秒。アベレージではペドロサをしのぐ快走を見せただけに、2日目の予選では、ペドロサとドヴィツィオーゾのチームメート同士のPP争いの期待が膨らんだ。
この日は、トップのペドロサから1秒差以内に8台という接戦となり、トニー・エリアス(Team San Carlo Honda Gresini)が、1.128秒差の9番手。MotoGPにデビューして5戦目のガボール・タルマクシ(Scot Racing Team MotoGP)が自己ベストとなる13番手、ランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)15番手、アレックス・デ・アンジェリス(Team San Carlo Honda Gresini)16番手という結果だった。
過去2戦連続6位と調子を上げているエリアスは、目まぐるしく変わる路面コンディションでセッティングを詰めきれず不完全燃焼の一日。デ・アンジェリスはウエットではトップ5前後につける快走を見せたが、路面が乾き始めたセッション終盤に順位を落とした。デ・ピュニエは、フルウエット、ハーフウエットともにセッティングに苦しみ、2日目に向けて課題を残した。MotoGP5戦目を迎えるタルマクシが、自己ベストとなる13位で上り調子をアピールした。
3クラスで唯一、ドライコンディションで走行できた250ccクラスは、アレックス・デボン(アプリリア)がトップタイム。以下、1秒差以内に10台という接戦の中で、青山博一(Scot Racing Team 250cc)が、わずか0.041秒差の2番手につけた。この日は、雨上がりの滑りやすい路面に苦しんだ。最後まで自信を持って攻められなかったというが、今季3勝目に向けて好位置でスタートを切った。以下、ラタパーク・ウィライロー(Thai Honda PTT SAG)11番手、ヘクトル・ファウベル(VALENCIA C.F. HONDA SAG)12番手、ラファエレ・デ・ロサ(Scot Racing Team 250cc)17番手、富沢祥也(CIP Moto-GP250)はセッション中盤に転倒を喫し20番手。2日目の巻き返しに期待がかかる。
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | 3 | ダニ・ペドロサ | Honda | 1:38.627 |
2 | 27 | C.ストーナー | ドゥカティ | +0.245 |
3 | 46 | V.ロッシ | ヤマハ | +0.290 |
4 | 4 | アンドレア・ドヴィツィオーゾ | Honda | +0.442 |
5 | 99 | J.ロレンソ | ヤマハ | +0.478 |
6 | 33 | M.メランドリ | カワサキ | +0.503 |
7 | 36 | M.カリオ | ドゥカティ | +0.582 |
8 | 5 | C.エドワーズ | ヤマハ | +0.752 |
9 | 24 | トニー・エリアス | Honda | +1.128 |
10 | 69 | N.ヘイデン | ドゥカティ | +1.489 |
11 | 65 | L.カピロッシ | スズキ | +1.792 |
12 | 52 | J.トーズランド | ヤマハ | +1.895 |
13 | 41 | ガボール・タルマクシ | Honda | +2.223 |
14 | 7 | C.バーミューレン | スズキ | +2.840 |
15 | 14 | ランディ・デ・ピュニエ | Honda | +3.234 |
16 | 15 | アレックス・デ・アンジェリス | Honda | +3.583 |
17 | 88 | N.カネパ | ドゥカティ | +4.069 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | 6 | A.デボン | アプリリア | 1:33.432 |
2 | 4 | 青山博一 | Honda | +0.041 |
3 | 19 | A.バウティスタ | アプリリア | +0.145 |
4 | 58 | M.シモンセリ | ジレラ | +0.198 |
5 | 52 | L.ペセック | アプリリア | +0.318 |
6 | 63 | M.ディ・ミリオ | アプリリア | +0.336 |
7 | 12 | T.ルティ | アプリリア | +0.359 |
8 | 40 | H.バルベラ | アプリリア | +0.392 |
9 | 17 | K.アブラハム | アプリリア | +0.487 |
10 | 75 | M.パシーニ | アプリリア | +0.546 |
11 | 14 | ラタパーク・ウィライロー | Honda | +1.158 |
12 | 55 | ヘクトル・ファウベル | Honda | +1.196 |
17 | 35 | ラファエレ・デ・ロサ | Honda | +2.263 |
19 | 53 | V.ドゥビーズ | Honda | +3.816 |
20 | 48 | 富沢祥也 | Honda | +4.315 |
22 | 8 | バスティン・シェゾー | Honda | +4.729 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
1 | 12 | E.ラバト | アプリリア | 1:45.105 |
2 | 94 | J.フォルガー | アプリリア | +0.048 |
3 | 29 | A.イアンノーネ | アプリリア | +0.698 |
4 | 93 | M.マルケス | KTM | +1.336 |
5 | 18 | N.テロール | アプリリア | +1.835 |
6 | 8 | L.サネッティ | アプリリア | +2.190 |
7 | 33 | S.ガデア | アプリリア | +2.216 |
8 | 6 | J.オリベ | デルビ | +3.089 |
9 | 38 | B.スミス | アプリリア | +3.565 |
10 | 39 | L.サロム | アプリリア | +3.570 |
コメント
ダニ・ペドロサ(MotoGP 1番手)
「トップタイムで終われてとても気持ちがいい。難しいセッションだったが、順調にセットアップをこなせてうれしかった。路面コンディションはたえず変化していたが、その状況に常に合わせていくことができた。今週末はこうした天候が予想されるし、どんな状況になっていもいいようにしておかなくてはいけない。いくつかのポイントでは今日一日ですごくよくなったが、またいくつかのエリアでは、まだまだセットアップに取り組まなければいけない。今日はセッション終盤に向かって路面がどんどん乾いていったが、最後までレインタイヤで走った。決勝日もこうした状況が想定できるし、今日はとても有意義だった。この結果を日曜日の午後まで継続させたい」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP 4番手)
「取り組まなければならないことはたくさんあるが、全体的には満足している。ウエットコンディションではとてもフィーリングがよかった。グリップも悪くなかったし、ペースもよかったと思う。しかし、路面の状況はどんどん変化して、終盤は90%くらいが乾いていた。同じタイヤで走っていたので、トップタイムをマークすることはできなかったが、明日はよい走りをする自信がある。好グリッドを獲得することができると確信している」
トニー・エリアス(MotoGP 9番手)
「ウエットで気持ちよく走れなかった。路面が乾き始めてからも、決してよいフィーリングとはいえなかった。9番手という順位は、この難しいコンディションでは、よくもなく悪くもなくという感じだが、明日はもっとがんばらなくてはいけない。できることなら、明日はドライコンディションできっちりと走りたい」
山野一彦|Repsol Honda Team 監督
「今日はダニ、ドヴィツィオーゾともに順調にセットアップが進んだ。路面コンディションもフルウエットからハーフウエットと変化したが、予定通りにメニューをこなせた。前回から使用している新しいスペックのエンジンのセットアップも進んだ。前回のドイツと違うセッティングにもトライすることができた。ダニは体調もよくなっているので、この調子でいきたい。チャンピオンシップでは、トップとポイント差は開いているが、1勝でも多く勝つことを目標に、最終戦まであきらめずに戦っていきたい。ドヴィツィオーゾは、3レース連続でノーポイントに終わっているので、今回は表彰台、優勝を狙っていくことになる。チームのモチベーションは高いし、常にチャレンジしていく姿勢を忘れずに戦っていきたい」
青山博一(250cc 2番手)
「セッション開始の時点で、路面はほとんど乾いていたが、激しく雨が降った後だったので、路面がとても滑りやすく、何度も転びそうになった。そういう状態だったので、自分の走り、車体のセッティング、エンジンの状態がすべてバラバラのような感じがして、攻める走りができなかった。その中ではベストは尽くせたと思うが、明日は、気持ちよく走れるようにセットアップをまとめたい。フィーリングとしては、なにか1つが決まれば、ポンポンとすべてが決まっていくような感じがする。明日は、そのポイントを早く見つけたい」
富沢祥也(250cc 20番手)
「セッション中盤に、3コーナーで転んでしまった。イン側の縁石に向かって走っていたのだが、縁石の前のイン側にタイヤが落ちてしまった。この転倒でケガはなかったが、セッションの半分を走れなくて残念だった。初めてのサーキットでまだちょっとしか走れていないが、初走行した感じは、難しいけれど好きなコースだった。明日はきっちり走ってポジションを上げたい」