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モータースポーツ > SUPER GT > NSX CONCEPT-GT マシン解説

SUPER GT

エンジン HR-414E ENGINE + Racing Hybrid System

 新レギュレーションでは排気量2.0Lで直列4気筒の直噴ターボエンジンの使用のみが認められています。従来の排気量3.4L V型8気筒の自然吸気エンジンに比べると排気量はほぼ半減、シリンダー数はちょうど半分ですが、ターボチャージャーが装着されているために最高出力は従来型を上回ると予想されます。つまり、ひとつのピストンが受ける負荷は従来のほぼ倍になるので、これは信頼性の面で非常に厳しい状況といえます。また、1シーズン中に使用できるエンジンの数は昨年までと同じ3基/1台なので、エンジンの耐久性に関してはこれまで以上に細心の注意を払って設計・開発を進める必要があります。

 ターボエンジンの宿命であるターボラグの解消もエンジン開発の非常に重要なテーマとなります。GT500クラスを戦うドライバーの多くは自然吸気式エンジンの素直なエンジンレスポンスに馴染んでいるため、たとえ最高出力が同じでも、エンジンのレスポンスが鈍かったり、エンジンが吹け上がる際のトルク特性にリニアリティがないとエンジンの反応とドライバーの感覚がマッチせず、この影響でラップタイムがコンマ数秒から1秒近くも遅くなる可能性があります。そこでターボラグを少しでも小さくするためにアンチラグシステム(スロットルオフの状態でもタービンの回転を維持するシステム)、ECUやスロットルペダルのマッピング、つまりソフトウェアをチューニングすることでドライバーの抱く違和感を最小限にする努力を行っています。

 幸い、Hondaは2012年シーズンの途中より直列4気筒 1.6L直噴ターボエンジンを用いるWTCCに参戦しており、そのエンジン開発を通じてターボラグの解消やスロットルペダルのマッピングなどに関する豊富なノウハウを有しています。

これらを活用することで、SUPER GT用エンジンでもライバルを凌ぐアドバンテージを手に入れたいと考えています。

 ところで、SUPER GTに参戦する「NSX CONCEPT-GT」は量産型の新型NSX同様、ハイブリッドシステムが搭載されます。これはGT300クラスに参戦しているCR-Z GTのシステムを「NSX CONCEPT-GT」用にモディファイしたものですが、回生エネルギーによる追加のパワーが手に入るいっぽうで、ハイブリッドシステムを搭載する都合で車重が重くなり、これがクルマ全体の運動性能に悪影響を及ぼす恐れがあります。私たちは、各コンポーネンツのレイアウトを最適化することでこの影響を最小限に留める努力を行ってきましたが、もともとFR用に設計されたモノコックをミッドシップで使用している制約もあり、必ずしも理想的なレイアウトとなっていないのが現状です。

NSX CONCEPT-GTのエンジンカウルを開け、整備をするメカニックたち


エアロダイナミクス Bodywork of NSX CONCEPT-GT

 新しい車両規則ではデザインラインといって、ボディの下端から275mm以上の部分はおおむね量産車の形状をそのまま維持しなければいけないと定められており、このため独自の空力開発を行うのは非常に難しくなっています。いっぽう、車体前部の低い位置から取り込まれたエアフローは、ボディサイドのデザインラインより下側にあたる部分から両サイドに向けて排出されますが、この車体前部から入ってボディの両側から出るまでのトンネルのような部分を活用して多くのダウンフォースを生み出すことが可能になります。いわばボディの下面を使ってダウンフォースを発生させているわけで、その意味ではウィングカーに近いともいえます。トンネルの排出口にあたるボディ両サイドの低い部分に取り付けられたウィングレット類は、各社各様の設計思想が現れていて興味深いところだと思います。

 新型車両の空力特性は、ダウンフォースは従来より大きく、空気抵抗はさらに大きくなると思われます。このためコーナリングスピードは2013年を上回るレベルに到達するでしょうが、空気抵抗が大きいために最高速度は伸びないと予想されます。この影響で、これまでのようにストレートでGT300車両を簡単にオーバーテイクできなくなる恐れもあり、その場合には従来と大きく異なるレース展開になることも考えられます。  なお、従来のようにコースにあわせて空力パーツを交換するなどの作業は禁止され、基本的にはリアウィングの角度のみ調整することが許されます。ただし、さすがにこのままでは富士スピードウェイのレースが物足りなくなってしまうので、富士のみは空気抵抗の小さい特別な空力パッケージの使用が認められることになる予定です。


  • NSX CONCEPT-GTのフロントフェンダー
  • NSX CONCEPT-GTのサイドにあるトンネル排出口
  • NSX CONCEPT-GTのフロントフェンダーに取り付けられている2枚のカナード
  • NSX CONCEPT-GTのリアビュー

コックピット Monocoque from DTM

 モノコックがドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)と共通化された関係で、ドライバーの全身を包み込むような、非常に大型のカーボンコンポジット製ドライビングシートが採用されています。このシートは、やはりカーボンコンポジット製のモノコックとほとんど一体となっており、万一クラッシュが起きても安全性は非常に高いと考えられます。
 そのいっぽうで、基本的にドライバーがひとりで走りきるDTM用のモノコックは、SUPER GTで義務づけられているドライバー交代を前提には設計されていないため、

これまでであればドライバー交代そのものは10数秒で完了し、給油が完全に終わるまでのタイムは30秒ほどでしたから、それに比べるとずいぶん長いピットストップとなる見通しです。しかし、だからといってドライバー交代を急げばシートベルトの閉め忘れなどを招くことになり、かえって安全性が損なわれてしまいます。そこで給油スピードに制限を加えるなどにより、ドライバー交代に十分な時間を確保できるようにするレギュレーションが検討されています。


  • NSX CONCEPT-GTのステアリング
  • NSX CONCEPT-GTのシート

駆動系 For the Ultimate Cornering Machine

 モノコックや駆動系など、数多くの主要パーツが共通部品とされているGT500クラスの新しい車両規定ですが、足回りも例外ではなく、ダンパーやブレーキについては共通部品の使用が義務づけられました。とはいえ、新しい「NSX CONCEPT-GT」もHondaのレーシングカーであるからにはコーナーで速い「究極のコーナリングマシン」を目指しています。そこで車両コンポーネンツやサスペンションのレイアウトを最適化することにより、抜群のコーナリング性能を発揮するマシンに仕上げました。ただし、ミッドシップ・レイアウトをフルに生かした性能に仕上がっているかといえば、先ほども申し上げたとおりそもそもFR用に開発したモノコックを用いているという事情もあり、必ずしもミッドシップの優位性を100%発揮できているとは言い切れないのが歯がゆいところです。

 同じく足回り関連でいえば、新たにカーボンブレーキが採用されることも新規則の特徴といえます。優れた制動力、そして耐フェード性能が高いといった長所を備えているカーボンブレーキですが、その最高の性能を引き出すには温度管理を厳密に行なわなければならず、このためスタート直後やピットアウト直後にはブレーキが冷えて本来の能力を発揮できない恐れもあります。

また、レーシングカーのブレーキは走行風によって冷却しているため、ピットストップ直後は冷却風がなくなってブレーキ温度が急上昇し、最悪の場合にはブレーキそのものが焼けてしまう事態も考えられなくはありません。このため、そういった事態にどう対処するかも、2014年シーズンのSUPER GTを戦ううえでは重要なテーマになると考えられます。

足回りには、新たにカーボンブレーキが採用された