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MUGEN CR-Z GT マシン解説 PART2 GT300レギュレーションに適合したマシンと実戦での戦い

SUGO大会と鈴鹿1000km――2レースを終えて

  • 中嶋大祐選手(左)、武藤英紀選手(右)中嶋大祐選手(左)、武藤英紀選手(右)
  • 鈴鹿大会スタートの様子鈴鹿大会スタートの様子

MUGEN CR-Z GTの開発は、2012年シーズン開幕後に進められ、シリーズ第3戦後の7月初頭にマシンが完成しました。シェイクダウンテストから1か月もたたない7月最終週、宮城県・スポーツランドSUGOで開催されたSUPER GTシリーズ第4戦で、武藤英紀/中嶋大祐組により実戦デビュー。十分な開発熟成テストができず、「まずはスタートラインにつくことが最大の目的」としながらも、予選はGT300クラスの25台中、9番手に食い込み、迎えた決勝ではトップと見劣りしない走りで、一時は2位まで浮上しました。しかし、ピットストップ時の再スタートで、エンジン始動トラブルが発生して順位は後退、それでも16位完走を果たすとともに貴重なデータと経験を得たのです。

2戦目は8月中旬に開催された第5戦の鈴鹿1000km。真夏の猛暑の中で行う1000kmという未知のロングランに向けて、マシンには各種の改良や対策が施されました。その成果が実り、公式予選ではGT300クラスのコースレコードを記録し、デビュー2戦目にしてGT300クラスでポールポジションを獲得しました。しかし決勝では、充電と放電のバランスを取りながら長距離を走らなければならず、燃費に振った制御に切り替えて走行、徐々に順位を落としてしまいます。それでも大きなトラブルを出さずに走行を続け、フィニッシュ直前には9位を走行していました。残り10ラップで駆動系のトラブルを起こして走行を打ち切ってしまいましたが、完走を果たしました。

熊倉淳一 Junichi Kumakura TEAM 無限 監督

熊倉淳一 TEAM 無限 監督ショートインタビュー

「組み上がってから1カ月足らずで実戦に投入し、それ以降は十分にテストする時間もありませんので、レースを戦いながら熟成を進めている状態です。少なくとも今年いっぱいは、ハイブリッドシステムの使い方も含めて試行錯誤が続くでしょう。

デビュー戦は、決勝で熱の問題からエンジンの再始動が一時的にできなくなるというトラブルが起きましたが、それなりのペースで完走することができました。コンパクトなボディにターボ過給エンジンやハイブリッドシステムなど、熱を発するコンポーネントを詰め込んでいるので、予想以上に過熱の問題がありました。

2戦目は、真夏に1000kmという、全く未知の領域でのロングランが課題でした。デビュー戦のトラブルで、ロングランをした場合、予想した以上に温度が上がって本来の性能を発揮できないことが分かりましたので、対策を施してきました。フルアシストがかけられた予選は上出来のタイムだったと思います。ただ、放充電のバランスを考慮しなければならない決勝では、予選のようにフルアシストをかけられないので、厳しい戦いになりました。マシンの熟成はさらに進んだと思いますが、FIA-GT規格の車両は別格のストレートスピードで走るので、決勝レースでトップスピードを伸ばしてタイムを出すためのハイブリッド制御など、まだ課題はたくさん残っています。近年のGT300は非常にレベルが高いので、マシンを新しく作って、レースに出てすぐに勝てるはずもありません。全く先が見えない状況で開発を進めながら走ることになるので、本当に『走る実験室』といった状態です」

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