若手エンジニアが語る HSV-010 GTの開発から得たもの

車体設計統括 山森 史登車体設計担当 長谷川 彰大車体組立担当 小山内 栄
失敗から得たものを、チームの勝利に役立てたい

乗り越えてきた数々の困難

HSV-010 GTの開発で特に「一大イベント」だったのは、やはりプロトタイプの開発でしょう。Hondaがこれまでに経験したことのない、フロントエンジン・リアドライブのレーシングマシンをゼロからつくりあげるという経験は、困難の連続。いちばん最初に製作したプロトタイプは、エンジンの載せ降ろしだけで6時間半もかかってしまうような代物でしたし、NSX-GTと同じ要領でメンテナンスをしていたところ、フロントに搭載したエンジンの重みでクルマが前に倒れてしまった、というような、今にして思えば信じられないトラブルもたくさん起きました。

転んでも、ただでは起きない

そこで、我々のそういった「失敗」を活かし、HSV-010 GTの整備の手順や、注意すべきことがらなどをまとめた、整備用の「マニュアル」をつくることにしました。レーシングカーでこんなものをつくるのは前代未聞ですが、量産車の世界ではあたりまえのもの。チームもHSV-010 GTを走らせるということが初めてである以上、我々が経験してきたものをきちんと蓄積し、わかりやすく伝えることができれば、それだけで勝利に一歩近づくことができると考えたのです。
私がSUPER GTのプロジェクトに参加する以前に携わっていた、F1のエンジンの組み立ても似ています。F1のエンジンは、管理項目が非常に多く、慣れるまではとにかく組み上げるのに時間が掛かりますが、何をすればいいのかが経験として蓄積されてくれば、その時間を短縮することができましたから。

この「マニュアル」をまとめるのには苦労もしましたが、チームのスタッフから「助かりました」と言ってもらえると嬉しいですし、なにより、開発の段階でしてしまった「失敗」も、このように蓄積していくことで、「Hマークのついたクルマを先頭で走らせる」ことに繋がっていくことができるのではないかと思っています。