Hondaはなぜレースをするのか?

レースっていうのはHondaの原点だと思うのです。
もともとクルマが2台できたときに競争が始まっている。競争するからには負けたくないという創業者の本田宗一郎さんの強い気持ちから始まったわけです。まともにクルマを作れないときにF1やマン島のTTレースに出たのもそう。
なにしろ競争したいと。
さらに、それを誰の真似もしないでやること。商品開発でもそうですが、真似をせず独自のやり方でやる。今回のHSV-010 GTもそのようにつくりました。

Hondaのレースってすごくシンプルだと思うんですよ。私自身のことで言うとHマークのついたクルマを先頭で走らせたい。それを技術力で走らせたい。それだけのことしか考えてない。
我々はエンジニアですから「走らせたい」。ドライバーは「走りたい」。僕は、レースはそれでいいと思うのです。
前を走りたいと。自分の力で前を走りたいと。
そして、お客様にはそんなシンプルな想いから生まれる走りを見ていただきたいと思うのです。
(次回につづく)

瀧 敬之介(たき けいのすけ)

1952年生まれ。1976年本田技研工業(株)入社し、本田技術研究所にて量産車シャシー設計を担当。90年のNSXではシャシーPLを務めた。レジェンドなどの量産車の開発責任者を務めるかたわら、アコードによるJTCC参戦をバックアップ。自己啓発でF1マシンを開発。2002年よりアメリカ駐在。2005年よりNSX-GTプロジェクトに加わり、プロジェクトリーダー代行、車体開発責任者を兼任。HSV-010 GTの開発責任者として現在に至る。