ドライバー
山本尚貴 / ストフェル・バンドーン
ドライバーといえば、フォーミュラカーレースの主役といっても過言ではない存在。彼らの目に0.001秒の戦いはどう映るのか?チャンピオン経験者の山本尚貴選手と、ルーキーでマクラーレン・ホンダのリザーブドライバーを務めるストフェル・バンドーン選手の二人に訊いた。
ストフェル・バンドーン(以下SV):とてもとても短い時間です。
ただし、その「1000分の1秒」によって勝敗が決まった経験を私も持っています。これは昨年まで参戦していたヨーロッパのレースシリーズ(GP2)の予選で起きたことですが、そのときのタイム差は1000分の1秒差ではなく、まったく同タイム。それでも、私が先にこのタイムを記録したため、ポールポジションを勝ち取ることとなりました。
SV:そのとおりです。1000分の1秒で勝敗が決まる戦いのために、ドライバー、チーム、そしてエンジン・マニュファクチュアラーは懸命のハードワークをこなしているのです。
SV:たしかにコントロールはできないかもしれません。ただし、どんな条件でもマシンから最大限のパフォーマンスを引き出すのがレーシングドライバーの仕事です。したがって、たとえ自分自身で1000分の1秒をコントロールできなくても、ドライバーやマシンを完璧な状態に整えることで1000分の1秒差を生み出す努力をしています。
SV:本当にそのとおりだと思います。どのドライバーも全力でプッシュしているので、予選結果はいつも僅差で決まります。限界に届いていなくてもダメですし、限界を超えてしまっては元も子もありません。スーパーフォーミュラでは常に限界ピッタリで走ることが求められているのです。
SV:特にありません。たとえばQ2とQ3は7分間しかないので、人と違ったことをするのは困難です。
SV:Q1では、最初にユーズドタイヤでウォームアップ走行を行います。そこでマシンのバランスに調整する余地が見つかれば微調整を実施します。その後、素早くニュータイヤを装着して2回目のアタックに備えます。
SV:セッションが始まるまでは「コースのどこでタイムを縮めることができるか?」「マシンのバランスは完璧か?」などについて考えますが、実際にアタックするときはまずドライビングに全神経を集中させ、むしろ何も考えずに身体が自然と動くような状態に自分自身をもっていきます。というのも、そうしてアタックしたときのタイムがもっとも速いことを経験的に知っているからです。
SV:レースでは予選とはまったく異なるスキルが求められます。
私はレース中も常に冷静でいられることが、自分自身の強みであると考えています。長いレースではコースやマシンの状況が刻一刻と変化していきます。そのとき、どうすることがベストなのかを常に考えています。また、レース中は1周1周の走りにとらわれることなく、ファイナルラップにどのような走りをするかを念頭に置きながら走り方を組み立てています。
SV:Hondaの一員としてレースを戦えるのは素晴らしいことです。
過去にF1でいくつもの栄冠を勝ち取ってきたHondaは、アイルトン・セナとともにワールドチャンピオンに輝きました。これほど印象的なパートナーシップは他に例がありません。そしていまは私自身がHondaとともにレースを戦っている。
また、私の目標もF1のワールドチャンピオンとなることです。もしもこの目標をHondaとともに実現できたら本当に素晴らしいと思います。
これまでのキャリアが大きく異なる山本尚貴選手とストフェル・バンドーン選手。
しかし、0.001秒の戦いにかける情熱にはまったく違いがないようだ。
彼らの熱い思いこそ、ハイレベルでエキサイティングな戦いが続くスーパーフォーミュラの原動力といって間違いないだろう。