Hondaモータースポーツ監督が語る日本人ライダー&ドライバー
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清成は、イギリスのレースでだいぶ鍛えられた。表情からして、かつてとは違うライダーになっている

 現在、イギリススーパーバイク選手権(以下BSB)に参戦する清成龍一選手。3年目を迎えた2006年は、全13戦中9戦を終えた時点でランキングトップである。その清成選手は、2005年の8耐ウイナーとして、今年もHondaワークスチームから8耐に参戦する。監督は、HRCの鈴木克典。清成選手とタッグを組むはずだった高橋裕紀選手は決勝直前の練習中の骨折で惜しくも参戦がかなわなかった。そこで、若手有望ライダーの清成選手を中心に2人の日本人選手について鈴木監督が語る。

 「BSBは、路面状況が悪いサーキットが多く、ライバルが闘志むき出しで挑んでくる過酷なレースです。そこでトップを走るということは、単にバイクに乗ってラップタイムを上げる以上の強さが身に付くということだと思います」
 鈴木監督は、清成選手についてそう分析する。

 鈴木監督は、2006年の鈴鹿8耐でHondaワークスチームの監督を務める。清成選手とチームを組むのは1年に一度、鈴鹿8耐だけで、2003年から数えて今年で4年目である。
 鈴木監督は、HRCの開発関係の部署に所属している。鈴木監督の通常業務は、レーシングパーツ組み上げの指揮をとること。HRCに入社以来携わっているレースは、ロードレースだけでなくトライアルなど多岐にわたる。現在、レースの現場で指揮をとるのは鈴鹿8耐のみ。

「清成がHondaに乗った1、2年目の8耐は辛かったですね。リタイア、リタイアで」
 2003年の鈴鹿8耐で、Hondaワークスチームは2台ともあえなくリタイア。悔しい結果に終っている。翌2004年は、鎌田学選手&清成選手組がリタイアしたものの、宇川徹選手&井筒仁康選手組が優勝。2005年は、宇川選手&清成選手組が優勝。清成にとっては8耐初優勝。この年の清成は、参戦2年目のBSBで最多優勝を達成、ランキングでは2位に輝いた。

 「清成選手は、ここ2〜3年、特に成長していますね。顔つきもだいぶ変わったんじゃないでしょうか。見ていて“強くなったな”という印象がありますね」
 テストでマシンを降りてからのインプレッション、「ここをこう変えたい」といった言葉が、具体的でわかりやすく、しかも的確になってきたという。
 「イギリスでだいぶ揉まれたんでしょう。あっちでは競り合いが激しいから、悠長なことは言ってられないんです。メカニックも具体的にどうしたいと言わないと動いてくれないから、自己主張しないと」
 
 「おそらく、速く走るためのマシンセッティングがわかってきたんでしょうね。今までは、『よくわからないけど、ダメなんです』とかいうコメントでした。最近は、マシンの特性として、ここに持っていきたいという、ちゃんとしたものが自分の中でできてきたんでしょう」

 今回の鈴鹿8耐のHondaワークスマシンのつくり込みは、清成選手を中心に行っている。タイヤを含めたマシンセッティングに積極的な意見を出した清成選手は、Hondaワークスマシンを、より乗りやすい、周回を重ねても相手と戦えるバイクに仕上げた。そのマシンに乗り、鈴鹿8耐の前哨戦である「鈴鹿300km耐久ロードレース」(以下鈴鹿300km)では、高橋選手とともに見事優勝を果たした。このレースは、ウエットからドライに変わるめまぐるしい展開だったが、清成選手は最後まで落ち着いた走りを見せ、マシンを高橋選手にトップで渡したのだ。2005年の鈴鹿8耐の優勝も雨。とにかく周回を多く重ねている清成選手は、マシンに乗るのが楽しくてしょうがなく、雨も苦にしないタイプだ。

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