鈴鹿300km耐久ロードレース 決勝レポート
Jun 13, 2010高橋巧、秋吉耕佑の大バトルが大いにレースを盛り上げた鈴鹿300q
若手の高橋巧/中上貴晶組が2位、ベテランの秋吉は3位表彰台
会場:三重県・鈴鹿サーキット
天候:雨
気温:21.7℃
観客:1万人
真夏の祭典「鈴鹿8時間耐久ロードレース(以下、鈴鹿8耐)」の前哨戦として行われる“Road to 8hours”鈴鹿300km耐久ロードレース(以下、鈴鹿300km)は、給油やタイヤ交換があり、鈴鹿8耐の戦いのシミュレーションとして重要な意味を持つ。ペアライダーとの調整やマシンセッティング、タイヤ選び、スタッフとのコンビネーションの確認など、鈴鹿8耐を占う上で見逃せない戦いだ。
優勝候補である#11 F.C.C. TSR Hondaの秋吉耕佑は、スーパーバイク世界選手権を戦うジョナサン・レイと挑む予定だった。しかし、レイがスーパーバイク世界選手権第7戦アメリカGPの転倒の影響で、今回のレースを欠場。秋吉は単独で300q、52周のレースに挑むことになった。秋吉は、2007年にポールポジション獲得、08年優勝、昨年は伊藤真一と組んでポール・トゥ・ウインを達成した2連覇の実力者。今回は1人で臨むことになったが、優勝候補として鈴鹿入りした。
若手有望株の#634 MuSASHi RT HARC-PRO.の高橋巧は、中上貴晶と参戦。中上は経験を積むことを目的に参戦が決まった。鈴鹿8耐では高橋は清成龍一と組み、中上は第3ライダー登録となる。中上は、JSB1000を駆るのが初体験であるため、どこまで乗りこなすことができるか注目を集めた。
#2 Honda DREAM RT桜井ホンダの亀谷長純は、オーストラリアのウェイン・マクスウェルと組み鈴鹿8耐に参戦、300qも2人で戦う。Keihin KOHARA Recing Teamの伊藤真一はケガの回復を早めるため、大事をとって参戦を見合わせた。鈴鹿8耐では玉田誠と組み勝利を狙う。
金曜日のフリー走行から秋吉はレイとのセットアップを想定しながら、さまざまな仕様を試して走行を重ねた。「まだまだ」とコメントを残しながらもトップタイムの2分8秒台を記録し、貫禄を示す。土曜日は午前中に1時間のフリー走行が行われ、そこでも秋吉は2分8秒904でトップ。2番手には酒井大作/青木宣篤(スズキ)がつける。3番手に高橋/中上、4番手に単独参戦の武田雄一(ヤマハ)、5番手も単独参戦の出口修(スズキ)、6番手には亀谷/マクスウェルが続いた。
午後に行われた予選1回目、秋吉はセッション開始4ラップ目、早々に2分8秒385にタイムを入れ、それがそのままトップタイムとなった。2番手は亀谷で2分8秒899、8秒台はこの2人だけ。マクスウェルも2分11秒台へとタイムアップ。3番手に青木が2分9秒003、4番手には#3 クラウン警備保障RACINGの浜口俊之。注目の中上は、2分10秒665を記録し7番手へと食い込んだ。中上は走るたびに1秒ずつタイムを詰める快走を見せた。
予選2回目の最終セッション、秋吉は序盤に2分8秒598のトップタイムを記録すると、雨を想定してのセッティングへと変更、決勝への準備を進めた。だが、タイヤを新品に換えてコースインするも、転倒マシンがコース上に残っており、赤旗中断。再開後の残り時間は約10分、激しいタイムアタック合戦となったが、秋吉がポールポジションを獲得した。2番手は酒井/青木、3番手に亀谷/マクスウェル、4番手に高橋/中上とグリッドが決まった。
決勝朝は予選日に比べると気温、路面温度が下がり、雨が心配されるコンディションとなった。午前中に行われたウオームアップは、ドライで行われたが、その直後に雨がパラパラと落ちた。ウエット宣言がされるが、スタート前はほぼドライで、多くのライダーはスリックタイヤを装着。だが、ウオームアップランの最中に大粒の雨が落ち、アッと言う間に路面を黒く染めた。秋吉は、右手を上げてスローダウン、レッドフラグが提示され、レースディレイ。今度はレインタイヤに換えてスタートが切られた。
ホールショットは高橋、それを出口が追いトップに立ち、酒井、亀谷、秋吉、高橋英倫(カワサキ)らが追う展開。2ラップ目には亀谷が首位を奪いレースをリード、そこに酒井が迫り、トップ争いを繰り広げた。
4ラップ目、酒井が前に出るが、亀谷はピタリとマーク。やや離れて3番手争いから秋吉が抜け出てトップ争いに迫る。このころになると、路面は乾き始める。亀谷はいち早く路面コンデションを読んで、7ラップ目にピットイン。スリックに履き換えてコースに復帰してペースアップ。
9ラップ目には高橋もピットインし、タイヤ交換と給油を行いピットアウト。秋吉がトップに立ち、レースをリードする。12ラップ目には酒井もピットインして、タイヤ交換をする。レインタイヤで走る秋吉はトップをキープするが、ハイペースで周回を重ねる亀谷が2番手に浮上して秋吉に迫る。
15ラップ目のダンロップで亀谷は秋吉をとらえてトップに浮上。酒井もグイグイとポジションを上げ、16ラップ目には3番手まで上がってきた。
20ラップ目、ついに秋吉もピットイン。タイヤ交換と給油を終えてコースに飛び出した直後、西コースで大粒の雨が降り、コースもみるみる濡れていく。
変化する路面状況に翻弄されながらライダーたちは、路面と格闘するように周回を重ねた。24ラップ目に酒井から青木にライダー交代。26ラップ目の順位は、亀谷がトップをキープ、2番手青木、3番手秋吉、4番手高橋、5番手武田のオーダー。
その後、秋吉はペースアップし、酒井をパスして2位に浮上する。3番手には高橋が上がってきた。亀谷もマクスウェルにライダー交代。マクスウェルは初めてのマシンとチーム、鈴鹿の雨、西コースと東コースで路面コンディションが異なるという状況の中で、慎重に周回を重ねた。トップは青木となり、秋吉は2番手、3位高橋となる。
31ラップ目、高橋が秋吉をプッシュして2番手に浮上。しかし、ヘアピンで秋吉が高橋をパス。高橋は食らいつき、並んで130Rに飛び込むが、秋吉が前をいく。高橋はシケインで再度アタックするがリアが流れた。
さらに、2人はメインストレートで並び、1コーナーで高橋が秋吉に並びかけるも、秋吉が先行するというし烈な争いを展開。35ラップ目に高橋は、ヘアピンで秋吉に襲いかかり前に出るが、秋吉は濡れた路面を豪快に攻め、130Rで高橋をとらえる。高橋はピットインし、給油をしてコース復帰。
その後、雨がさらに強くなり始める。西コースに雨が落ち、風向きが変わると東コースでも雨が落ち始めた。4番手を走行していたマクスウェルはピットインし、レインタイヤに換えて、亀谷にライダー交代。トップは青木がキープし、2番手に秋吉が4秒8の差で迫る。3番手には高橋が続く。
残り10分で秋吉がピットイン、給油と浅溝のレインタイヤに履き換え、2番手のままコースへと飛び出す。3番手はスリックタイヤの高橋。亀谷はペースアップするが、雨が上がり始める。青木もペースアップするが、秋吉との差は54秒と大きい。3番手の高橋もペースアップ。
45ラップ目には、青木が2分16秒台、秋吉は2分23秒台、高橋が2分15秒台と追い上げる。その差は約7秒。46ラップ目バックストレートで、高橋が秋吉を抜き去り2番手に浮上。48ラップ目には、130Rで高橋が周回遅れと絡み、コースアウトするもリカバーして2番手のままコースに復帰。4番手にはレインタイヤの亀谷がスリックタイヤの武田にパスされる。そのラップに亀谷は、ピットインしてスリックに換えてコース復帰、5番手からの追い上げを図る。
トップ青木は2分15秒台の安定ペース。それを高橋が2分12秒台で追い上げる。差は約1分差と大きいがあきらめることなく2分11秒にペースアップ。51ラップ目には、2分10秒982とファステストラップを叩き出し、トップからのビハインドを詰めた。秋吉はレインタイヤで我慢の走行を強いられた。青木がトップでチェッカーをくぐり抜け、2位に高橋、3位秋吉が続いた。4位には武田、5位には亀谷が入った。
順位 | No. | ライダー | チーム名 | タイム/差 |
1 | 12 | 酒井大作/青木宣篤 | ヨシムラスズキwithJOMO | 2:02:30.192 |
2 | 634 | 高橋巧/中上貴晶 | MuSASHi RT HARC-PRO. | +50.457 |
3 | 11 | 秋吉耕佑 | F.C.C. TSR Honda | +1:47.677 |
4 | 54 | 武田雄一 | Taira Racing | +2:15.358 |
5 | 2 | 亀谷長純/ウェイン・マクスウェル | Honda DREAM RT 桜井ホンダ | +1Lap |
6 | 5 | 武石伸也/今野由寛 | TRICK☆STAR RACING | +2Laps |
7 | 94 | デヴィッド・チェカ | YAMAHA FRANCE-GMT94-IPONE | +2Laps |
8 | 1 | イゴール・ジャーマン | YAMAHA AUSTRIA RACING TEAM | +2Laps |
9 | 99 | 野田弘樹/関口太郎 | テルル・ハニービーレーシング | +2Laps |
10 | 74 | 須貝義行 | チームスガイ&プラスワン | +2Laps |
高橋巧(2位) 「スタートでは前に出られましたが、路面の状況が分からなくて難しいレースでした。序盤は思った以上にグリップ感を得ることができなくてペースを上げられなかった。チームの指示でピットインし、スリックに換えてからは、攻めることができました。ライダー交代があると思ってピットインしたら、中上君が着替えてなくてビックリ。少し焦りましたが、そのままがんばりました。体力には自信があったので、心配はなかったです。ピットからはキープサインが出ていたけれど、最後まであきらめないで追いかけようとしました。レース序盤からペースを上げることができていたら結果も違ったかなと思うと悔しいです。でも、秋吉さんとバトルができたのは収穫です。学ぶことがたくさんありました」
中上貴晶(2位) 「難しい路面状況でしたので、慣れない状況で走って転倒してしまう危険を考え、チーム判断で走らないことになりました。オートポリスの時に話をもらい、自分は試されていると感じていました。600を経験させてもらい、今度は1000。パワーも重さも違いますし、スリックタイヤと戸惑った部分もあったけれど、チームのアドバイスでタイムを上げることができました。最後の走行時にベストが出て、その後にアタックができなかったのが残念。9秒台に入れることができたかなと感じています。鈴鹿8耐では第3ライダーとして走ることができるので、巧(高橋)選手のタイムを目標にがんばりたいです。とてもいい経験をさせてもらい感謝しています」
秋吉耕佑(3位) 「本当はレイと組んで参戦するはずでしたが参戦できなくなり、データを見ながら、彼がいることを想定してテストをしました。決勝も雨が降ることを想定して、自分のタイムが何秒くらいなら、このタイヤを使うなど、チームと決めていました。ピットインのタイミングはチームの判断を優先させるということで進めていたのですが、なかなかタイミングが合わず、自分の走りができなくて残念です。唯一、巧(高橋)選手とのバトルが楽しめたのがよかった。鈴鹿8耐に向けてしっかりとミーティングを重ねて、勝てるようにがんばりたいです」
亀谷長純(5位) 「今回は路面コンディションが難しかったので、ピットインのタイミングは自分が決めるとチームと相談していました。チームもどんなタイミングでも対応できるように準備してくれていて、最初のタイミングはよかったと思います。ペアライダーのマクスウェルも難しかったと思うけれど、がんばってくれました。単独で走り続けるという選択もあったけれど、鈴鹿8耐を考えると彼にも雨を経験してほしかった。順位に満足はできませんが、鈴鹿8耐に向けてチーム一丸となって向かう準備が確実にできたのでよかったです。鈴鹿8耐ではいいレースがしたい」
ウェイン・マクスウェル(5位) 「鈴鹿8耐はオーストラリアでも有名なレースで、走ることができてとても光栄です。亀谷選手はすばらしいライダーで、たくさん助けてもらい、タイムが出せたと思っています。今回は、自分がタイムを上げることができなくて悔しい結果に終わってしまいました。これから、オーストラリアに帰り、がんばってトレーニングをして力になれるようにしたいです。今度は、僕が亀谷選手やチームを助けられるようにしたいと思います」