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鈴鹿8耐
2007 SUZUKA 8HOURS
鈴鹿8耐 決勝レポート
波乱の中で岡田/チェカ組が怒涛の追い上げで2位表彰台を獲得。満身創痍の伊藤と手島が堂々の3位
2007年7月29日(日)・決勝
会場:三重県 鈴鹿サーキット 天気:快晴 気温:32.9℃ 観客:7万5000人
リザルト

真夏の祭典、鈴鹿8時間耐久ロードレース(8耐)勝利に向けて入念にテストを繰り返した結果、TEAM HRCはレースウイークの水曜日に最終的なラインナップの変更を発表した。エースナンバー11を駆る清成龍一/ジェームス・トーズランド(TEAM HRC 11)に変更はないが、ゼッケン33に関してはサードライダーだった岡田忠之とカルロス・チェカ(TEAM HRC 33)を正ライダーとして起用し、若手のジョナサン・レイをリザーブライダーとした。両チームとも、この8耐ウイークがペアライダーとしての初顔合わせとなった。

リザーブライダーとして登録されていた手島雄介は、要請を受けてF.C.C.TSR ZIP-FM Racing Teamから伊藤真一と参戦することになった。昨年の優勝チームである同チームは、第1ライダーの辻村猛が事前テストで転倒し、ケガを負ったために参戦を断念している。昨年2位となり、今年は優勝を目指す急募.com team HARC-PRO.は小西良輝/安田毅史組。モリワキMOTULレーシングは山口辰也/森脇尚護組で戦う予定だったが、森脇のケガの回復が思わしくなく、リザーブライダー登録のレオン・キャミアが山口と組むことになった。仮面ライダー電王 Honda DREAM RTは徳留和樹と'03年8耐覇者の鎌田学がペアを組む。桜井ホンダは亀谷長純/ラッセル・ホーランド組(Team 桜井ホンダ 2)、武田雄一/津田一磨組(Team 桜井ホンダ 71)で参戦した。

木曜日から走行が始まり、2度のスポーツ走行後に公式練習が行われた。この日は曇りだったが、雨が落ち、蒸し暑さがライダーを苦しめた。トップタイムは加賀山就臣/秋吉耕佑組(スズキ)で2分8秒585を叩き出した。2番手は中須賀克行/大崎誠之組(ヤマハ)、3番手に岡田/チェカ組が9秒台で続いた。小西/安田組が5番手、清成/トーズランド組が6番手につけた。

金曜日に計時予選が行われ、トップ10トライアル(最終予選)に出場するライダーを決めた。11番手以降は、この予選でグリッドが決定する。気温33.5℃、路面温度は50℃を超える酷暑の中でタイムアタックが行われた。激しいアタック合戦となったが、トーズランドが2分8秒344を記録して、見事、トップタイムを叩き出す。清成も2分9秒041と好タイムを記録して好調を印象づけ、エースチームの貫禄を示した。さらに岡田が2分8秒352とトーズランドのタイムに迫る好記録で2番手につけた。チェカも2分8秒484とタイムを更新、TEAM HRCは1-2を決めて、一気に優勝候補の最右翼に躍り出た。3番手は加賀山/秋吉組。4番手に大崎/中須賀組。5番手に小西/安田組。6番手ジェイミー・スタファー/阿部典史組(ヤマハ)、7番手渡辺篤/酒井大作組(スズキ)、8番手に徳留/鎌田組、9番手亀谷/ホーランド組。10番手は手島/伊藤組で、この10チームがトップ10トライアルに進む権利を得た。

土曜日に行われたトップ10トライアルは、ライダーが単独でコースを一周し、そのタイムを競う。ワンチャンスにかけるライダーの緊迫した走りを見ることができる。スーパーバイク世界選手権(WSB)で通常行われているタイムアタック方式であるため、トーズランドの走りに期待が高まった。だが、ここでトップタイムをマークしたのはチェカで、2分7秒587という驚異的なタイムを記録。このタイムが目標タイムとなり、清成が挑むも2分9秒289で届かない。岡田はデグナーで転倒してしまうが、大きなダメージはなかった。最後に登場したのがトーズランドだったが2分8秒035でチェカのタイムを越えることができず、ポールポジションは岡田/チェカ組となった。2番手に大崎/中須賀組、3番手に加賀山/秋吉組、4番手に清成/トーズランド組、5番手に手島/伊藤組、6番手に小西/安田組、7番手に徳留/鎌田組、8番手に亀谷/ホーランド組、9番手にスタファー/阿部組。10番手に渡辺/酒井組が続いた。

鈴鹿8耐

決勝朝のフリー走行は赤旗で中断されるなど波乱含み。清成が逆バンクでスリップダウンしたものの、ダメージはなく起き上がり、ピットに戻った。決勝スタート時には気温もグングン上昇、気温33℃、路面温度は47℃と、太陽が路面を焦がした。

11時30分、伝統のル・マン式スタートが切られた。ホールショットは加賀山、それに清成が続く。オープニングラップは加賀山、清成、阿部、中須賀、岡田、安田、伊藤のオーダー。逃げる加賀山を清成が追い、3番手には安田が浮上、それに中須賀が続いた。5番手は岡田と伊藤で争われる。14ラップ目に3番手安田がヘアピンで周回遅れと絡み転倒してしまう。加賀山、清成、岡田、伊藤、中須賀、渡辺、安部、徳留、山口、亀谷のオーダーで周回を重ねる。21ラップ目に岡田に対してスタートの手順違反(スタートのウェイティングサークルを離れるのが早い)で30秒のストップ&ゴーペナルティが出される。岡田はピットインしてペナルティを受けコースに復帰した。同じペナルティが山口にも出され、序盤は混沌とした戦いとなる。

1回目のルーチン・ピットが始まり、加賀山に代わってトップを走る秋吉をトーズランドが追う。コースイン後3ラップの29ラップ目、トーズランドがダンロップで転倒、ピットインしてマシン修復に取り掛かるが、ダメージが大きくリタイアとなった。秋吉は快調なペースで飛ばし、手島、酒井が続く、9番手でバトンを受け取ったチェカは驚異的な追い上げを見せて4番手に浮上、その追い上げに期待が高まった。2時間を経過し、トップは変わらず加賀山、2番手に伊藤、3番手の渡辺を追う岡田、阿部、岩田、徳留、亀谷が続く。チェカが97ラップ目に酒井をとらえて3番手に浮上すると、107ラップ目には手島をスプーンでとらえて2番手に浮上した。

そして、ライダー交代。今度は岡田、伊藤の2番手争いに注目が集まる。ともに40才の実力者同士のバトルは白熱したものになった。2人は2分10秒台のハイペースで周回、115ラップ目の130Rで伊藤が2番手を奪回、しかし、117ラップ目に今度は岡田が2位に浮上する。伊藤は岡田をぴたりとマークして周回を重ねて、その順位は変わらず、緊迫した状況のままライダー交代する。チェカはときにトップを上回るタイムを記録して手島を突き放し、2番手のポジションをキープする。5時間経過して、トップは加賀山、岡田、伊藤、渡辺、スタファー、徳留、ホーランド、キャミアと続いた。加賀山と1ラップ遅れの岡田の競り合いが激しくなるが、加賀山が先行した。午後6時30分を過ぎ、ライトオンのサインが出され、最後のライダー交代のため、上位陣が次々とピットイン、岡田からチェカにマシンが渡された。伊藤は手島と交代。最後の走行を終えた伊藤は自力ではマシンを降りることができずにスタッフに抱えられピットに戻った。加賀山は秋吉へと交代した。

暗闇の中、それぞれのライダーがチェッカーを目指した。大きなポジションの変動はなく、秋吉がトップでチェッカーを受けて加賀山/秋吉組が216ラップを走りきり勝利を決めた。同一周回数でチェカが続き、岡田/チェカ組が2位、3位に手島が続き、手島/伊藤組が表彰台に上がった。4位には渡辺/酒井組、5位にはペナルティストップを乗り越えて追い上げた山口/キャミア組、6位徳留/鎌田組、7位には耐久チームのバンサン・フィリップ/マチュー・ラグリーブ/ジュリアン・ダコスタ組(スズキ)、8位に岩田悟/須貝義行/ハインツ・プラタシス(F.C.C TSR EUROSPORT BENELUX)、9位にスタファー/阿部組、10位で武田/津田組がチェッカーを受けた。6位を走行していたホーランドはガス欠ランプが点灯したことで急きょピットイン、コース復帰しようとしたが、チェッカーフラッグが振られており、復帰できず。さらに電気系トラブルも重なってペナルティが適用され、亀谷/ホーランド組は未完走扱いとなった。

鈴鹿8耐

ライダー&チームのコメント

#33 岡田忠之(TEAM HRC 33) 2位
「今日のヨシムラは強かったです。スタートのフライングが響きました。カルロスはとてもよくがんばってくれたし、マシンの調子もよかった。伊藤選手とのバトルは楽しかったけれど、バトルをしていると、お互いタイムが落ちるのが分かっていたので、一緒に走ったという感じでした。普段レースから離れていることの影響はないと思っていますが、転倒やフライングとして表れているのかもしれません。チャンスがあれば、そこを克服してまた挑みたいです」

#33 カルロス・チェカ(TEAM HRC 33) 2位
「岡田にペナルティストップが出たときは意味が分らなかった。タイムをロスしたけど、そのあとは気持ちを切り替えて、必死にばん回しようとがんばった。僕もタディも乗れていたからね。4位まではすぐに追い上げることができたが、3位を抜いて2位になるのは大変だった。そのあとは2位をキープするようにした。初めての8耐は、とてもよい経験になったし、楽しかった。チームも岡田もすばらしいサポートをしてくれた。今度は勝つために戻ってきたい」

#778 伊藤真一(F.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team) 3位
「テストが不足して、マシンセットアップを詰めきれていませんでした。また、自分自身の調子を上げることもできず、自分のペースで走ることができませんでした。岡田選手に追いつくとペースが上がりませんでした。今年は、手島君が急きょペアとして参加してくれましたが、セッティングが十分にできていない状況にもかかわらずがんばってくれました。このような中、チーム全員ががんばってくれて、30回記念大会の表彰台に上れてうれしい」

#778 手島雄介(F.C.C.TSR ZIP-FM Racing Team) 3位
「応援ありがとうございました。また、表彰台に立てるチャンスをいただき、ありがとうございました。テストの段階ではTEAM HRCで参加し、直前に自分の出身チームであるTSRから参戦することになりましたが、そのときから自分の気持ちを切り替えました。テストではタイムが出ないままレースウイークに入りましたが、金曜日にマシンのポテンシャルをつかむことができ、自己ベストを出すことができました。今回は、伊藤さんにがんばっていただき、3位表彰台に上れたことは、本当にうれしいです」

#19 山口辰也(モリワキMOTULレーシング) 5位
「ガス欠などのトラブルがあったり、最後はキャミアが連続走行することになるなど、予定通りにいきませんでした。ペナルティが出たときからは、とにかく確実にこなしていくことを心掛けました。最後までレースを走りきることができたことはうれしいです」

#19 レオン・キャミア(モリワキMOTULレーシング) 5位
「3回目の8耐参戦だったが、1回目は自分が転倒し、2回目はパートナーが転倒してマシンの修理に時間がかかって、きちんと完走したのは始めてだった。今回は出場が急に決まって準備不足だったし、レース中のペナルティなどつらい展開だったが、結果を残すことができてよかったと思う」

#54 徳留和樹(仮面ライダー電王 Honda DREAM RT) 6位
「マシンのセッティングがうまく煮詰まったので、決勝ではもう少し速いアベレージタイムで走ることが目標でしたが、状況が変わってしまい、難しかったです。でも決勝を完走できたことはよかったです。自分が走る最後のパートでは、楽しく走ろうと思い、出せるものをすべて出しました。今回の鈴鹿8耐は、本当にいい勉強になったと思います。学んだことを、これからレースに生かしていきたいと思います」

#54 鎌田学(仮面ライダー電王 Honda DREAM RT) 6位
「決勝は大きなトラブルや転倒、ケガもなく、完走したことがいちばんの収穫でした。欲を言えば、もう少し上位を狙いたかった。しかしチームのスタッフはミスをしないで本当にいい仕事をしてくれたので、今は持てるもののすべてを出し尽くした充実感でいっぱいです」

#73 小西良輝(急募.com team HARC-PRO.) 23位
「結果は残念でしたが、レースはレースです。今回ワークスマシンで参戦させてもらいましたが、そのパフォーマンスは十分発揮できたと思います。今回やれることはすべてできましたし、今年の夏は完全燃焼できました。これだけ走れてしまうと、来年もう一度安田君と組めたらと思います。来年の8耐のことは分かりませんが、サポートライダーという立場でも、チームのために役に立ちたいと思います」

#73 安田毅史(急募.com team HARC-PRO.) 23位
「周回遅れを抜くときの僕のミスで、こういう結果になってしまい、チームと小西さんに申し訳ないことをしたと思っています。でも、チームががんばってマシンを直してくれて、小西さんもすばらしい走りで追い上げてくれて、モチベーションを戻すことができ、来年につながるような走りができたと思います。また来年に向けて、がんばっていきたいと思います」

#11 清成龍一(TEAM HRC 11) リタイア
「流れはよかったと思います。朝のウオームアップで僕が転倒してしまいましたが、それで流れが悪くなったということは全くないです。僕は8時間を見据えていたので、1時間目はこれでいいと思っていました。唯一悔いが残るのは、トップとの差が少し開きすぎてしまったこと。それでジェームスは焦ってしまったのかもしれません。今年は早い段階で周回遅れのライダーが出てきたので、追い越すときに無理して転倒したくなかったのです。応援してくれたファンの皆さんには本当に申し訳ないです。去年も8耐では勝てなかったので、これで悔しさは2年分になりました。悔しさを晴らすのに、あと1年待たなくてはいけないというのがつらいです」

#11 ジェームス・トーズランド(TEAM HRC 11) リタイア
「僕のミスだった。しかもプラクティスやトップ10トライアルではなくて、本番でミスしてしまった。何と言ってよいのか分からない。応援してくれたファンやチームメートのキヨ、チームスタッフ、スポンサーに謝りたい。キヨから交代して3周目のダンロップコーナーで、フロントが何の予告もなく突然切れ込んだんだ。とてもストレンジで、どうすることもできなかった」

山野一彦 HRC 8耐プロジェクトリーダー
「今年も何か1つ足りなかったから勝てなかったのだと思います。それが何だったのか、これから検証します。Hondaの8耐連覇が途絶えてしまったことに責任を感じています。#11のリタイアに関しては、本当にアンラッキーでした。ジェームスは攻めていたときの転倒だったので、アンラッキーだったとしか言いようがありません」

決勝リザルト

順位 No. チーム/ライダー マシン 周回数
1 34 ヨシムラスズキ with JOMO 34
加賀山就臣&秋吉耕佑
スズキ 216
2 33 TEAM HRC 33
岡田忠之&カルロス・チェカ
Honda 216
3 778 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team
手島雄介&伊藤真一
Honda 215
4 12 ヨシムラスズキ with JOMO 12
渡辺篤&酒井大作
スズキ 215
5 19 モリワキMOTULレーシング
山口辰也&L.キャミア
Honda 212
6 54 仮面ライダー電王 Honda DREAM RT
徳留和樹&鎌田学
Honda 211
7 1 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM
V.フィリップ&M.ラグリーヴ&J.ダコスタ
スズキ 210
8 4 F.C.C TSR EUROSPORT BENELUX
岩田悟&須貝義行&H.プラタシス
Honda 210
9 81 YAMAHA RACING 81
J.スタファー&阿部典史
ヤマハ 210
10 71 Team 桜井ホンダ 71
武田雄一&津田一磨
Honda 209
11 775 レーシングチーム ハニービー
野田弘樹&山本琢磨
Honda 209
12 25 Honda 鈴鹿レーシングチーム
柚木伸介&森井威綱
Honda 208
14 52 MOTO WIN RACING
鈴木慎吾&高橋孝臣
Honda 206
16 40 Honda 浜友会 浜松エスカルゴ & CBR
名倉嘉一&野寄真二
Honda 206
17 69 チームOSGフェニックス & モトスポーツI
出口修&津田拓也
Honda 205
19 18 TEAM HATAKEYAMA SIMPSON & T-YOSHIHARU
畠山泰昌&和泉美智夫
Honda 204
22 59 Tele' ウルフマン & ヨシハル & MCR ガレージ
山中正之&磯谷晋一
Honda 203
23 73 急募.com team HARC-PRO.
小西良輝&安田毅史
Honda 202
24 021 RMT #21 RACING
J.スムルツ&F.ハイジャー&H.メイヤー
Honda 202
28 68 Honda Q遊会 明和レーシング
中村知雅&黒川武彦
Honda 202
30 76 Pacific Diner Service NALT ALTERNA
北口浩二&古澤基樹
Honda 201
33 70 チームOSGフェニックス & モトスポーツII
奥田貴哉&中川直史
Honda 200
37 67 ホンダドリーム和歌山RT
西中綱&岸本竜志
Honda 198
38 97 PLATFORM☆TSR☆CLUB Y's ☆J OFFICE
的場浩晃&村田丈
Honda 198
47 112 Honda EGレーシング
栗林剛&本道雅樹
Honda 193
52 45 Honda ブルーヘルメットMSC
小林敦之&栗田伸一
Honda 183
RT 2 Team 桜井ホンダ 2
亀谷長純&R.ホーランド
Honda 211
RT 44 ウイダーDDBOYS
浜口俊之&児玉勇太
Honda 139
RT 807 ホンダドリーム北九州レーシングチーム
須磨貞仁&中村丈士
Honda 108
RT 41 Honda 浜松エスカルゴ & 狭山レーシング&H-TEC関東
古川力也&泉名英男
Honda 106
RT 66 YIC京都withオーテック・鈴鹿
大内田実&矢木清貴
Honda 75
RT 20 BATTLE&ミハラレーシング
松井秀樹&下地申悟
Honda 53
RT 11 TEAM HRC 11
清成龍一&ジェームス・トーズランド
Honda 28
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