真夏の祭典、鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)で前人未到の9連覇がかかるHondaは、唯一のワークス参戦チームとして最も注目を集めるチームだ。セブンスター
ホンダはエースナンバー7にMotoGPマシンのテストライダーを務める宇川徹選手と、イギリススーパーバイク選手権でタイトル争いを繰り広げ、現在ランキング2位の清成龍一選手のペアで挑む。ナンバー11には、スーパーバイク世界選手権でランキング2位のクリス・バーミューレン選手、スーパースポーツ世界選手権でランキング2位の藤原克昭選手、ともにチャンピオン争いをしているトップライダー二人をオーディションの結果選び出した。
藤原選手は事前の合同テストのけがの回復状態が心配されていたが、8耐ウイークには間に合わせ元気な姿を見せた。宇川選手は現在8耐4勝で、ミスター8耐と呼ばれるワイン・ガードナーと並び歴代1位の記録を持っており、今回勝てば5勝となり単独1位となる。
そのほか、山口辰也選手/徳留和樹選手組(#4仮面ライダー響鬼
Honda RT)、昨年3位表彰台を獲得した森脇尚護選手/浜口俊之選手組(#044ウイダーホンダ学園DDBOYS)、はじめてペアを組む松戸直樹選手/レオン・キャミア選手組(#19モリワキMOTULタイガーレーシング)。オートレーサーへ転身した青木治親選手が参戦、安田毅史選手とペアを組む#73オートレース
TEAM HARC-PRO.。過去2度の鈴鹿8耐ポールポジション(PP)を獲得している辻村猛選手/伊藤真一選手組(#778F.C.C.TSR
ZIP-FM Racing Team)、ホンダドリーム チーム桜井ホンダは03年優勝の生見友希雄選手/鎌田学選手(#71)のコンビが2年ぶりに復活。また、岡田忠之選手/亀谷長純選手(#74)も3度目のペアで挑む。世界耐久選手権から参戦の北川圭一選手/バンサン・フィリップ選手組(#2
スズキ)、加賀山就臣選手/渡辺篤選手組(#12 スズキ)、中冨伸一選手/吉川和多留選手組(#21
ヤマハ)らが虎視眈々と勝利を狙っていた。
木曜日から特別フリー走行が行われ、前日までの台風の影響などが残り、路面のグリップが悪かったことなどから転倒者が多く出た。渡辺選手、岡田選手、伊藤選手と優勝候補の選手も転倒してしまう。公式練習でトップタイムを記録したのは伊藤選手で唯一2分9秒台に入れた。
金曜日の計時予選では、A組でトップタイムを更新中の清成選手がカシオトライアングルで転倒、タイミングを逃した。最終アタックで前後にフレッシュタイヤを装着した伊藤選手が2分8秒820に入れると、その直後に徳留選手が伊藤選手を上回る2分8秒245を記録して首位に立ち、徳留選手の暫定PPとなった。ナイトセッションではセブンスター
ホンダ 7がトップに立つ。
計時予選のトップ20番手までが最終予選のスペシャルステージ(SS)へと進み、1周のアタックで決勝グリッドを決める。そこで、宇川選手は2分8秒565を記録して暫定トップに立つ。それを破ったのは2分08秒071を記録した伊藤選手。最後に登場したのは計時予選トップの徳留選手だが、記録は2分8秒628。伊藤/辻村組が3年連続で鈴鹿8耐のPPを獲得した。2番手に宇川/清成組、3番手に山口/徳留組、6番手に出口修選手/手島雄介選手(#55
F.C.C. TSR DyDo MIU Racing)が躍進。バーミューレン/藤原組の藤原選手が2分9秒744と自己ベストを更新し8番手。9番手には浜口/森脇組、森脇選手は計時予選で転倒してしまいマシンを大破、それをホンダ学園の生徒たちが徹夜で修復し、SSに挑んだ結果だった。10番手に松戸/キャミア組、キャミア選手は走るごとにタイムを更新、SSでベストタイムを記録した。11番手岡田/亀谷組、12番手に青木/安田組がつけた。
決勝のスタートで、清成選手は素晴らしいダッシュでホールショットを奪うと、序盤から2番手の加賀山選手を突き放し、リードを広げた。清成選手、加賀山選手、辻村選手、山口選手、松戸選手、中冨選手、北川選手、浜口選手、手島選手、岡田選手、バーミューレン選手、安田選手のオーダーで周回を重ねた。
序盤で生見選手が逆バンクで痛恨の転倒。1回目のルーティーンで渡辺/加賀山組がマフラーから火が出るアクシデントでロス、2番手に伊藤選手が浮上する。3番手には徳留選手、4番手にキャミア選手が続いた。伊藤選手はベストタイムとなる2分10秒730で宇川選手を追いかけるが、その差は約30秒と大きく、なかなか射程距離には入らない。3番手に山口選手がつけた。
2回目のライダー交代になったあたりから雨が落ち始める。清成選手は素早い判断で急きょピットイン、レインタイヤに替えトップのままコースイン。山口選手はデグナーで痛恨の転倒。2番手に辻村選手、3番手に中冨選手、4番手に松戸選手、5番手に手島選手、6番手に北川選手、7番手安田選手、8番手岡田選手、9番手山口選手、10番手バーミューレン選手のオーダーとなる。雨のためライトオンの指示。宇川選手、清成選手はウエット路面でも安定した速さを見せ、トップを不動のものとする。雨の中で岡田選手がペースアップするが転倒してしまう。
90周を過ぎたあたりから次第に雨が上がり始め、天気が回復。路面は少しずつ乾き始める。微妙な路面状況となり、3番手まで浮上してきた渡辺選手が転倒してしまう。タイヤチョイスが難しい状況。宇川選手から清成選手にライダー交代し、タイヤはレインでコースへと出た。バーミューレン選手もレインで出た。だが、2番手の辻村選手はスリックタイヤとチョイス、トップを猛攻する構えだ。バーミューレン選手はレインからスリックへ替えるためにピットイン。タイヤ交換のためのイレギュラーのピットインが相次いた。そして、清成選手も遂にピットイン、スリックへと替えた。
辻村選手が緊急ピットインでトップ争いから脱落、トップの清成選手を脅かすものはいなくなった。2番手にはバーミューレン選手が浮上してくる。セブンスター
ホンダの1-2で周回を重ねた。3番手には安田選手がつける。終盤に来て、安田選手と藤原選手のバトルが繰り広げられる。藤原選手は安田選手をかわし2番手を奪い返すが、バーミューレン選手と青木選手が再び争い、青木選手がバーミューレン選手を捕らえて2番手に浮上する。3番手にバーミューレン選手、4番手の梨本圭選手/バリー・ベネマン選手組(スズキ)の梨本選手が転倒、代わって出口選手が上がった。5番手には転倒のアクシデントから追い上げてきた徳留選手が浮上する。
そして、最後のライダー交代が行われた。まず、青木選手から安田選手へと交代、そのタイミングで清成選手、バーミューレン選手、安田選手のオーダーとなる。ラスト50分となった18時40分頃、ピットロードへ滑り込んだ清成選手は宇川選手にバトンタッチ、宇川選手は最後の走行へと飛び出して行った。暗闇の中でも宇川選手の安定した速いペースは変わらず、乱れることなく周回を重ねていく。バーミューレン選手も藤原選手への交代を終えた。藤原選手は安田選手を追撃し、2位を奪い返す。
そして19時30分、8時間を経過。宇川選手は204周をクリアし、7万2000人の大観衆の祝福を受け、Honda勢の鈴鹿8耐9連覇、自身5勝目のチェッカーをくぐり抜けた。大きな成長を見せた清成選手にとっては初優勝。2位にはけがの痛みに耐えた藤原選手が入り、藤原/バーミューレン組は2位を獲得。セブンスター
ホンダは1-2フィニッシュを達成した。3位には安田選手が入った。安田/青木組は鈴鹿8耐で初の表彰台を獲得。Honda勢は表彰台を独占し、4位に健闘した出口/手島組、5位に転倒を乗り越えポジションアップした山口/徳留組と6位までを占めた。14位に伊藤/辻村組。岡田/亀谷組は34位まで挽回した。森脇/浜口組は46位。生見/鎌田組は53位でチェッカーを受けた。
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優勝 #7 セブンスター ホンダ 7
204周 ■宇川徹選手 「最高のチーム、パートナー、マシンに恵まれました。みんなありがとう! とにかく楽なレースはないですね。最初の走行では思うようにタイムが上がらず苦戦しました。でも、雨が降ってきたとき、龍一(清成選手)が落ち着いていたので、安心していました。その後は、自分たちのレースに集中することができました。最後は無理せずに走りました。自身の5勝目はすごい記録だと思いますが、記録は破られるものなので、ぜひ清成選手に破って欲しいです」
■清成龍一選手
「とにかくうれしい。本当に信じられないです。スタートは緊張しましたが、混戦を覚悟していたので、序盤に加賀山選手が迫ってきても、自分のペースのことだけ考えて走りました。その後は、トップで8耐を走るのが初めてだったので、気を抜かないようにしました。最後に宇川さんにバトンタッチした時には、まだ残っていた水溜りの情報を伝え、勝利を確信しつつ『がんばってください!』と言いました」
■石井勉総監督
「セブンスター ホンダ 7チームは安定していました。勝因はスタートが良かったことと、タイヤ選択が早くできたことだと思います。ピットワークも速かったし、ライダーも落ち着いていました。とにかく完璧なレースができたと思います。皆さん、応援ありがとうございました」
2位 #11 セブンスター ホンダ 11
201周 ■藤原克昭選手
「3、4回目の走行で腰が痛く、痛み止めの注射を打って走りました。でも、セブンスターホンダの1-2フィニッシュに貢献できて光栄です。最後の走行の前に宇川さんから「ワンツー、頼むな!」と言われ、何がなんでも2位を取ると気合を入れました。クリスも安定して走ってくれたので感謝しています。来週、僕とクリスは世界選手権のレースがイギリスであります。この勢いのまま、二人とも絶対に勝ちたいと思います」
■クリス・バーミューレン選手
「鈴鹿8耐は世界で一番難しいレースだというのがよく分かった。今日は状況の変化が難しく、ミスをしないように気をつけていた。雨の走行でミシュランのレインタイヤを使ったのは初めてだったが、限界が分からなかったのであえて抑えて走行した。最後にカツ(藤原選手)にマシンを渡す時に言った言葉は『Good
Luck』。カツは頑張ってくれた。とにかく2位に入れて本当にうれしい」
3位 #73 オートレースTEAM HARC-PRO.
200周 ■青木治親選手
「今はオートレースに転向していますが、やはり自分が育ったロードレース界に話題性を持たせて盛り上げていきたいという気持ちと、オートレースのことも自分が鈴鹿8耐に出場することで多くの皆さんに知って頂きたかったので出場を決めました。表彰台に立てたことは本当にうれしいですね。この結果は、ご協力を頂いた皆さまのおかげです。安田選手とチームの頑張り、そしてHondaのバイクに感謝します」
■安田毅史選手
「青木さんがテストする機会が少なかったので、マシンをセッティングして、青木さんが乗れない分、アベレージを上げるよう努力しました。やはり世界チャンピオンの青木さんの走行や姿勢は勉強になりました。チームを組めたことで、色々と吸収しようと頑張りました。去年、勢いで鈴鹿8耐に臨んで転倒してしまったので、今年は転倒しないことに集中しました。3位表彰台は夢のようです」 |
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