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1996年全日本ツーリングカー選手権出場車 No.14 服部尚貴
エンジンルームに余裕があるアコードでは、エンジンの搭載位置も極限まで下げることができた。リバースヘッドとなり、バルクヘッドぎりぎりまで寄せて置かれている。
しかし「出る杭は打たれる」というべきか、シーズン序盤、思いも寄らずフロントサスペンションの構造にレギュレーション違反の疑義が他陣営から出された。開発陣にとっては納得しがたい裁定であったはずだがHondaはそれを受け入れ、第4大会MINEをキャンセルして改修を行なっている。驚くべきは、欠場の2週間後に行なわれた合同テストには大幅改修を終えて車両規則を満たしたマシンを3台揃え、トップタイムを記録してみせたこと。このマシンは「2X」と呼ばれた。そして第5大会の仙台ハイランドに現れた2Xは、1Xを上回る速さを示した。つまりこの短期間改修は必ずしも裁定を受けて行なったのではなく、1Xを設計する段階で見えてきていた課題点を織り込んで開発が進んでいた次世代機を前倒しで投入したものであり、それこそが2Xだったのだ。
こうしてアコードは最終戦までに8勝して「最強のツーリングカー」と呼ばれるに至ったが、最終イベントであるインターTECでも物議を醸すこととなった。タイトル争いをして2連勝を飾りながら再び車両規則について抗議が出され、走行性能に影響するとは思えない些細な形状についての問題ではあったが大会審査委員会はレース後、2台に失格というペナルティを下した。それでも服部とアコードはシリーズチャンピオンに輝いた。それほどに2Xは圧倒的に速かった。
95年から追加が許されたエアロパーツ。アコードのリヤには中央部が低く湾曲した形状の１エレメントウイングが装着されていた。
アコードは97年シーズン中にフロントトレッドを拡大した「2.5X」を経て空力を全面的にリファインした「3X」へと進化、アメリカのレースへ挑戦を始めた服部尚貴に代わって道上龍が14号車を駆った。15号車に黒澤琢弥、16号車に中子修という前年同様の3台に加えて33号車で岡田秀樹も参戦、計4台の体制となった。この年も開幕戦で中子が、第2戦で黒澤が勝つなど好調で、結果的に4勝した中子がシリーズチャンピオンに輝いている。JACCS MC ACCORDの道上はシリーズ5位であった。
投入初年度でタイトルを獲得し、一躍シリーズの主役となったアコードを、北元はこう評している。「アコードは本当に速かった。2年目には究極の4気筒エンジンも入れたし。トルクは28kgくらい出ていて、昔のF2で使っていたV6より強力で、しかも軽い。『外観は量産だけど、中身はF1だ』って言われてた」
Hondaはシビック・フェリオで2シーズン、アコードで2シーズンを戦い、2年連続で王者を輩出するという偉業を達成してJTCCの舞台から去った。以後は高い人気を獲得しつつあったJGTC（全日本GT選手権）への転進を進めていったが、勝つための車両づくりや空力の重要性など、ここでアコード開発時の教訓が活きた。HondaはJGTC本格参戦から4シーズン目の2000年に、道上の駆るNSX-GTによってGT王者となるのである。
| 型番 | CD6 |
|---|---|
| 全長×全幅 | 4675×1760mm |
| ホイールベース | 2715mm |
| トレッド（前／後） | 1530／1535mm |
| サスペンション（前後とも） | ダブルウィッシュボーン |
| 駆動方式 | 前輪駆動 |
| タイヤ | ミシュラン製19インチ |
| トランスミッション | ホンダ製6速シーケンシャル |
| 車体重量 | 975kg以上 |
| 型式 | H22A |
|---|---|
| 形式 | 水冷直列4気筒DOHC |
| 排気量 | 1995cc |
| ボア×ストローク | 88.0mm×82.0mm |
| 最高出力 | 300ps以上／8500rpm |
| 燃料供給方式 | PGM-FI |
| 過給機 | なし（自然吸気） |
