2006年全日本マウンテンバイク選手権大会が7月16日、石川県の瀬女高原スキー場で開催された。Team G Cross Hondaは、井手川直樹選手が予選、決勝ともに圧倒的タイムで完全優勝。全日本チャンピオンを手中にした。チームメイトの内嶋亮選手も冷静な攻めの走りで2位となり、1-2フィニッシュとなった。
全日本選手権大会は、ジャパンシリーズとは別格式の大会であり、競技はUCI(国際連盟)規則の年齢別で年1回行われる。井手川、内嶋両選手が出場するのは23歳以上の「シニア・エリートクラス」で、全日本チャンピオンのタイトルがかかっている。
3650mのコースはシングルトラック、ハイスピードセクション、不規則な段差やキャンバーなど変化に富むが、中でも最大のテクニカルセクションで勝負を左右するといわれるのが瀬女名物のブナ林だ。雨天時にはよく滑る木の根が無数に露出する路面の連続が、ライダーを崖下へと誘い、難所セクションとして名高い。梅雨時ということもあり、レースウイークの練習日は雨が続いた。それも、強い雨が通り過ぎたと思うと数分後には太陽が射し、やがて再び雨が降るという非常に変わりやすい天候で、ひと雨ごとにコースはマディとなった。
決勝前日、難所セクションもリズミカルに、まるでダンスを舞うように走る井手川選手は「とても調子がいい、思いきり走れる」、そして内嶋選手も「走っていてとても楽しい」とコメント。両ライダーともに終始リラックスした雰囲気で、各々のペースで練習走行を重ねた。
そして決勝日、前夜から大量の雨が降り続き、コースの土はさらに流れて、木の根や石の露出する部分も増えた。スタートからゴールまで、すべてで滑る路面の攻略が、最大のポイントとなった。
男子シニア・エリートクラス出場ライダーは全94名。ジャパンシリーズ第2戦までのナショナルポイントランキング1位の内嶋選手が今大会ではゼッケン1番をつけ、予選第1走者となる。その内嶋選手が出したタイムは5分31秒652。予選での獲得ポイントも重要になるため、ライダーたちは雨で濁流のようになったコースを果敢に攻める。しかし、今大会ゼッケン3番をつける予選第3走者の井手川選手が、5分23秒157という驚異的タイムでトップに踊り出ると、その後はさらに早いタイムを出すライダーは最後まで現れなかった。井手川選手1位、内嶋選手2位で予選を終了し、降り続く雨の中、両ライダーは決勝戦へ向け集中した。決勝前、ウォームアップをしながら井手川選手は、瞑想するように目をつぶり、頭の中のコースを確認していた。内嶋選手も音楽を聞きながら精神を集中させた。
予選タイムのトップ30名による決勝は、30位から順のリバース方式で14時半より開始された。雨は小雨となり、そして決勝時にはとうとう上がった。しかし、ライダーにとっては喜ばしいかといえば微妙で、予選時に比べ路面状況と走行ラインはさらに大きく変化し、こねられた泥にバランスを崩し転倒するライダーが続出した。そんな中、内嶋選手はスタート直後に転倒を喫しながらも、諦めない落ち着いた走りで5分32秒481をマーク。その時点での暫定トップに立つ。そして最終ライダーの井手川選手は、ブナ林を始めとする数々の難所もまったく臆することなく、すべてのセクションを圧倒的な速さで華麗に駆け抜けた。タイムは、自身の予選タイムをさらに上回る5分21秒605をマーク。この瞬間、井手川選手の全日本チャンピオンが決定した。井手川選手自身にとって、1996年に獲得して以来10年ぶりの全日本チャンピオン復活となった。
今大会の結果により、両ライダーは8月27日ニュージーランドで開催される世界選手権大会に参戦する。また、次回の国内レースは、9月3日にジャパンシリーズ・ダウンヒル第3戦が岐阜県白鳥で開催される。ジャパンシリーズは残り2レースとなり、いよいよランキングトップ争いも注目される。
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