今年、初めて全日本選手権が開催される和歌山県湯浅町、湯浅トライアルパークは、広大な敷地と切り立った山肌を舞台とした岩盤など、険しい地形を持つ魅力的なエリアでした。
前回、ライバルの黒山健一(ヤマハ)に大きな差をつけられてしまった小川友幸(Honda)は、この新しい会場で、雪辱を果たしたいところ。今回のセクションは、全体的に難度が高く、厳しい攻防戦が予想されました。
はたして、試合開始早々の第1セクションから、黒山が5点、小川友幸が3点と、ともに減点で始まりました。ここでは、小川友幸のほかは小川毅士(ベータ)が3点となった以外、全員が5点となってしまいました。第2では小川友幸、黒山ともに1点。ここでは柴田暁(ヴェルティゴ)がクリーンしましたが、野崎史高(シェルコ)が3点、小川毅士が5点となるなど、なかなか手強いセクションには違いありません。第3セクション、小川友幸は3点で抜けますが、黒山はクリーン。ここで黒山が小川友幸を1点をリードして、さらに難度の高い、斜度がきつい斜面のセクション群に移動します。
今回は、セクション設定が厳しい上に長いものが多く、1分の持ち時間をオーバーしてしまう恐れがありました。そこで小川友幸は、時間が圧倒的に足りないと思われるセクションでは積極的に足をついて、早くアウトまでマシンを運ぶという作戦にも出ています。クリーンを狙うのも大切ですが、クリーンを狙うにはポイントごとを丁寧に処理していく必要があり、どうしても時間を費やしてしまいます。そのため、勝利のためにはマシンをスムーズにセクションの出口まで運ぶことも重要になります。
その通り、1ラップ目の小川友幸は、5点を2つに抑えました。一方、黒山は5点が5つあり、野崎には6つの5点がありました。その反面、7セクション以降、小川友幸にはクリーンがなく、9セクション以降はすべて3点というスコアが並びました。それでも、きちんとセクションを抜け出た小川友幸は、1ラップ目をトップ。わずか1点のリードではありますが、黒山を抑えて後半戦に突入しました。
2ラップ目、第1セクションで3点を取った小川友幸は、ここでトップを黒山に明け渡しました。その後、人工的な第5セクションでつんのめったような状態となって2度の足つきをするなど、少しずつ黒山に差をつけられていきます。2ラップ目の終盤には持ち時間が足りなくなり、終盤のセクションをトライせずに5点のパンチをもらう、申告5点で抜けていくことになりました。トライすればクリーンできるであろう第11セクションでも、小川友幸は5点となりました。それでも、小川友幸には2点、黒山には3点のタイムオーバー減点がつきました。タイムオーバー減点は、持ち時間を過ぎた場合に、1分に1点、減点されるものです。
今回の10セクション2ラップ(セクションは1から12まであったものの、第4と第6は国際B級専用で、IASがトライするのは1ラップ10セクション)を終えてみると、小川友幸のポジションは3番手。トップの黒山に5点差、2番手の野崎に1点差でした。4番手の小川毅士には10点差以上をつけており、残り2つのSS(スペシャルセクション)で、上位を狙う状況となりました。
SS第1はざくざくの岩盤を上り下りするもので、7位となった斎藤晶夫(Honda)がクリーンして喝采を浴びました。しかしその後、小川毅士が5点となるなど、必ずしもクリーンして当然のセクションではありません。小川友幸はここを完ぺきに走ってクリーン。ですが、2番手争いのライバルである野崎もクリーンして、ここでは勝負がつきませんでした。一方、黒山は最後の登りで1度の足つき。小川友幸と黒山の点差は4点、野崎と黒山の点差は3点と、最終SSの結果次第では、勝者が変わりそうな展開となりました。
最終SSは、12セクションを手直ししたもので、高い大岩を登る設定です。1分間の持ち時間も厳しく、なかなかここを走破するライダーは現れません。柴田は惜しいところまでマシンを進めましたが、1分を告げるホイッスルが鳴り響き、タイムオーバーの5点に。続いて小川毅士が5点となって、小川友幸の出番が訪れました。この日、そこここで足つき減点をしていた小川友幸ですが、最後のSSは完ぺき。見事なクリーンで走りきり、残る野崎と黒山のトライを待つことになりました。野崎が2点以上の減点をし、黒山が5点の減点を取ると、優勝は大逆転で小川友幸のものとなる計算です。目の前で小川友幸の華麗なクリーンを見せつけられた野崎は、こちらも美しい走りを披露しましたが、最後で時間がなくなり、3点となってセクションをアウトしました。これで、小川友幸の成績は2位以上となりました。そして黒山のトライです。1回、2回と足をついていきますが、セクションを抜け出れば勝利を得られるのを知っているため、確実にアウトするようにマシンを進め、2点の減点で走破。最終的に、黒山のリードはわずか2点となっていました。惜しくも及ばず、しかし最終SSで逆転2位となった小川友幸は、次戦での勝利を誓います。
小川友幸(2位)
「今回、マシンは完ぺきに仕上がっていましたから、それにうまく乗れなかったライダーの課題が残りました。途中、点差が開いてきたのを知って、なんとか逆転しようという思いが、さらなる減点の要因になってしまった部分もあります。ただ、クリーンをする以外に2位になる術がないという緊張の中で、そのSSを2つともクリーンできたのはよかったです。2戦続けて最後の最後で逆転して2位の座を得ましたが、これで昨年から4連敗となってしまいましたから、次はぜひ、勝利で一矢報いたいです」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
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1 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 3 | 50 | 8 |
2 | 1 | 小川友幸 | 2 | 52 | 7 | |
3 | 3 | 野崎史高 | シェルコ | 0 | 54 | 7 |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 2 | 78 | 4 |
5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 78 | 4 |
6 | 7 | 野本佳章 | ベータ | 0 | 93 | 2 |
7 | 8 | 斎藤晶夫 | 0 | 97 | 1 | |
12 | 14 | 砂田真彦 | 0 | 100 | 0 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 40 | |
2 | 1 | 小川友幸 | 34 | ||
3 | 3 | 野崎史高 | シェルコ | 28 | |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 28 | |
5 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 22 | |
6 | 7 | 野本佳章 | ベータ | 19 | |
7 | 8 | 斎藤晶夫 | 19 | ||
14 | 14 | 砂田真彦 | 6 |