2015年に3年連続で全日本チャンピオンを獲得した小川友幸(Honda)が、4年連続、そして40歳にしての全日本チャンピオン獲得に向けてシーズンをスタートさせました。しかし昨年は、ここ真壁の開幕戦で2位。シリーズチャンピオンを狙う上で、2位はベストではなくても悪くない結果ですが、それでもシーズン初めの戦いで勝利するのと2位になるのでは、気持ちの盛り上がりが違います。
この日の小川は、黒山健一(ヤマハ)との大接戦に耐え、最後のスペシャルセクションで逆転し、2点のリードとともに開幕戦勝利を勝ち取りました。黒山が2位ということで、シーズンの戦いは昨年までと同様、厳しいものとなるに違いありませんが、幸先のいい開幕戦勝利となりました。
レース序盤の小川は、身体の動きが硬く、第4セクションで1点を失います。しかし、ここで黒山が5点。黒山にはリードをとって試合を進めることになった小川ですが、野崎史高(ヤマハ)は第4セクションまでをクリーンしていて、小川は野崎を追いながら、黒山との勝負を進めることになりました。
小川友幸
小川友幸
第5セクションでは小川が5点で、黒山は2点、野崎は3点。トップは野崎の3点で、小川が6点、黒山が7点と続きます。トップライダーにとって、この日のセクションはすべてクリーンが可能ではと思われるものでしたが、トップライダーとてすべてのセクションを完ぺきに走れるものではありません。小川は第8セクションで5点、黒山は第8セクションで1点、第10セクションで3点と減点し、1ラップが終わったときには2人の減点は11点で同点となっていました。対して、野崎は第9セクションでの5点を初め、第8セクションで2点、最終12セクションで3点と減点していて、13点で3位です。4位の小川毅士(ベータ)も19点で優勝争いの一角に入るものの、この時点で優勝争いは小川友幸、黒山、野崎の3人に絞られてきました。
2ラップ目、黒山が第4セクションをあわやクリーンの1点で抜けますが、第3、第7、第10セクションでも1点ずつ減点。対して小川は第5セクションで2点を失ったほかは、第10セクションまでの9セクションをすべてクリーンしています。
ところが2ラップ目の終盤、最後の最後にして、小川は11セクションで1点、12セクションで2点を失ってしまいます。これで、12セクション2ラップの戦いは、小川の16点に対し、黒山は15点で、わずか1点の差ですが小川がビハインドの状態です。残る2セクションには、スペシャルセクションが用意されていました。
小川友幸
小川友幸
スペシャルセクションは、どちらもまるで直角のような崖を登っていくヒルクライムセクション。ゼッケン順でトライしていくため、最初にトライするのはルーキーの武井誠也(Honda)でした。スーパークラスを初めて走るライダーには険しい難所です。果敢にトライしていきますが登ることができませんでした。SS第1を最初に登ったのは小川毅士で、そこまでは全員が5点の状態です。野崎が1点で抜け、黒山が本当にわずかのミスで減点3。最後にトライした小川は華麗にクリーンをし、黒山との点差を逆転して2点差としました。そして最後のSS第2となります。
SS第2は、アウトで急ターンを余儀なくされる難しい設定。ここでは砂田真彦(Honda)が最初に3点で走破すると、最後のターンでの1回足つきのみの減点1で走破するライダーが出始めました。そして野崎がここをクリーン。優勝争いをする小川と黒山は、クリーンをしなければ終われません。勝算はあっても、ここで5点ともなれば最後の最後の逆転劇となってしまうため、プレッシャーも大きなものとなります。
まず黒山がトライし、クリーンします。残るは小川ただ一人となり、リードは2点。クリーン数は小川の方が多いので、ここを2点減点以内で走破すれば、勝利は小川のものとなります。しかし、小川の望むものはクリーン以外にはありませんでした。短い助走から最後の絶壁を登り、そしてターン。すべてが完ぺきでした。そしてこの瞬間に、小川の開幕勝利が決まりました。
武井誠也
強豪ライダーがひしめくIAクラスでは、Hondaのベテラン同士による優勝争いが繰り広げられました。勝利を収めたのは小野貴史でした。小野は、IASクラスで活躍する全日本チャンピオンの小川友幸(Honda)と、同じチームでトライアルを学んだ経験を持つライダーです。
小野貴史
小野は、1ラップ目が終了した時点では3位でした。参加者が多く、渋滞するのを見越して早めのペースでセクションをこなしていき、2ラップ目でベストスコアをマークして優勝を決めました。
小野は2014年シーズンにじん帯に損傷を負って以来欠場が続いており、昨年最終戦から戦列復帰をしたばかりです。カムバックに花を添える、幸先のいい勝利となりました。
小野と3点差で2位の座についたのは、本多元治(Honda)でした。近年はデモンストレーションや、ツインリンクもてぎでの世界選手権のコース作りなどに忙しく、全日本選手権は不参戦が続いていましたが、出場すれば優勝争いに加われる力を持ったトライアルライダーです。
Hondaマシンのライダーは、6位までに4名、10位までに5名が名を連ね、上位陣の大半を占める好成績を得られました。
今シーズンからレディースの全日本選手権が始まり、開幕戦には6名のライダーが参加しました。
小玉絵里加
このクラスは国内A級に相当するか、それ以上の実力を持つ女子ライダーが参加するクラスです。昨年にオープンクラスとして、全日本トライアル選手権に併催されたレディースクラスに出場した5名のライダーが参戦しました。さらに、トライアル・デ・ナシオンで2位を獲得したときに代表選手だった西村亜弥(ベータ)が出場し、合わせて6名のライダーが参戦しました。西村は国際B級でポイントを獲得したことがあり、そのほかの5名は国内A級のライダーです。
レディースクラスでは、ほかのクラスで使用された12セクションのうち、7セクションが選ばれてコースが構成されました。国際B級とほとんど変わらないセクションで、レディースクラスでしのぎを削ってレディース全体のレベルアップを図りたいという、選手たちの希望に沿ったものとなりました。
全日本選手権ならではの緊張感や、難しいセクションへの挑戦など、レディースクラスには課題の多い大会となりましたが、開幕戦が無事に終了しました。初のチャンピオンの座を誰が獲得するか、興味の尽きないシーズンが始まりました。
Honda RTL300Rに乗る小玉絵里加は、1点差で惜しくも3位表彰台を逃して4位でした。
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | 小川友幸 | 0 | 16 | 20 | |
2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 0 | 18 | 17 |
3 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 0 | 23 | 18 |
4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 0 | 39 | 14 |
5 | 6 | 田中善弘 | ベータ | 0 | 57 | 9 |
6 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 0 | 61 | 5 |
12 | 12 | 斎藤晶夫 | 0 | 88 | 2 | |
13 | 11 | 砂田真彦 | 0 | 92 | 3 | |
16 | 16 | 武井誠也 | 0 | 103 | 1 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 24 | 小野貴史 | 0 | 23 | 14 | |
2 | 11 | 本多元治 | 1 | 26 | 12 | |
3 | 13 | 久岡孝二 | ガスガス | 0 | 35 | 12 |
4 | 16 | 西元良太 | ベータ | 0 | 37 | 12 |
5 | 6 | 寺澤慎也 | 0 | 39 | 10 | |
6 | 2 | 村田慎示 | 0 | 40 | 11 | |
7 | 3 | 徳丸新伍 | 0 | 42 | 8 | |
19 | 19 | 松浦翼 | 0 | 59 | 3 | |
22 | 41 | 鈴木克敏 | 0 | 65 | 4 | |
33 | 05 | 寺岡昭雄 | 0 | 95 | 0 | |
40 | 50 | 多田雅志 | 0 | 106 | 0 | |
41 | 38 | 真田啓行 | 0 | 106 | 0 | |
43 | 39 | 生田目俊之 | 0 | 111 | 0 |
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム減点 | 総減点 | クリーン数 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6 | 西村亜弥 | ベータ | 0 | 20 | 6 |
2 | 1 | 小谷芙佐子 | スコルパ | 0 | 35 | 2 |
3 | 4 | 佐々木淳子 | ベータ | 0 | 45 | 0 |
4 | 2 | 小玉絵里加 | 0 | 46 | 2 | |
5 | 3 | 稲垣和恵 | シェルコ | 0 | 56 | 0 |
6 | 5 | 寺田智恵子 | シェルコ | 0 | 58 | 1 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 1 | 小川友幸 | 20 | |
- | 2 | 2 | 黒山健一 | ヤマハ | 17 |
- | 3 | 3 | 野崎史高 | ヤマハ | 15 |
- | 4 | 4 | 小川毅士 | ベータ | 13 |
- | 5 | 6 | 田中善弘 | ベータ | 11 |
- | 6 | 5 | 柴田暁 | ヴェルティゴ | 10 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 24 | 小野貴史 | 20 | ||
- | 2 | 11 | 本多元治 | 17 | ||
- | 3 | 13 | 久岡孝二 | ガスガス | 15 | |
- | 4 | 16 | 西元良太 | ベータ | 13 | |
- | 5 | 6 | 寺澤慎也 | 11 | ||
- | 6 | 2 | 村田慎示 | 10 | ||
- | 7 | 3 | 徳丸新伍 | 9 |
順位 | No. | ライダー | マシン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 6 | 西村亜弥 | ベータ | 20 |
- | 2 | 1 | 小谷芙佐子 | スコルパ | 17 |
- | 3 | 4 | 佐々木淳子 | ベータ | 15 |
- | 4 | 2 | 小玉絵里加 | 13 | |
- | 5 | 3 | 稲垣和恵 | シェルコ | 11 |
- | 6 | 5 | 寺田智恵子 | シェルコ | 10 |
小川友幸(優勝)
「前半で動きがちょっと硬くなってしまって減点をしてしまいました。最後に細かいミスをして逆転されていたので、スペシャルセクションでは厳しい戦いとなりました。クリーンをする自信はあったのですが、クリーンか5点か、というセクションでもあったので、最後まで緊張のとけない戦いでした。黒山選手がSS第1で3点となって、トップに返り咲いてはいましたが、最後のSSを走り終えるまでは、本当に気が抜けませんでした。今年もきっと、こんな戦いが続くのだと思いますが、がんばっていきたいです」