最終戦の全日本モトクロス選手権は、例年のように海外からのライダーを迎えた華やかさと、IA両クラスのタイトル決定戦という緊迫感に満ちた大会となった。
IA1クラスには、WGPライダーが4人エントリー。ステファン・エバーツ選手(ヤマハ)、スティーブン・ソード選手(カワサキ)、タネル・レオク選手(カワサキ)、熱田孝高選手(スズキ)が出場した。このヨーロッパ勢の他に、AMA参戦から帰国した成田亮選手(Honda)も交え、ハイレベルなレースが期待された。
IA1クラスのタイトル争いは、ポイントリーダーの小池田猛選手(ヤマハ)を高濱龍一郎選手(Honda)が31点差、増田一将選手(TEAM HRC)が38点差で追う展開。IA2クラスはランキング上位3名が接近戦となっており、ポイントリーダーの溝口哲也選手(カワサキ)に対し、2位の福留善秀選手(TEAM HRC)が4点差、3位の小島庸平選手(スズキ)が9点差という、三つどもえの構図で決戦の日を迎えた。
会場のスポーツランドSUGOには、土日とも降雨があり、コンディションはマディとなった。タイムスケジュールに遅延が生じたため、IA1とIA2の決勝レースは20分プラス1周に短縮されて行われた。また、コンディションの悪化とともに、ヒート2では勾配の急な大坂上りがショートカットされた。
▼IA1(450/250)ヒート1 ホールショットの熱田選手に、加賀真一選手(スズキ)、釘村太一選手(ヤマハ)、増田選手、成田選手と続く。1コーナーでは辻健二郎選手(TEAM HRC)、高濱選手、エバーツ選手の3台が絡むクラッシュが発生。いきなり波乱に満ちたレースになった。増田選手は2周目に3番手に浮上。トップは一時加賀選手になったものの、熱田選手がトップを取り返し、リードを広げた。 10分過ぎには、上位に成田選手が割って入り、5周目には2番手まで浮上。その後、加賀選手、増田選手が相次いで転倒を喫し、後退した。3番手にはレオク選手が浮上。これで熱田選手、成田選手、レオク選手の上位3名が確定し、チェッカーが振られるまでポジションに変動はなかった。 辻選手は7位まで追い上げた。増田選手は2周遅れの22位でフィニッシュ。高濱選手はエンジントラブルで3周目にリタイア。この時点で、IA1タイトルは6位でゴールした小池田選手が獲得した。
▼IA1(450/250)ヒート2 スタートから飛び出したのは、出原忍選手(ヤマハ)、エバーツ選手、熱田選手、加賀選手、成田選手、増田選手といった面々。辻選手は2コーナー先で他車と接触、転倒を喫し、またしても苦しい展開を強いられることになった。増田選手は4周目に4番手まで浮上したが、転倒で脱落。再始動に手間取ってしまい、ポイント圏外からの挽回を図った。 レースは中盤でエバーツ選手、成田選手、出原選手のポジションが固まり、各々単独走行を続けてゴール。両ヒートを通じて2位入賞を連ねた成田選手が、見事総合優勝を果たした。
▼IA2(250/125)ヒート1 ホールショットは福留選手。新井宏彰選手(カワサキ)、平田優選手(カワサキ)、井上眞一選手(カワサキ)、中堀敏宏選手(Honda)、溝口選手と続く。大坂を上りきった所で小島選手が転倒し、大きなハンディを負うことになった。福留選手は序盤、3〜4秒のリードを得てトップを快走したが、新井選手と平田選手が近づいて脅威を与えた。 15分過ぎには福留選手、平田選手、新井選手が三つどもえのデッドヒートを演じたが、平田選手をかわして福留選手の直後まで迫った新井選手が転倒。福留選手は残る周回を大事に走りきり、苦手のマディを制しての優勝をつかんだ。 福留選手とタイトルを争う溝口選手は4位、小島選手は8位でチェッカーを受けた。この結果、福留選手がポイントランキングで逆転し、首位に躍進。溝口選手に対し3点、小島選手に対し17点のリードをつけて、次のヒート2に臨むことになった。
▼IA2(250/125)ヒート2 福留選手がこの日2度目のホールショットを決めて、レース序盤を支配した。背後には小島選手、溝口選手と役者がそろう。3周目には小島選手がトップに立つが、スタックで周遅れとなった。レース後半は、福留選手を溝口選手が追いかける展開となったが、福留選手が逃げきりパーフェクトウイン。最終ラップには溝口選手に代わるオーバーテイクで、中堀選手が2位に浮上した。 この結果、福留選手は自身初の全日本チャンピオンシップを獲得。シーズン序盤の負傷欠場を跳ね返し、逆転でつかみ取った栄冠だった。
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