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inside HPD〜語り継がれるアメリカン・ホンダ・レーシング・スピリット
vol.8堀内大資(Daisuke Horiuchi)Hondaパフォーマンス・ディベロップメント(HPD)チーフ・エンジニア
「全ドライバーに同じエンジンを!」

シボレーが2005年いっぱいでIRLから撤退し、2006年シーズン後に撤退すると発表していたトヨタは、主力のチーム・ペンスキーとチップ・ガナッシ・レーシングが2006年からHondaを使うことに決めたため1年前倒しで撤退。これで2006年にエンジンを供給するのがHondaだけになったのですが、vol.6をご覧いただいたように、我々はインディを続けることを決断しました。

ワンメイクというと全ドライバーが同じエンジンを使うわけですから、性能差があったり、エンジンが壊れたせいで最後までレースを走れなかったというようなことが、絶対にあってはいけません。エンジンを交換するタイミングもチームによって異なるので、リビルトしたてのフレッシュなエンジンと、500マイル、1000マイル、1400マイルと走っても性能差が1%以内になるような耐久性と信頼性を確保しました。

もちろん、エンジンのリビルトが終わった後は必ずダイナモでチェックし、その時に基準値のプラス・マイナス1%以内のパワー差に収まっていなければ、原因を徹底的に追究してもう1回組みなおします。全チームとドライバーに同じ性能、パフォーマンスを保証することがワンメイクの難しさであり、各部品の品質管理も含めた生産体制の向上に努めました。

チームとドライバーがエンジンの性能をフルに発揮できるよう、現場でのエンジニアのサポートも重要な仕事です チームとドライバーがエンジンの性能をフルに発揮できるよう、現場でのエンジニアのサポートも重要な仕事です

レースが行われる現場でのトラック・サポートも工夫し、それまでと同じように一人のエンジニアが同じチームを担当すると、「そのエンジニアがいるから勝つんだ」なんてことを言われたら困るので、1レースごとにローテーションすることにしました。毎戦一人のエンジニアが2チームを見ているのですが、次のレースでは違う2チームをサポートするといった具合です。

2005年12月にワンメイクとなることが決まってから約3ヶ月でシーズンの開幕に間に合わせただけでなく、5月のインディ500では参戦する33台すべてに無事エンジンを用意することができました。インディ500はほぼ1ヶ月にわたり、全車がプラクティスと予選で1周2.5マイルのスピードウエイを12155周し、その距離は20387.5マイル(約32809.6キロ)にも及びましたが、確認されたエンジンのメカニカル・トラブルはプラクティス中の1度だけ。記念すべき第90回目のレースでは、史上初めてエンジン・トラブルのないインディ500となったのです。

全車Hondaエンジンとなった2006年のインディ500、90回中初めてエンジン・トラブルが無いレースとなりました 全車Hondaエンジンとなった2006年のインディ500、90回中初めてエンジン・トラブルが無いレースとなりました
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