スコット・ディクソンがインディジャパン初優勝でポイントリーダーに
武藤英紀14位、松浦孝亮17位、ロジャー安川20位

2009年9月19日(土)
決勝
会場:ツインリンクもてぎ(全長1.52マイル)
天候:晴れ
気温:24〜25℃

ブリヂストン・インディジャパン 300マイルは今年から秋にスケジュールが移され、栃木県の本格オーバルコースであるツインリンクもてぎでシルバーウイークに開催された。温暖で快適な気候を期待してのスケジュール変更は功を奏し、好天の下、5万人の大観衆を前にレースは行われた。

インディジャパンは最終戦のひとつ前の第16戦。3人のドライバーがチャンピオンになる可能性を残して日本へとやって来た。その中でツインリンクもてぎでのレースでトップ争いを繰り広げたのは、ポイント3位のスコット・ディクソン(Target Chip Ganassi Racing)とポイント2位のダリオ・フランキッティのチームメート同士だった。ポイントリーダーのライアン・ブリスコー(Team Penske)は予選4位からスタートしたがハンドリングが今ひとつで、レース中盤までトップ争いから一歩下がったポジションを走り続け、チャンスをうかがっていた。

レーシングドライバーの塚越広大選手が運転するHondaの新型燃料電池車「FCXクラリティ」のリーディングによりスタートした200周のレースだったが、104周目を迎えたとき、フランキッティが一瞬コントロールを乱し、その隙をついたディクソンがオーバーテイク。このすぐ後にブリスコーが2回目のピットストップに向かったため、ディクソンがトップを奪還した。この直後、ブリスコーが106周目のピットストップからコースに復帰するところでスピンし、左フロントサスペンションを壊して大きく後退した。

トップに返り咲いたディクソンは危なげない走りでフランキッティをリード。最後までそのスピードは落ちることがなく、チームメートに1.4475秒という大差をつけて今季5勝目のゴールへと飛び込んだ。ディクソンは自らが持つIRLインディカー・シリーズ歴代最多勝利数記録を「21」へと更新した。

シーズン5勝目に一番乗りを果たしたディクソンはポイント3番手からポイントリーダーとなり、2位でゴールしたフランキッティは、ポイント2番手をキープ。フランキッティとディクソンのポイント差は5点である。ポイントトップで日本に来たブリスコーは、アクシデントを起こしたために18位でゴールとなり、ディクソンに8ポイント差、フランキッティに3ポイント差の3番手で最終戦に臨むこととなった。3人によるチャンピオン争いは最終戦で決着する。

武藤英紀(Andretti Green Racing)は、22番グリッドから徐々にポジションを上げたが、予選でのアクシデントで体調が万全でなく、14位でのゴールとなった。予選16位からスタートした松浦孝亮(Conquest Racing)はハンドリングの苦しいマシンと格闘しながらも完走し、17位フィニッシュ。ロジャー安川(Dreyer & Reinbold Racing)は快調な序盤を戦っていたが、走行中にショックアブソーバーが破損し、その修理に時間がかかって20位フィニッシュとなった。

コメント

スコット・ディクソン(優勝)

「ついに日本で勝つことができた。ツインリンクもてぎはインディ500の次に勝ちたいコースだった。このコースは攻略が本当に難しいからね。チームは1-2フィニッシュを達成し、個人的には優勝してポイントトップに返り咲くこともでき、最高の一日になった。とてもうれしい。ライバルたちを打ち倒し、チャンピオンとなるために最終戦も全力でがんばりたい」

ダリオ・フランキッティ(2位)

「ディクソンは先頭を走ると速く、私はトラフィックの中で速かった。2台の力が拮抗していたため、前を走っている方が優勝するというレースになっていた。私は燃費をセーブする作戦でトップに立ったが、他車をパスしようとしたときにコースの汚れている部分に載り、一瞬コントロールを失って、トップを奪われることになった。チャンスが来ることを期待したが、残念ながらそういう展開には最後までならなかった」

グラハム・レイホール(3位)

「高速オーバルで初めて表彰台に上ることができた。Newman/Haas/Lanigan Racingは一生懸命にチーム力向上を目指してがんばってきた。そして、その成果がシーズン終盤になって現れてきている。ツインリンクもてぎを走るのは今年が初めてだったが、コースはエキサイティングだし、ファンは熱狂的。また来年が楽しみだ」

武藤英紀(14位)

「応援してくれたファンのみなさんにありがとうと言いたいです。こんな順位でフィニッシュするのは本当に悔しいですが、実は昨日のアクシデントで少し肉体面に問題が出ていました。スタートしてしばらくすると、めまいのような症状が出て、集中力を保てなくなっていました。しかし、フルコースコーションの間にはファンのみなさんが旗を振ってくれているのが見えました。その応援によってパワーをもらえたからこそ、最後まで走ることができたのだと思います。今日のレベルにまでマシンを仕上げてくれたチームにも深く感謝しています」

松浦孝亮(17位)

「短いプラクティスでハンドリングをよくしきれていなかったので、トラフィックのテストも十分にできてはいませんでした。レースが始まってみると、やはりトラフィックの中でのマシンは大変な状態でした。いつスピンしても不思議はないというマシンでした。しかし、絶対にスピンをしないようにがんばって走り続け、何とか完走を果たすことができました。インディカー・シリーズはますますレベルアップしていますが、いいチーム、いいマシンで来年も参戦ができるようがんばりたいと思います」

ロジャー安川(20位)

「これまでインディジャパンに出場してきた中でベストのマシンになっていました。序盤からいいペースで走っていましたが、1回目のピットストップを終えた直後に左リアのショックアブソーバーが折れてしまいました。ぎりぎりで壁にヒットするのを避け、ピットに戻ってショックアブソーバーを交換。その作業で大きな後れをとってしまいましたが、再び走り出すとマシンは序盤よりさらにいいハンドリングになっていました。来年のインディ500、そしてインディジャパンで必ずやリベンジしたいと強く感じています」

エリック・バークマン|HPD社長

「天候がよく、大勢のファンが集まってくれ、レースは非常にハイペースで流れるように進んでいった。Target Chip Ganassi Racingはすばらしいレースを戦っていた。彼らの2台は見事な速さを保ち、チームメート同士で協力して後続を突き放すスマートさも見せた。その一方でブリスコーはミスを犯し、ポイントランキングは入れ替わった。日本のインディカーファンは本当に熱心で、彼らの前でエキサイティングなレースを行えることに我々は大きな喜びを感じる。今年もチャンピオン争いは最終戦までもつれ込むことになった。しかも、3人のチャンピオン候補は8点という僅かなポイント差の中にいる。最終戦マイアミでの戦いはし烈を極めることとなるだろう」

決勝リザルト

順位 No. ドライバー チーム C/E/T
19スコット・ディクソン Target Chip Ganassi RacingD/H/F01:51:37.6411
210ダリオ・フランキッティ Target Chip Ganassi RacingD/H/F+1.4475
302グラハム・レイホール Newman/Haas/Lanigan RacingD/H/F+3.2002
406オリオール・セルビア Newman/Haas/Lanigan RacingD/H/F+7.3720
55マリオ・モラレス KV Racing TechnologyD/H/F+12.7643
67ダニカ・パトリック Andretti Green RacingD/H/F+16.1392
726マルコ・アンドレッティ Andretti Green RacingD/H/F+16.6513
84ダン・ウェルドン Panther RacingD/H/F+17.2646
92ラファエル・マトス Luczo Dragon RacingD/H/F+17.5790
103エリオ・カストロネベス Team PenskeD/H/F+1Lap
1111トニー・カナーン Andretti Green RacingD/H/F+20.4485
1218ジャスティン・ウィルソン Dale Coyne RacingD/H/F+22.8622
1320エド・カーペンター Vision RacingD/H/F+2Laps
1427武藤英紀 Andretti Green RacingD/H/F+19.0664
1513E.J.ヴィソ HVM RacingD/H/F+22.2397
1633ロバート・ドーンボス HVM RacingD/H/F+23.9025
1734松浦孝亮 Conquest RacingD/H/F+5Laps
186ライアン・ブリスコー Team PenskeD/H/F+15Laps
1998スタントン・バレット Curb/Agajanian/Team 3GD/H/F+18Laps
2043ロジャー安川 Dreyer & Reinbold RacingD/H/F+28Laps
2114ライアン・ハンターレイ A.J.Foyt EnterprisesD/H/F+43Laps
2224マイク・コンウェイ Dreyer & Reinbold RacingD/H/F+97Laps
23 23トーマス・シェクター Dreyer & Reinbold RacingD/H/F+117Laps

ポイントスタンディング

順位 ドライバー チーム 総合ポイント
1スコット・ディクソンTarget Chip Ganassi Racing570
2ダリオ・フランキッティTarget Chip Ganassi Racing565
3ライアン・ブリスコーTeam Penske562
4エリオ・カストロネベスTeam Penske403
5ダニカ・パトリックAndretti Green Racing381
6マルコ・アンドレッティAndretti Green Racing368
7グラハム・レイホールNewman/Haas/Lanigan Racing366
8トニー・カナーンAndretti Green Racing354
9ダン・ウェルドンPanther Racing342
10ジャスティン・ウィルソンDale Coyne Racing334
11武藤英紀Andretti Green Racing325
12エド・カーペンターVision Racing303
13ラファエル・マトスLuczo Dragon Racing296
14ライアン・ハンターレイA.J.Foyt Enterprises281
15マリオ・モラレスKV Racing Technology278
16ロバート・ドーンボスHVM Racing271
17マイク・コンウェイDreyer & Reinbold Racing246
18E.J.ヴィソHVM Racing234
19ウィル・パワーTeam Penske215
20トーマス・シェクターDreyer & Reinbold Racing173
21オリオール・セルビアNewman/Haas/Lanigan Racing115
22アレックス・タグリアーニConquest Racing114
23ポール・トレイシーKV Racing Technology113
24ミルカ・デュノーDreyer & Reinbold Racing100
25サラ・フィッシャーSarah Fisher Racing77
26ジャック・ラジアーCurb/Agajanian/Team 3G65
27リチャード・アンティヌッチCurb/Agajanian/Team 3G63
28ヴィットール・メイラA.J. Foyt Enterprises62
29スタントン・バレットCurb/Agajanian/Team 3G62
30ダレン・マニングDreyer & Reinbold Racing38
31タウンゼント・ベルRahal Letterman Racing32
32A.J.フォイト4世A.J.Foyt Enterprises26
33アレックス・ロイドChip Ganassi Racing Sam Schmidt Motorsports17
34スコット・シャープPanther Racing16
35ネルソン・フィリップHVM Racing16
36松浦孝亮Conquest Racing13
37ジョン・アンドレッティRichard Petty Motorsports/Dreyer & Reinbold Racing12
38フランク・モンタニーAndretti Green Racing 12
39ロジャー安川Dreyer & Reinbold Racing12
40デイビー・ハミルトンDreyer & Reinbold Racing10