デトロイトといえば、アメリカ自動車産業の首都。地域住民のレースへの理解や期待度は高く、レースイベントの復活は大いに歓迎された。らつ腕プロモーターの活躍もあり、自動車産業に限らない多くのスポンサーが集まり、新生デトロイト・インディ・グランプリはより華やかなイベントとして生まれ変わり、大々的に開催された。今週のアメリカは秋の訪れを告げるレイバーデイ(労働者の日)ウィークエンドで、ベル・アイルにはこの夏最後のビッグ・イベントを楽しもうと数多くのファンが詰め掛けた。レースの復活を喜ぶ地元ファンはデトロイトリバー対岸のカナダからも集まり、ストリートレースならではの活気がベル・アイルにはみなぎっていた。
予選でポールポジションを獲得したのは、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)。ポイント2位につけているダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が2番手、そして、第15戦終了時点でポイントリーダーとなったスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)が予選3番手につけた。
90周のレースは午後3時半過ぎにスタートが切られ、PPのカストロネベスがトップを堅持。そのすぐ後方ではフランキッティが2位を守ったものの、ディクソンは予選4番手だったトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)に先行を許し、4位へと1つ順位を下げた。この4人はレースが進むにつれて徐々に5位以下を引き離し、トップ争いを続けた。
ところが、レースはアクシデントが多発してピットタイミングがチームごとに異なる展開となり、結果的にベストの作戦は、67周目に出された5回目のフルコースコーションを利用して給油を行うことだった。49周目のピットストップでフランキッティの前に出ていたトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が3位のポジションからピットへと向かい、一旦は順位を6位まで下げたものの、ライバル勢のほとんどが次に出されたフルコースコーションでピットインしたために残り20周でトップに浮上。そのままゴールまで逃げ切り、今シーズン5勝目を飾った。
フルコースコーションが多くなったため、レースは2時間10分でチェッカーフラッグが振られ、予定の90周より1周少ない89周でゴールとなった。2位にはカナーンと同じタイミングでピットインしたバディ・ライス(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)が浮上したが、最終ラップで燃料が底をつき、失速した彼をパスしようとしたディクソンが接触、2台はスピンに陥り、すぐ後方を走っていたフランキッティまでをも巻き込むアクシデントへと発展した。これにより5位を走行していたダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が2位でフィニッシュし、ダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)が予選16番手から3位フィニッシュを果たした。
チャンピオン争いを展開中のディクソンとフランキッティの戦いは、終始フランキッティ優位のまま進んでいた。しかし、69周目に同じタイミングで2人は最後のピットストップを行い、作業スピードの差でディクソンが前に出ることに成功した。そして迎えた最終ラップ、2台はそろってアクシデントに遭った。フランキッティは走り続けることができたが、1周遅れの6位でゴールすることとなった。ディクソンはライスの後ろの8位フィニッシュとなったため、2人のポイント差はディクソンの4点リードから一転、フランキッティが逆に3点をリードして最終戦シカゴランドを迎えることとなった。また、ポイント3位のカナーンが優勝したことにより、彼にもまだ最終戦で大逆転タイトル獲得の可能性が残されることとなった。
スーパーアグリ・パンサー・レーシングから出場する松浦孝亮は、初めて走るベル・アイルのコースに果敢にアタックした。ミドルフォーミュラの時代からストリートコースを得意とする松浦だったが、プラクティス時にマシンにセッティングミスがあったために苦しい戦いを余儀なくされ、予選順位は14番手と後方からのスタートとなった。オーバーテイクの難しいコースながら、松浦は粘り強い走りを続け、1周の遅れを取ったものの荒れに荒れたレースを最後まで戦い抜き、5位でのゴールを手に入れた。 |