IRL IndyCarシリーズは昨年から出場全車がHonda V-8エンジン「HI7R」を使っているため、パワーは完全なるイコールコンディション。ドラフティングをどれだけ巧みに使ってライバルをパスしていけるかが勝負の決め手となる。全長2マイルのコースを200周して争われるレースではピットストップの回数も多く、クルーたちの仕事ぶりも勝敗に大きく影響する。
決勝日は朝から雨にたたられたため、正午に予定されていたスタートは夕方の4時50分過ぎまでずれ込んだ。辛抱強く待ち続けたファンの歓声を浴びながら、ポールポジションを獲得したポイントリーダーのダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)を先頭に20台のインディカーはグリーンフラッグを受けた。
前日の予選日よりも明らかに低い気温、逆に高くなっていた湿度、長時間の雨によって流されたタイヤラバーと、各チームともスターティンググリッドに並べるマシンのセッティングには難しい決断を迫られた。このようなコンディションでのレースでは、周回が重ねられるにつれて路面のグリップ力も変化するため、柔軟性のあるセッティングでスタートすることが重要で、レース中にどれだけ的確なセッティング変更を施せるかが勝敗を分ける。
フランキッティはレースでも予選と同様の速さを見せた。ピットでのエンジンストールによりいったんは18位までポジションを下げたが、リスタート後の7周で2位までばん回し、その後のピットストップでトップに返り咲いてみせた。彼は200周のレースのうちの102周をリードして見せた。しかし、フランキッティはトップの座を争っていた144周目のバックストレッチでダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)と接触し、ランキング2位のスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)、トーマス・シェクター(ヴィジョン・レーシング)ら7台が巻き込まれる多重アクシデントにより今年初のリタイアを喫した。
26周にもわたる長いフルコースコーションでコース清掃がなされたあと、171周目にこの日最後のリスタートが切られた。残り30周のスプリントレースだ。リスタートのグリーンフラッグをトップで受けたのはスコット・シャープ(レイホール・レターマン・レーシング)だったが、トニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が絶妙のスタートダッシュで3番手から一気にトップへと躍り出た。彼を追うのは、オーバル初優勝を目指すチームメートのマルコ・アンドレッティ。2人の戦いは0.0595秒という僅差でベテランのカナーンに軍配が上がった。予選4番手だったシャープは3位でゴールし、松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選14番手から今シーズンのベスト、そして、キャリア自己ベストに並ぶ4位でフィニッシュした。
カナーンはポイントリーダーのフランキッティ、ランキング2位のディクソンと並ぶシーズン3勝目をマーク。アクシデントに遭ったフランキッティとディクソンのポイント差はレース前の24点から変わらなかったが、カナーンはフランキッティと81点差、ディクソンと57点差に詰め寄り、チャンピオン争いはこの3人による三つどもえの戦いの様相を見せている。 |