全長1.33マイルのナッシュビル・スーパースピードウェイで行われるファイアストン・インディ200は、ナイトレースから一転、午後1時にグリーンフラッグが振られる日中のレースとなった。これは出場チームにとっても、ドライバーたちにとっても、非常に大きなチャレンジとなった。チームは涼しいコンディション用にセッティングしてあったマシンを、気温、路面温度ともに高いコンディション用のものへと変更を行う必要に迫られ、ドライバーたちは通常のレースよりもマシンコントロールに苦労させられることになるからだ。雨によって路面のタイヤラバーが流され、レース序盤のグリップは低くなる。また、レース中の路面コンディションの変化もいつも以上に大きなものとなる。
このようにマシンセッティングが難しいレースにおいて最速のマシンを手にしていたのは、予選と同じくスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)だった。ポールポジションからスタートした彼は、序盤こそダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)にトップを譲り、チームメートのダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)にも先行を許して3位まで後退したが、89周目のバックストレッチで2人をまとめてオーバーテイクしてトップを奪回。その後は徐々に後続を突き放しにかかった。
さらに154周目に行われた最後のピットストップで、素早いピット作業の助けもあってディクソンはフランキッティとの差を3秒にまで広げることに成功。そこから一時は8秒以上という大差を築き上げるほどの速さを見せた。
レースは終盤、松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)の不運なアクシデントによってフルコースコーションとなり、195周目に最後のリスタートが切られたが、ディクソンはゴールまでの5周という短い間にフランキッティに2.2400秒もの差をつけて、第10戦ワトキンス・グレンに続く連勝を飾った。今シーズン2勝目は、ナッシュビルでの2年連続優勝ともなり、ディクソンはビクトリーレーンでギター型トロフィーを高々と掲げた。
3位にはダニカ・パトリック(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が入賞した。昨年までの彼女の最高位は4位だったが、これで今年はテキサスでの第7戦に続いて2度目のトップ3フィニッシュである。
2連勝を飾り、最多リードラップも記録したディクソンは、シリーズポイント争いにおいてフランキッティとのポイント差を47点から34点へと縮めた。序盤にリタイアを喫したトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)はランキング4位へと後退し、ウェルドンが3位に浮上している。残るは6戦。チャンピオン争いは再び激しさを増して、これからの一戦一戦の重要性はとても高いものとなる。
松浦は予選で13番手となったが、車両違反があったために最後尾の18番グリッドからスタート。そのスタートで13位までポジションアップするアグレッシブな走りを見せたが、レース中盤のマシンのハンドリングが苦しく15番手へ後退した。それでも順位をひとつでもばん回してゴールすべく走り続けていた松浦の前へ、ピットへの減速レーンでコントロールを失ったジェフ・シモンズ(レイホール・レターマン・レーシング)が芝生のエリアを乗り越えて飛び出してきた。そのマシンを避けようとして松浦はタイヤかすに乗り、アウトサイド・ウォールに接触。リタイアを喫した。
なお、前日14日に開催されたIndyProシリーズ第11戦で、武藤英紀(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選4番手からスタートし、6位でフィニッシュした。 |