ワトキンス・グレンはニューヨーク州北西部の山間にある小さな町だが、1940年代に公道レースが開催されるようになり、アメリカにおける自動車レースのメッカとなった。1957年には常設サーキットがオープン。1961年から1980年までの20年間に渡ってF1グランプリの舞台となった。
自動車レースの豊かな歴史を持つ町の伝統あるサーキットでIRLのIndyCarレースが行われるのは、今年で3回目。全長3.37マイルのアップダウンに富んだレイアウトは、F1グランプリが行われていたコースとほぼ同じで、バックストレッチエンドにシケインが加えられているが、今でもれっきとした高速サーキットだ。山間部のサーキットであるために悪天候に見舞われることも少なくないワトキンス・グレンだが、今年はプラクティス開始から決勝までの3日間を通して青空に恵まれ続け、集まったファンはオープンホイール・マシンによる高速ロードコースバトルを堪能した。
高度なスキル、体力、そして勇気が求められるチャレンジングなコースで行われた第10戦を制したのは、スコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)だった。ディクソンにとっての今シーズン初勝利は、ワトキンス・グレンでの3年連続優勝という快挙である。同一イベントでの3年連続優勝を記録したドライバーは、これでIRL史上2人目となった。今シーズンの開幕戦で彼のチームメートのダン・ウェルドンがホームステッド・マイアミ・スピードウェイでの3年連続優勝を達成している。
午後3時半過ぎにポールポジションからスタートしたエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が、序盤はトップをキープした。彼は2位につけるディクソンとの間に充分なマージンを持って走り続けたが、20周目の最終コーナーで単独スピンを犯し、タイヤウオールに激しくクラッシュした。
こうしてカストロネベスに代わって、ディクソンがトップに立つことになったが、このクラッシュはほかの17台のピットタイミングに影響を与えた。レース中盤はヴィットール・メイラ(パンサー・レーシング)、続いてダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)がトップを走り、34周目にはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が先頭に立った。しかし、変則的タイミングでピットストップを行った彼らが決定的なアドバンテージを得る展開とはならず、60周のレースが43周目を迎えたところでディクソンがトップへと返り咲き、アンドレッティらをパスして2位へと浮上して来たサム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー)に6.2591秒の差をつけてチェッカーフラッグを受けた。
松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は、予選11番手からスタート。トップをいくディクソンらとまったく同じピットタイミングを採用する正攻法で走り続け、ダレン・マニング(AJ・フォイト・レーシング)やウェルドンとバトル。最終的に今シーズンの自己ベストとなる8位でフィニッシュした。
なお、前日7日に開催されたIndyProシリーズ第9戦で、武藤英紀(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は予選4番手からスタートし、僅差の2位でフィニッシュ。また、同日開催された第10戦では、抽選で決まった5番手からスタートし、6位でフィニッシュした。
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