スタートで飛び出したのはポールシッターのエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)。しかし、すぐさま予選2番手だったトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)がトップを奪い、レースのイニシアチブを握った。カストロネベスは2回目のピットストップで給油トラブルが発生。29位まで大きく後退を余儀なくされた。
アクシデントなどによるフルコースコーションが重なり、レースはどのタイミングでピットストップを行うかが非常に重要な意味を持つ展開となった。雨というファクターも再びからんできたからだ。99周目にアクシデントが発生して5回目のフルコースコーション。113周終了時点で、雨のためにレース中断を告げる赤旗が提示された。すでにレースディスタンスである200周=500マイルの半分が終了しているため、このままレース成立となっても何ら問題はなかった。しかし、主催者は天候回復の可能性にかけた。インディアナポリス・モーター・スピードウェイを埋め尽くしたファンもレース再開を望んでいた。
彼らの願いは叶い、約3時間という長い中断のあとに87周を残したレースは再開された。ここからの戦いでもカナーンはライバル勢を突き放すだけの速さを保っていた。しかし同時に、いつまた雨によってレースが短縮されるかを常に考えながらのレースを誰もが戦っており、ひとつでも前のポジションを目指し、どのドライバーも激しい走りを見せていた。
155周目、9回目のフルコースコーションが出され、ほぼすべてのドライバーたちがピットイン。しかし、3位につけていたダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)、9位だったスコット・ディクソン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング)らがコース上に残る作戦に出た。雨が降る方に賭けたのだ。そして、運は彼らに味方した。序盤からトップ争いを続けていたカナーンは、157周目のリスタートで急減速したマシンと接触。ピットでのタイヤ交換が必要となり、勝機を逸した。163周目にはマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)とダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)がバックストレッチで接触し、マルコ・アンドレッティが宙を舞うアクシデントとなった。このときに出されたフルコースコーションが解けない165周目、スピードウェイは再び豪雨に見舞われ、155周目からトップの座を保ち続けていたフランキッティがウイナーとなった。レースは予定より34周短い166周をもってチェッカーフラッグとなったのだ。2位はディクソン、3位には最後尾からすさまじい追い上げを見せたカストロネベスのものとなった。
4度目のIndy500挑戦となった松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)は、予選17番手からスタート。ピットストップでセッティング調整を重ね、レースの後半になってからポジションを上げていこうと奮闘していたが、チームのコミュニケーション・ミスでセッティング変更が正しく行われず、スピードダウン。それでも粘り強く走り切り、今年初の完走で16位という結果を得た。
ロジャー安川(ドレイヤー&レインボールド・レーシング)は、日本人ドライバーとしては最多となる5回目のIndy500出場。予選23番手からスタートした彼もまたトラブルによって上位入賞のチャンスを逸した。1回目のピットストップで燃料補給が完全に行われず、もう一度ピットインをしなければならなくなったのだ。ここで失った1周が最後まで響き、安川のフィニッシュは21位となった。
Indy500は昨年に続き、出場33台すべてがHonda Indy V-8を搭載し、また去年と同じようにエンジン・トラブルをいっさい出さなかった。 |