インディアナポリス500マイル・レース(通称Indy500)は今年で91回目の開催を迎える、世界で最も長い歴史を誇る自動車レースである。毎年の5月、ほぼ1カ月にわたる長期間のイベントとして開催される伝統のレースは、今年も5月6日にルーキーの走行で開幕し、8日からエントリー全員による走行が始まった。そして、2度の週末、4日間にわたる予選が行われ、出場33台が決定した。今年エントリーしたマシンは35台。予選アタックを一度も行わないマシンが1台あったため、34台が33個のグリッドを競い合った。
予選1週目の2日間では、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が獲得したポールポジションをはじめとする22個のグリッドが決定した。その後、3日間のプラクティスのあと、予選2週目には残る11個のグリッドをめぐる戦いが繰り広げられた。
ロジャー安川は'05年にフル・シーズンをともに戦ったドレイヤー&レインボールド・レーシングの3台目に乗り、プラクティス2週目に走行をスタートさせた。すぐさまスピード・アップを果たした安川は、予選3日目の最速ドライバーとなって23番グリッドを獲得した。2度の優勝経験を持つアル・アンサーJr.(A.J.フォイト・レーシング)、女性ルーキーのミルカ・デュノー(サマックス・モータースポーツ)もこの日に予選アタックを行い、ほぼ決勝進出間違いなしのスピードをマークした。
結局、予選3日目に埋められたグリッドは32個。最後の1グリッドが予選最終日(=バンプデイ)で争われることとなった。Indy500の予選ルールでは、いったん全33個のグリッドが埋められたあと、最も遅いスピード記録を上回るドライバーが現れると、最も遅いスピード記録保持者がグリッドから弾き出される(=バンプアウト)こととなっている。このため、予選最終日はバンプデイと呼ばれている。
午後2時40分にリッチー・ハーン(ヘメルガーン・レーシング)が予選アタックを行い、33個目のグリッドが埋められた。この約1時間後、予選3日目にアクシデントを起こしたルーキーのフィル・ギブラー(プラヤ・デル・レーシング)がアタック。ジミー・カイト(PDMレーシング)をバンプアウトし、初めての決勝進出をほぼ決定づけた。
ギブラーのがんばりにより、次にグリッドから弾き出される候補(=オン・ザ・バブル)となったのは、アクシデントで負傷したステファン・グレゴワールの代役に起用されたロベルト・モレノ(チャステイン・モータースポーツ)となった。ところが、モレノは予選3日目に記録した自らの予選記録を放棄し、アタックをやり直すことを決めた。このようなチャレンジもIndy500の予選でのみ許されている。
モレノのアタックが始まったのは、予選の残り時間が1時間を切ったところだった。オン・ザ・バブルで居続けると、誰かが予選終了間際まで待ってアタックを行い、そこで速いスピードを記録された場合には逆転のチャンスを失ってしまう。それを懸念したモレノ陣営は、再アタックを敢行することに決めたのだ。
モレノは予選通過間違いなしの平均時速220マイル・オーバーのアタックに成功。オン・ザ・バブルはマーティ・ロス(ロス・レーシング)へと変わった。
この時点まで予選アタックを一度も行っていなかったPJ.ジョーンズ(チーム・リーダー)は、スピードアップを目指してプラクティスを続けるがそれを果たせず、予選に挑むことを断念。バンプアウトされたカイトは、予選時間終了間際になって最後のアタックのためコースイン。しかし、計測1周目ですでに逆転に必要なスピードを出せず、決勝進出はならなかった。この結果、ロスは33番目のスピード記録保持者として決勝へと駒を進めることが決まった。 |