Indy500の予選は、2つの週末の土曜と日曜、合計4日を使って行われる非常にユニークなものとなっている。予選第1週の土曜日はポールデイと呼ばれ、ポールポジションを決定する。ここに2年前から採用されている新フォーマットが加味され、ポールデイに決定するグリッドは11番手までに限られる。全33個のグリッドは3等分され、予選2日目に12番から22番グリッドまでの11グリッドを決定し、残る23〜33番グリッドは予選第2週で競い合うシステムへと変わっているのだ。'05年までの伝統ある予選ルールでは、全33グリッドをいったん決定した後、さらに速いスピードを出す者が現れると33人中で最も遅い予選スピード保持者がグリッドから弾き出される(=バンプアウト)こととなっていたが、新予選フォーマットではポールデイ、予選2日目ともに11個ずつのグリッドしか決定しないため、初日からバンプアウトが見られることとなった。
Indy500の予選には、もうひとつ大きな特徴がある。アタックはほかのIndyCarシリーズ・イベントと同じく1台ずつのタイムトライアル方式で行われるのだが、2周走って速い方のタイムを採用する通常のシステムとは異なり、4周の連続走行でのタイム(=平均時速)を競い合う。全長2.5マイルのコースを4周する間には、風向きや風の強さが変化するのはもちろんのこと、タイヤの内圧も大きく変わるため、ドライビングにもマシンセッティングにも高度なスキルが要求される。ストレートでの最高速が時速230マイルに届く高速走行では、コーナリングスピードもほかのコースとは明確に違う高さとなり、コーナーごと、あるいはラップごとにコクピット内でスタビライザーとウエイト・ジャッカーを操作し、ハンドリングをコントロールするようなことまで行われている。
土曜日の正午に始まった予選は、午後6時までと長時間にわたって続いた。予選開始から約1時間の時点で、ダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)が225.191マイルの最速スピードをマーク。しかし、1台のマシンにつき3回のアタックが許されるIndy500特有のルールにより、夕方の5時50分過ぎに2度目のアタックを行ったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)が平均時速225.817マイルを記録し、フランキッティからポールポジションを奪い取った。
これでもまだ予選は終了しておらず、5時58分、最後の大逆転のチャンスに掛けてトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング)がコースイン。チームメートの奪われたポールポジションを取り返すべくアタックを行った。カナーンは3周目までの平均ではカストロネベスをリードしていたが、4周目でタイヤのグリップが減少、ハンドリングを乱したためにほんの僅かのスピードダウンをせねばならず、平均時速にして0.06マイルの僅差でポールポジションを逃した。インディアナポリス・モーター・スピードウェイで4周を完了するためには約2分40秒が必要とされるが、カストロネベスはカナーンに僅か0.042秒の差で、キャリア2回目のIndy500ポールポジションを獲得した。
11個のグリッドをめぐる戦いである初日予選には、20台が出走。19台がアタックを完了し、5台が2度目のチャレンジを敢行した。第91回Indy500を栄えあるフロントローからスタートするのは、カストロネベス、カナーン、フランキッティの3人に決定。Indy500ではグリッドもほかのコースと違い、1列が3グリッドと規定されているのだ。グリッド2列目の4、5、6位には、予選前日までのプラクティスで最速だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、昨年度ウイナーのサム・ホーニッシュJr.(チーム・ペンスキー)、'05年ウイナーで現シリーズ・ポイントリーダーのダン・ウェルドン(チップ・ガナッシ・レーシング)の3人が並ぶこととなった。
2日目の予選も6時間にわたって開催され、12〜22番グリッドを競うスピードバトルが展開された。2日目の最速スピードとなる223.875マイルを記録したのはスコット・シャープ(レイホール・レターマン・レーシング)で、彼が12番グリッドを手に入れた。シャープのスピードは、ポールデイに9位で予選を終えたマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング)よりも速いものだが、2日目の挑戦者には2日目用のグリッドしか与えられないのがIndy500のルールなのだ。
松浦孝亮(スーパーアグリ・パンサー・レーシング)はポールデイにアタックを行ったがスピードが十分でなくバンプアウトされ、2日目に再挑戦。222.595マイルを記録して17番グリッドから決勝に進出することが決まった。'04年の初出場では予選9位、決勝11位でルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた松浦。過去3回のIndy500出場では常に予選でトップ10に食い込んで来たが、4度目の挑戦となる今年はいくぶん苦戦気味。しかし、決勝レースへとすでに気持ちを素早く切り替えた松浦は、Indy500の自己ベストの11位を上回るフィニッシュを果たすため、来週からのプラクティスでセッティングをいかに進めるか、予選アタック後にはエンジニアたちとのミーティングをスタートさせていた。
2日目に予選アタックを行ったのは16人。1人は4周を完了する前にアタックをストップし、4人がバンプアウトされ、22番グリッドまでが決定した。予選は来週の土曜、日曜とさらに2日行われる。 |