全14戦で争われている'06年IRL IndyCarシリーズも、いよいよ終盤戦を迎えている。第10戦ABCサプライ・AJ・フォイト225は、アメリカ中北部のウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された。ミルウォーキーの夏は、すさまじい雷雨に見舞われることも多いが、今年のレースデーはすばらしい快晴に恵まれた。100年以上の歴史を持つザ・ミルウォーキー・マイルには、3万人を超す熱心なインディカー・ファンが集合。心地よい日差しのもと、午後1時前にレースはスタートした。
コーナーのバンクが9.25度とゆるやかなミルウォーキーは、とても繊細なマシンセッティング能力が要求され、同時に高いドライビングスキルも勝利のためには必要とされる。全員がHonda
Indy V-8搭載、シャシーも全出場者がダラーラを使用している今シーズンの場合、オーバーテイクの難しさも昨年まで以上のものとなっていた。
その難しいレースを制したのは、4番グリッドからスタートしたトニー・カナーン(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)だった。得意のロケットスタートで1周目に2番手へと浮上した彼は、ポールポジションからスタートしたエリオ・カストロネベス(マールボロ・チーム・ペンスキー/ダラーラ)を32周でパスすると、その後はレースのイニシアチブを握り続けた。中盤にはチームメイトのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)とダリオ・フランキッティ(アンドレッティ・グリーン・レーシング/ダラーラ)が彼に代わってトップを走ることもあったが、燃料の搭載量やタイヤの消耗度にかかわらず、カナーンは安定した速さを保ち続けてゴールまで走り切った。
225周のレースが209周を迎えたところで最後のリスタートが切られ、そこからはサム・ホーニッシュJr.(マールボロ・チーム・ペンスキー/ダラーラ)、トーマス・シェクター(ビジョン・レーシング/ダラーラ)、そしてダニカ・パトリック(レイホール・レターマン・レーシング/ダラーラ)が目ざましい走りを見せた。
アンドレッティとフランキッティが燃費をセーブするモードであったのに対し、ホーニッシュJr.は彼らより1回多くピットインをしていたので燃料の心配がなく、そのアドバンテージを生かしてフランキッティ、アンドレッティの順でパスし、2位へとポジションを上げてゴールした。203周目にピットストップを行って、燃料だけではなく新しいタイヤも装着する作戦に出たシェクターとパトリックは、3位と4位にまでポジションアップしてフィニッシュした。
通算3度目、チーム・ペンスキー移籍後は初めてとなるタイトルを狙うホーニッシュJr.は、今回の2位フィニッシュによってポイントスタンディングのトップを保っただけではなく、2位につける'03年チャンピオンのディクソンとの差を、5ポイントから25ポイントへ広げることに成功した。その一方で、初めてのタイトルが欲しいカストロネベスは、アクシデントにより14位でフィニッシュ。ポイントを思うように伸ばせず、トップのホーニッシュJr.とのポイント差は30ポイントに広がった。
ランキング4位のダン・ウェルドン(ターゲット・チップ・ガナッシ・レーシング/ダラーラ)は、10番手スタートから8位でゴール。ポイントスタンディングは変わらずの4位だが、カストロネベスとの差は2ポイントで、ホーニッシュJr.との差は32ポイントとなった。
一昨年は最後列スタートからトップ10入りを果たし、昨年も20番手スタートから9ポジション・アップの11位でゴールした松浦孝亮(スーパーアグリ・フェルナンデス・レーシング/ダラーラ)は、今回も予選用のマシンセッティングでは苦しんだが、15番手スタートから上位フィニッシュを目指していた。しかし、今日の松浦のマシンはコースのコンディションにまったく合っておらず、マシンセッティングを変更するために早めのピットストップを行っても、ほとんど改善されることはなかった。松浦とチームは、85周を走ったところで無念のリタイアを決意した。
ダニカ・パトリック(レイホール・レターマン・レーシング/ダラーラ)は、予選14位と振るわなかったが、ファイナルプラクティスでトップタイムをマーク。決勝用セッティングのよさからレースでもポジションを着々と上げ、ゴール目前のピットストップという作戦も見事に的中し、2戦連続でキャリアベスト・タイの4位ゴールを果たした。
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