100回目の開催となったインディ500。その歴史的なレースで、Hondaは定評のある燃費性能の高さを発揮しました。全長2.5マイルの伝統あるコースで、アメリカ出身のルーキー、アレクサンダー・ロッシ(Andretti Herta Autosport with Curb-Agajanian)は、最後のピットストップからだれよりも多い36周を走り、ゴールラインを横切ったのです。ルーキーによるインディ500の優勝は、2001年のエリオ・カストロネベス以来です。また、この勝利はロッシにとって、インディカー・シリーズでの初勝利となりました。
ロッシと同じタイミングでピットストップを行った彼のチームメート、コロンビア出身のカルロス・ムニョスは、32周にわたって全速力でのトップ争いを展開し、2位でゴールしました。Andretti Autosportは2台のマシンに異なる作戦を採用させ、1-2フィニッシュを達成したのです。
アレクサンダー・ロッシ
アレクサンダー・ロッシ
Hondaのインディ500への挑戦は1994年に始まりました。今年が16回目の挑戦であり、11勝目を挙げました。2014年に自動車メーカーとして史上最多となる10勝目をあげたHondaは、その記録を11へと伸ばすことに成功。その勝利には1-2フィニッシュという花が添えられました。
ロッシは採用した燃費に関する作戦が当たっただけで、運良く勝利をつかんだわけではありません。彼は33台が出場したレースで、平均時速225.288マイルのファステストラップを記録しました。Andretti Autosportは5台をエントリーしていましたが、そのどれもが目覚ましいスピードを備えており、ロッシのチームメートのマルコ・アンドレッティが平均時速224.77マイルを記録。これは、第100回インディ500で2番目に速いラップでした。
レースは200周で争われ、7人のHondaドライバーがリードラップを記録しました。ポールポジションからスタートしたジェームズ・ヒンチクリフ(Schmidt Peterson Motorsports)と、フロントローの外側からスタートしたライアン・ハンターレイ(Andretti Autosport)はスタートからの30周のうち、28周でトップを走りました。ほかにレースをリードしたのは、ムニョス、タウンゼント・ベル(Andretti Autosport)、ブライアン・クロウソン(Dale Coyne Racing)、アレックス・タグリアーニ(A.J. Foyt Racing)でした。
アレクサンダー・ロッシ
アレクサンダー・ロッシ
今大会では、フルコースコーションが6度出されました。佐藤琢磨(A.J. Foyt Racing)が163周目にターン4の壁にヒットし、このタイミングでほぼ全車がピットで給油とタイヤ交換を行ったのですが、そこからゴールまでを全力で走るか、スピードを抑えてでも無給油で走りきるか、作戦が分かれました。ロッシとムニョスは、それぞれ7番手と8番手でリスタートを迎え、ゴールを目の前にしてトップグループが次々と給油のためのピットストップへと向かいました。ロッシは197周目にトップに躍り出て、最後の4周を走りきってインディ500のウイナーとなりました。
予選12番手だった佐藤琢磨は、気温の高いレースコンディションに照準を合わせたセッティングが、思い通りの性能を発揮せず、スタート直後からハンドリングの悪いマシンに悩まされ、一時は22番手までポジションを落としました。しかし、ピットストップを重ねる中でセッティングの変更を重ね、130周を走ったところでトップ10入りするところまでばん回。終盤戦でトップ争いにまで食い込んでいくことが期待されたのですが、給油を行うピットに向おうとしたタイミングでフルコースコーションが出され、ガス欠ギリギリに陥ってのピットストップを行わざるを得ず、13番手まで大きく後退。そこから再度のばん回を狙った走りの中で、乱気流によりコントロールを乱し、残り37周でアクシデントによるリタイアとなりました。
順位 | No. | ドライバー | エンジン | 周回数 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 98 | アレクサンダー・ロッシ | ![]() | 200 | 3:00'02.0872 |
2 | 26 | カルロス・ムニョス | ![]() | 200 | +4.4975 |
3 | 21 | J.ニューガーデン | シボレー | 200 | +4.9304 |
4 | 10 | T.カナーン | シボレー | 200 | +10.4963 |
5 | 42 | C.キンボール | シボレー | 200 | +10.5218 |
6 | 6 | J.R.ヒルデブランド | シボレー | 200 | +11.3459 |
7 | 5 | ジェームズ・ヒンチクリフ | ![]() | 200 | +12.7744 |
8 | 9 | S.ディクソン | シボレー | 200 | +15.1607 |
9 | 11 | S.ブルデー | シボレー | 200 | +21.0613 |
10 | 12 | W.パワー | シボレー | 200 | +21.5171 |
12 | 77 | オリオール・セルビア | ![]() | 200 | +23.8140 |
13 | 27 | マルコ・アンドレッティ | ![]() | 200 | +24.9700 |
14 | 15 | グレアム・レイホール | ![]() | 200 | +28.2494 |
16 | 41 | ジャック・ホークスワース | ![]() | 200 | +32.1748 |
17 | 35 | アレックス・タグリアーニ | ![]() | 200 | +32.1993 |
18 | 63 | ピッパ・マン | ![]() | 199 | +1Lap |
20 | 19 | ギャビー・シャヴェス | ![]() | 199 | +1Lap |
21 | 29 | タウンゼント・ベル | ![]() | 199 | +1Lap |
23 | 88 | ブライアン・クロウソン | ![]() | 198 | +2Laps |
24 | 28 | ライアン・ハンターレイ | ![]() | 198 | +2Laps |
25 | 16 | スペンサー・ピゴット | ![]() | 195 | +5Laps |
26 | 14 | 佐藤琢磨 | ![]() | 163 | +37Laps |
27 | 7 | ミハイル・アレシン | ![]() | 126 | +74Laps |
29 | 18 | コナー・デイリー | ![]() | 115 | +85Laps |
順位 | No. | ドライバー | エンジン | 総合ポイント | |
---|---|---|---|---|---|
- | 1 | 22 | S.パジェノー | シボレー | 292 |
- | 2 | 9 | S.ディクソン | シボレー | 235 |
▲ | 3 | 3 | H.カストロネベス | シボレー | 224 |
▲ | 4 | 21 | J.ニューガーデン | シボレー | 211 |
▲ | 5 | 5 | ジェームズ・ヒンチクリフ | ![]() | 205 |
▲ | 6 | 98 | アレクサンダー・ロッシ | ![]() | 203 |
▲ | 7 | 26 | カルロス・ムニョス | ![]() | 199 |
▼ | 8 | 10 | T.カナーン | シボレー | 192 |
▼ | 9 | 42 | C.キンボール | シボレー | 189 |
▼ | 10 | 2 | J.P.モントーヤ | シボレー | 187 |
▼ | 12 | 15 | グレアム・レイホール | ![]() | 173 |
▼ | 13 | 28 | ライアン・ハンターレイ | ![]() | 162 |
▼ | 14 | 14 | 佐藤琢磨 | ![]() | 134 |
▲ | 16 | 27 | マルコ・アンドレッティ | ![]() | 130 |
▼ | 17 | 7 | ミハイル・アレシン | ![]() | 127 |
▼ | 19 | 18 | コナー・デイリー | ![]() | 108 |
- | 20 | 41 | ジャック・ホークスワース | ![]() | 91 |
▲ | 22 | 77 | オリオール・セルビア | ![]() | 72 |
- | 23 | 29 | タウンゼント・ベル | ![]() | 55 |
▼ | 24 | 16 | スペンサー・ピゴット | ![]() | 50 |
▼ | 25 | 19 | ギャビー・シャヴェス | ![]() | 46 |
▼ | 26 | 19 | ルカ・フィリッピ | ![]() | 45 |
- | 28 | 35 | アレックス・タグリアーニ | ![]() | 35 |
- | 29 | 63 | ピッパ・マン | ![]() | 33 |
- | 32 | 88 | ブライアン・クロウソン | ![]() | 21 |
アレクサンダー・ロッシ(優勝)
「いったいどうやって勝利を手に入れたのか、自分でもまだ十分に理解ができていません。私たちはレース序盤のピットストップで順位を落としたのですが、チームの共同オーナーのブライアン・ハータがすごい作戦を考え出してくれたのです。チームメートのライアン・ハンターレイが、信じられないようなアシストをしてくれもしました。彼が私の前を走って引っ張ってくれたことにより、チームは1-2フィニッシュを達成できたのです。本当にすばらしい勝利となりました。私の人生は、今日を境に大きく変わることでしょう。私はこの1カ月、戦闘力の高いマシンで走り続けられました。それはチームオーナーのマイケル・アンドレッティとブライアン・ハータのおかげです。一時的にほぼ最下位に落ちながら、大胆な作戦を採用し、勝利に結びつけることができたのはとてもうれしいことです。インディ500のウイナーとして飲むミルクは、なによりもおいしいと感じました」
カルロス・ムニョス(2位)
「私たちのマシンは勝つ力を備えていました。レースの前半戦を戦った時点でそれを確信できていました。私は勝負を仕掛けられるポジションを保って周回を重ねていました。エンジンは絶好調で、スピードが確保できていました。そして迎えたレース終盤、私は全力でプッシュしました。どのコーナーでもマシンはスライドしていました。それだけに、2位という結果は非常に残念です。あと半周足りなかったです。実に惜しかった。1-2フィニッシュはチームにとってすばらしい結果で、私もうれしく思います。Hondaにとっても1-2フィニッシュとなりました。私はいつか、このレースで勝ってみせます」
佐藤琢磨(26位)
「大変なレースでした。レース序盤の私たちは、トラフィックでのマシンが非常に乗りづらい状態に陥っていたため、セッティングの大きな変更を行う必要がありました。最初にダウンフォースを増やし、次からはバランスを調整しました。しかし、マシンは一向によくなりませんでした。私はそこで、逆方向のアイディアを試すことをチームに提案し、それをトライしてからはペースを上げることができました。レースはもう終盤に入っていましたが、ついに私たちはスピードを手に入れたのです。チームのクルーたちによるピット作業もすばらしく、ピットでいくつかポジションをかせぐこともできていました。レースの中で、自分たちの競争力が一気にアップしたときもありました。しかし、不運にもフルコースコーションがとても悪いタイミングで出され、順位を大きく落とさねばなりませんでした。中団にポジションを下げて戦う中で、私のマシンはターン4で突然アウト側に流され、壁にヒットしてしまいました。第100回インディ500に出場するチャンスを与えてもらえたことを深く感謝します。本当に特別なレースで、私にとっても特別な体験となりました。いい結果を残せなかったのは本当に残念です」