ジャスティン・ウィルソン選手の逝去について

2015年シーズンの第15戦としてペンシルベニア州のポコノ・レースウェイで開催された500マイル・レースにおいて、終盤の180周目にトップを走行していたマシンが単独でアクシデントを起こし、それによって飛び散ったマシンの破片がジャスティン・ウィルソン選手(Andretti Autosport)のマシンを直撃しました。

ウィルソン選手のマシンはコース内側の壁に正面からぶつかって停止。すぐさま駆けつけたインディカーのセーフティ・クルーたちがコクピットから救出し、ヘリコプターで病院へと搬送され、集中治療を受けていました。飛散したパーツはウィルソン選手のヘルメット部を直撃した模様で、頭部に強い衝撃を受けており、翌月曜日の午後、搬送先のリーハイ・バレー・ヘルス・ネットワーク・シーダー・クレスト病院において逝去されました。

イギリス出身のウィルソン選手は、F1を戦った後にアメリカに活躍の場を移しました。チャンプカーとインディカー・シリーズでは174レースを戦い、通算7勝を挙げているドライバーで、37歳でした。
ジャスティン・ウィルソン選手のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

コメント

アート・セントシアーHPD社長
「ジャスティン・ウィルソンを失った事に対する悲しみをどれほど言葉にしても、我々みんなが共有する心の痛みの大きさを語り尽くすことはできないと感じています。今シーズンの序盤、私たちはインディカー・シリーズで苦戦を強いられていましたが、ジャスティンはHondaと戦いたいという強い意志を何度も見せてくれました。そうしたところに個々の人間の資質は現れるものだと思います。私たちは彼の示してくれた誠実さや情熱に、心から感謝の意を表したいと思います。彼はHondaドライバーとして、サーキットでだけでなく、レースを離れた場でも常に礼儀正しく振る舞い、まさに紳士というにふさわしい人物でした。
彼は私たちの友人であり、仲間です。私たちの心は彼の妻ジュリア、2人の娘たち、ジェーンとジェシカ、両親のキースとリン、弟のステファン、そして世界中に広がる彼の多くの友人たちとともにあります。ご冥福を祈りたいと思います」

ジャスティン・ウィルソン(Justin Wilson)選手のプロフィール

©Marshall Pruett

生年月日：1978年7月31日
出身地：イングランド・シェフィールド

インディカー・シリーズにおける戦績(2008年〜2015年)
出場回数：119戦
ポールポジション：1回
優勝：3回

8才でレーシングカートを始め､1995年〜97年はフォーミュラ・ボクスホールに参戦。98年にはフォーミュラ・パーマー・アウディで9勝してチャンピオンに輝いた。99年にはFIA国際F3000へとステップアップし、01年にチャンピオンシップを制覇した。
2003年にはミナルディからF1グランプリへの参戦を果たし､シーズン終盤にはジャガー・レーシングへと移籍して､アメリカGPで8位に入賞、ポイントを獲得した｡

05年に活躍の舞台をアメリカに移し､チャンプカー・ワールド・シリーズへの参戦を開始。初年度にして2勝を挙げてランキング3位に入る大健闘を見せた｡06年､07年はともに1勝をマークし、ランキング2位に。この頃からチャンプカーと並行してルマン24時間レースやデイトナ24時間レースなどのスポーツカーによる耐久レースにも精力を注ぐようになり、2013年にはデイトナ24時間レースで優勝を飾った。

08年にチャンプカーがインディカーに併合されてアメリカン・トップフォーミュラの統一がなされると、その年のインディカー・シリーズ第16戦デトロイトで優勝。09年には第9戦ワトキンス・グレンでのレースを制した。デトロイトでの優勝は名門ニューマン・ハース・ラニガン・レーシングにとって最後のものとなり、ワトキンス・グレンでの優勝はデイル・コイン・レーシングの記念すべき初優勝だった。

2012年には苛烈なバトルとなったテキサスで勝利。オーバルコースで初めて表彰台の中央に立った。アメリカでは11シーズンを戦い、チャンプカーとインディカー・シリーズをあわせ174レースに出場して7勝。ポールポジションは8回記録した。

191センチの長身であるウィルソンはレーシング・ドライバーとしての優れた才能と、真摯な人柄でパドックでの人気と信頼を集めていた。自転車愛好家の彼は家族とともにアメリカではコロラド州に住み、ロードレース用とマウンテン・バイクの両方を楽しんでいた。享年37歳。