最後のオフシーズンテストとなった先週のバレンシアでも、Honda Racing F1 Teamは相変わらず好調。第3ドライバーのアンソニー・デビッドソンは、コースレコードを更新して見せた。ところが中本ディレクターの口調は、いまひとつ歯切れが悪い。同じコースを走ったマクラーレンが驚異的な速さを披露し、不調を克服しつつあるからだろうか。
―バレンシアテストは、順調だったようですね。
われわれとしては、予定通りプログラムを消化できましたね。
―今回走らせたエンジンは、開幕仕様のものですか?
そうです。でも先週のバルセロナテストで使ったものと、ほとんど変わっていません。耐久信頼性を、さらに確認できたものです。
―ロングランもこなしました。
はい。ベンチテストで、2レース分は大丈夫だとわかっていましたが、それを実走テストでも確認が出来ました。
―空タンクでの一発アタックは、かなり速かったですね。V10マシンのコースレコードを破りました。
そうですね。でも軽い状態のアタックをやったのは、うちだけでしたから、他チームとの比較は出来ませんね。一方、前日キミ・ライコネンが出したトップタイムは、ロングラン中のものなんですが、速いんですよ。うちがコースレコードを破ったことより、マクラーレンの速さの方が驚異です。
―テスト自体は順調だったのに今一つ歯切れが悪いには、その辺ですか。
マクラーレンは相変わらず、エンジンをずっと高回転で回し続けることはできていません。以前よりは少し良くなって、3周ぐらいは高回転を維持できるようですが、それ以降は、落ちてしまいます。それでもタイムは速いんですよ。
―それだけ車体性能が優れていると。
はい。以前は前輪のグレーニング(ささくれ摩耗)が出て、タイムが伸びていなかったんですが、その弱点も克服しましたね。
―そうすると、もしエンジンの問題を解決すると、かなり手強い相手になる?
手強いというか、ルノーの上を行ってしまうかもしれません。
―開幕直前の予想としては、ルノーが頭一つ抜けていて、それをHondaを含む第2集団が追いかけるという図式だと思いましたが。そうならないかもしれない?
その展開は変わらないと思います。シーズン序盤は、その通りでしょう。第2集団の団子状態から、どこが抜け出るかですね。それがマクラーレンはエンジンの耐久性であり、われわれは、エンジンならばさらなる馬力アップです。車体でいえばダウンフォースを増やすとか、何かを見つけていかないといけません。それを見つけたチームが、トップのルノーと渡り合うことになるでしょう。厳しい戦いになることは、間違いありません。
―その中でマクラーレンの潜在能力は、かなり高そうだということですね。
車体に関しては、マクラーレンはルノーと互角か、むしろ上回る性能を持っているかもしれません。エンジンさえ直れば、一気に速くなるでしょう。このまま行けば去年のように、ルノーとマクラーレンの一騎打ちの可能性が高いですね。開発が順調に進めば、第3戦のオーストラリアGPあたりには、ニューバージョンのエンジンを用意できるでしょうから、その辺から一気に来るかもしれません。
―Hondaに関しては、課題だった空力性能はかなり改善されているのでは?
かなり良くなっていると思います。一発タイムもロングランも、ルノーの次ぐらいには位置しています。去年からの伸びシロで言えば、ルノー、マクラーレン以上でしょう。でもいかんせんこの2チームとは、去年の差が大きかったので、彼らにかなり迫っては来たけれど、はたしてどうだろうかと、そんな感じですね。
―とはいえ去年に比べれば、今年は開幕戦への期待度は違いますね。
それは違います。勝つチャンスがないとは、思っていません。少なくとも開幕戦のバーレーンは、直前テストもやっていますから、われわれにアドバンテージはあります。ただ中盤以降は、かなり厳しい争いになると思います。ルノーとマクラーレンが上に来るだろうし、フェラーリにしてもレース展開次第では、上がってくる可能性が充分にあります。マシン自体の不利を補う力は、持っているチームですから。われわれももちろん負けないつもりですが、開幕3戦までに勝てないと、2004年のように「上位は走っているけれど、勝てない」という状況に陥らないとも限りません。もちろん、開幕に向けて、できるだけの準備はしてきました。アドバンテージのあるバーレーンで、ぜひ何とかしたいですね。
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