Round 10イギリスイギリスGP

現場レポート

2018.07.DD(火)

2018 イギリスGP 現場レポート

第10戦イギリスGP 現場レポート

F1史上初の3連戦は、スケジュールとしても、結果としても、タフな戦いとなった。フランスはピエール・ガスリーの母国GP、オーストリアはレッドブルの本拠地であり、チーム代表であるフランツ・トストのホームレース、そしてイギリスもまた特別な意味を持ったグランプリだった。

イギリスGPの舞台であるシルバーストンは、Honda F1の欧州での拠点であるミルトンキーンズからクルマで30分程に位置する。Hondaにとっては、もちろん日本GPがホームレースであるが、ここイギリスGPもホームレースに近い感覚を持っている。この3連戦はすべてが特別なグランプリではあったが、レースにおいて、Red Bull Toro Rosso Hondaは、苦しい展開のまま戦いを終えることとなった。

3連戦の舞台はどれもがパワーサーキットであったが、ラストのシルバーストンは飛び抜けてマシンの速さが要求されるコースだ。「スロットル全開率が高く、PUのパワーが重要となる高速サーキットで、ストレートでの戦闘力を得るためのエネルギーマネジメントなどもあわせて重要となります」とHonda F1 テクニカルディレクターの田辺豊治は語る。ストレートスピードは、PUとともにマシンの空力性能も非常に重要で、チームはアップデートした空力パーツを多く持ち込み、高速コースに対応すべく準備を進めて戦いに臨んだ。

初日の金曜日は、その空力テストに多くの時間を費やした。しかしP2でガスリーのPUに異常が出る。ガスリーはマイレージの対策のため、金曜日は以前のバージョンのPUで走行していたため大きな問題とはならなかったが、想定外のトラブルが2日目にチームを襲った。

P3開始早々に、走行中のハートレー車の左フロント部分が突然壊れ、ハートレーはクラッシュ。原因がすぐに特定できないために、チームはガスリーの走行も見合わせた。幸いハートレーの身体に異常はなかったものの、予選は出走できず。ガスリーはサスペンションをすべて交換して予選に臨み、気迫のこもった走りでQ1突破を果たした。

迎えた決勝レース。ハートレーはモノコックまで交換したため、ピットスタートとなるが、スタート前に異常を感知し、短い時間の中で懸命に修復を試み、ハートレーはスタートこそ切ったものの完全な改善には至らず、レースは早々にリタイアとなった。ガスリーはレース終盤に激しいバトルを展開し、ポジションを上げる。10番手でフィニッシュし、モナコGP以来のポイント獲得にチームは沸いたが、レース後の審議・裁定で、ガスリーにペナルティーが科され、ポイント獲得はならなかった。しかし、予選、決勝でのガスリーの走りは、チームにとって奮起と希望をもたらす、すばらしいものだった。

結果としては、3連戦は0ポイントで終わり、毎戦アクシデントとトラブルが多発した。チームはマシンの修復に追われ、Hondaも連日のPU交換作業に対応。それでも、この過酷なスケジュールをなんとか乗りきった。

「週末を通して、非常にタフなホームレースになりました。特に土曜に起きたハートレー選手のクラッシュのあとは、ガスリー選手のマシンのサスペンション交換、ハートレー選手のマシンのモノコック/PU交換など、限られた時間の中でチーム、Honda双方のメカニックとエンジニアが懸命に作業を行いました。その努力が、レース終盤のガスリー選手の粘り強く、すばらしい走りにつながったのだと思います」と田辺は締め括った。

3連戦が終わったとはいえ、1週間のインターバルをおいてすぐにドイツGP、ハンガリーGPの連戦が待ち構えている。チームは、トラブルの対策とアップデートの評価と調整、そしてさらなるアップデートと絶え間ない作業を続け、Hondaも同様にPUのパフォーマンス向上に突き進む。今は、Red Bull Toro Rosso Hondaへ吹く風向きを変えるべく、全員が一丸となって全力を尽くすしかない。

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