ROUND06
モナコ
モナコ・サーキット
2017.05.24(水)
Hondaは、FIA※フォーミュラ・ワン世界選手権(以下、F1)の第6戦モナコGP(開催地:モンテカルロ、5月26日~29日)に向けて準備を進めています。今大会のサーキット情報や、今週末のレースの見どころなどをレポートします。
※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称
長谷川 祐介 (株)本田技術研究所 主席研究員 F1プロジェクト総責任者
「今週末はMcLaren-Hondaの誰にとっても特別なものになると思います。伝統のモナコGPだと言うことはもちろんですが、それに加えて、インディ500に挑戦するフェルナンドの代わりに、ジェンソン・バトンを再びチームに迎えることになるからです。
モナコGPは言うまでもなく、世界で最も長い歴史を持つ伝統あるレースです。
いつの時代でも素晴らしいレースになりますし、チームにとっても、ドライバーにとっても、ファンにとっても1年の中で最も特別なグランプリだと思います。
2週間前のスペインGPではアップデートを投入し、いいペースでレースを走ることができました。モナコはさらにテクニカルな特徴を持つサーキットですし、我々には大きなチャンスがあると思っています。トラックの幅が狭いために抜きにくく、ミスが許されないドライバーズサーキットですので、スタート位置がいつもよりも更に重要になります。したがって、予選でベストな走りができるように十分にセットアップを進めることがキーになると考えています。ジェンソンは元世界チャンピオンで、モナコでも勝利していますし、ストフェルもGP2時代にモナコで表彰台の中央に立った経験を持っています。我々はライバルから見ても非常に手ごわいドライバー二人を擁していると思いますし、彼らがポイントを獲得できるだけのマシンを用意すべく、入念に準備を続けます」
ジェンソン・バトン
#JB22 MCL32-03
「モナコGPのためにコックピットに戻るのは少し奇妙な気分ですが、エリックから電話をもらった時にはすぐにOKしました。とてもユニークな状況ですけれど、いい機会だと思っています。F1の中でも特にクレイジーで、予測不可能で、エキサイティングなレースでカムバックすることを楽しみにしています。
モナコはとてもユニークなサーキットで、正しいマシンのチューニングと細長いレイアウトに適したセットアップのために、さまざまな作業が必要です。ドライバーにとっては毎回非常にチャレンジングかつエキサイティングで、F1の中でも好きなレースの一つです。
まだ実際にサーキットでMCL32に乗っていませんが、準備は万全です。もちろんモナコのことは知り尽くしていますし、McLarenのシミュレーターで練習してきました。引き続き体作りはしていますし、今まで以上にトレーニングしていると言っても過言ではありません。トライアスロンの練習と大会にも時間を割いてきました。チームと一緒に戦うのが楽しみです。昨シーズンとは反対側のガレージで、全力でフェルナンドのマシンを駆ります」
ストフェル・バンドーン
#SV2 MCL32-04
「スペインGPでの結果は、もちろん私たちが望むものでなくがっかりするものでしたが、ポジティブな点もいくつかありました。マシンに施したアップデートは望んだパフォーマンスを引き出し、エンジニアやデザインチームにとって有益な情報をたくさん入手し、レースでの戦略立案に役立っています。
バルセロナ以降、MTC(McLarenテクノロジー・センター)のシミュレーターでトレーニングを重ね、モナコへ向かう準備は万全です。最近第2のホームサーキットとなりつつあるモナコでF1を戦うのは初めてです。しかしモナコで走ること自体は初めてではありません。GP2で3シーズン戦い、ワールドシリーズ・バイ・ルノーでも走ったので、サーキットのことはよく分かっています。マシンのパフォーマンスがよくても、運悪くトラフィックにつかまると結果に影響してしまうサーキットです。何が起きてもおかしくないし、ファンにとってエキサイティングなレースになるでしょう。
McLaren-Hondaカラーを身にまとったジェンソンとガレージに入るのが楽しみです。私たちは2人ともこのサーキットでレースをするのが楽しみですし、今シーズンベストの成績を収めるチャンスです。もちろんインディアナポリスの状況も気になりますし、フェルナンドにもいい週末を過ごしてもらいたいです」
エリック・ブーリエ McLaren-Honda Racing Director
「モナコGPはF1でも随一のグランプリと言われますし、そう言われるのも全く不思議ではありません。テレビに映し出されるシーンは壮観で、金曜が休日となり前日の木曜にプラクティスが行われることから、モナコは平日から熱気に包まれます。
特にMcLaren-Hondaにとって、今年の5月最後の週末は例年以上に重要です。地球の反対側ではフェルナンドがMcLaren Honda Andrettiから初めてのインディ500に挑戦し、私たちは近年では珍しく2チームを同時にサポートします。そして、私たちはジェンソンと再び仕事ができるのを楽しみにしていますし、彼のカムバックを歓迎します。彼はフェルナンドの代役として順調に仕事をこなし、すでにシミュレーターでのトレーニングを完了しています。
私たちはこの週末いくつかのアップデートをマシンに施し、そこからいいフィードバックを得られることを期待しています。スペインではあのような結果でしたが、私たちは進化を続けている自信がありますし、最近のどのレースよりもいいパフォーマンスをするチャンスがあると思っています。
もちろん、両方のマシンが完走することが最優先ですし、よりよい結果を得るための最善の戦略を取っていきます。モナコは、どんなことも起こり得る場所です」
名称 | モナコ・サーキット |
初開催 | 1950年 |
優勝者 | 2016 ルイス・ハミルトン |
2015 ニコ・ロズベルグ | |
2014 ニコ・ロズベルグ |
モナコGPは、F1世界選手権のハイライトとも言えるレースです。狭く曲がりくねったモナコ公国の市街地コースは息をのむほど美しく、海側にあるヨットハーバーの間を抜け、ピカソ美術館として知られるグリマルディ城の前を通って満員のグランドスタンドへと至る流れは、モナコならではの光景です。
伝統ある同地での勝利は、ドライバー、チームともに大きな栄誉となります。このサーキットで初めてグランプリが行われたのは、1929年。そして、1950年には選手権の開幕戦として開催されました。それから現在に至るまで、コースレイアウトは大きく変更されていません。
全長3.337㎞は、カレンダー中最短で、平均スピードも一番低くなっています。最長のスパ・フランコルシャン(ベルギー)よりも3.664㎞短く、その差は2倍以上。ガードレールに囲まれたコースではわずかなミスも許されず、ドライバーの技術と勇気が試されます。
過去の勝者は名ドライバーばかりで、最多の6勝を挙げているのがアイルトン・セナです。この勝利うち、McLarenとともに1989年から1993年まで5連勝を飾っています。1992年のレースは、ナイジェル・マンセルにリードを奪われたものの、78周中71周目にマンセルがパンクによってピットイン。セナはラスト5周で猛烈なプレッシャーをかけ、わずか0.215秒差で勝利をつかみ取りました。これは、現在においてもモナコGPにおける最小のタイム差です。コンストラクターとしての最多勝はMcLarenの15勝で、直近では2008年に優勝しています。
また、1982年は、終盤に降った雨が大混乱を招き、史上稀にみるサバイバルレースとなりました。勝利の可能性があった5人のドライバーがクラッシュや燃料切れによって次々と脱落。最終的にブラバムのリカルド・パトレーゼが優勝。2位は約1周差をつけながら燃料切れでストップしたディディエ・ピローニでした。
意外な事実ですが、1951年から1954年の4年間は、モナコGPの開催がありませんでした。
全長 | 3.337㎞ ※カレンダー中最短。最長はスパ・フランコルシャン |
---|---|
2016ポールポジション | ダニエル・リカルド 1分13秒622 |
2016ファステストラップ | ルイス・ハミルトン 1分17秒939(71周目) |
ラップレコード | 1分14秒439(ミハエル・シューマッハ、2004年) |
エンジニアリング | タイトでバンピーなコースであるだけでなく、公道特有のかまぼこ型路面(路面の水はけをよくするために道路の中央が盛り上がっている)とほとんどないに等しいランオフエリアなど、ほかと大きく異なるモナコ。そのため、サスペンションを柔らかくせざるを得ないほか、ターン6のフェアモント・ヘアピン(旧ロウズ・ヘアピン、F1カレンダー中で一番タイトなコーナー)での回転半径を小さくするためにモナコのみの仕様にしたマシンを持ち込む場合もある。 |
ドライビング | ターン15~16のプールサイド・シケインでは、縁石を利用することによってタイムアップが図れる |
マシンセットアップ | ダウンフォースを最大化し、サスペンションを柔らかくする。マシンのフロントエンド(コーナー入口でのグリップ力)が強ければドライバーは自信を持って攻められるが、出口でのトラクションも重要。 |
グリップレベル | 低い。市街地コースなので、特にレースウイーク前半は弱いが、ライン上にラバーが乗るとグリップが高まり、タイムが向上していく。 |
タイヤ | ウルトラソフト(紫)、スーパーソフト(赤)、ソフト(黄) ※この組み合わせは今季3回目 |
ターン1までの距離 | 210m(カレンダー中最短) |
最長ストレート | 510m ※カレンダー中最長は中国の1170m |
トップスピード | 時速295㎞(ターン10への進入時) ※カレンダー中最速はモンツァの時速350㎞ |
スロットル全開率 | 50% ※カレンダー中最大はモンツァの75% |
ブレーキパッド | ミディアム。ブレーキングポイントは13カ所 |
燃費 | 1周あたり1.5㎏を消費。カレンダー中最も低い |
ERSの影響 | 中程度 |
ギアチェンジ | 48回/1ラップ、3744回/レース |
周回数 | 78ラップ |
---|---|
スタート時間 | 現地時間14時(日本時間21時) |
グリッド | ポールポジションはコース右側だが、レーシングラインは左側なので、2番グリッドはじめ偶数側のほうがグリップは高い。しかし、ターン1までが短く、ポールシッターは左コーナーのターン2の「サン・デボーテ」でイン側を狙うので、偶数列が大きく有利にはならない。 |
DRS | ゾーンは1つのみ。ターン1へ向かうピット前のストレート区間。 |
ピットストップ | 過去2年間はピットストップが勝敗を左右した。2015年は、終盤にセーフティカーが導入された際にトップを走っていたルイス・ハミルトンが予定外のタイヤ交換を行ったが、それによって3位に転落してしまい、物議を醸した。また、2016年はダニエル・リカルドのストップ時間が長引き、ルイス・ハミルトンに勝利を奪われた。今季導入されたタイヤは耐久性が高まっており、ドライコンディションであれば、レースの半分を過ぎたところでの1ストップ作戦が可能と見られている。 |
ピットレーン | 301m。1回のストップでのタイムロスは約22秒。 |
セーフティカー | 出動率は80%と高い。ランオフエリアがほとんどないコースの特性上、わずかなミスでバリアへヒットしてしまう。その際、コース上のデブリを取り除くために、セーフティカー、もしくはバーチャルセーフティカー(VSC)が導入される。VSCは2015年のモナコGPで初めて使用された。 |
注目ポイント | ターン3。時速155kmで抜けるブラインドの左コーナーで、フランスの作曲家の名前にちなんで「マスネ (Massenet)」と呼ばれている。上り坂の頂上から始まるコーナーで、アウト寄りに膨らんだコーナリングになりやすい場所だが、ラインを外すと外側のバリアにクラッシュしてしまう。 |
見どころ | 狭く曲がりくねったコースにより、レース中オーバーテイクの機会はほとんどないにもかかわらず、ドライバーたちは週末の間ずっと限界を試される。予選トップ3以外からの勝者は1996年のオリビエ・パニス(14番グリッド)以来出ておらず、予選順位が大きく結果を左右する。 |