5年目のシーズンがスタート
開幕に向けて行われたセパン・テストレポート
イデミツ・アジア・タレント・カップも今年で5年目のシーズンを迎えた
すでに世界グランプリライダーを5名輩出しており
アジアから世界へとつながるルートが確立されている
シーズン開幕前のセパン・テストをレポートする
今年で開催5年目のシーズンを迎えたIATC(イデミツ・アジア・タレント・カップ)。今シーズンの開幕戦はMotoGP開幕戦のカタールラウンドに併催され、開幕に向けて2月19、20日の2日間、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで、IATCのオフィシャル・テストが行われた。
テストには7カ国から22名の若手ライダーたちが集結。2日間ともに天候に恵まれ、最高気温37℃、路面温度52℃まで上昇した厳しいコンディションの中、各ライダーはNSF250Rで徹底的に走り込みを行った。
2日間のテストでトップタイムを記録したのは、昨年のIATCランキング2位の埜口遥希。2年目の埜口は昨年7月にセパンで開催された、第4戦マレーシア大会の公式予選で記録されたポールポジションタイムの2分16秒674に迫る2分16秒941のトップタイムをマークして、開幕に向けて順調なスタートを切った。昨年はタイトル争いに加わったが、僅差でタイトルを逃しているだけに、2年目の今年はチャンピオン獲得が最大の目標となる。
今年から新規参戦するインドネシア人ライダーのマリオ・アジが0.757秒差の2分17秒698で2番手に続き、同じく今年から参戦する西村硝が0.782秒差の2分17秒723を記録して3番手に続いた。
テストに参加した日本人ライダーは、埜口を除いて全員がIATC初参戦。そのほかの日本人ライダーでは、松山拓磨が2分18秒962で9番手、千田俊樹が2分19秒032で10番手、山田尚樹が2分20秒377で16番手に続いたが、松山は2日目に他車と接触して転倒、左大たい骨を骨折し、開幕戦を欠場することになった。
開幕戦カタールはロサイル・インターナショナル・サーキットで、3月17日にレース1、18日にレース2の2レースで争われた。
今年も接戦のシーズンとなることは間違いないイデミツ・アジア・タレント・カップ。2018年はいったいどんな戦いが展開されるのか、注目が集まる。
GOサインと共にいよいよ2018年シーズンがスタートする
オフィシャル・テストでトップタイムを記録したゼッケン9番の埜口遥希
今年もアルベルト・プーチ氏指導のもと、ライダーたちは経験を積む
ここから世界へとつながる道がある。そのチャンスをつかむのは…
順位 | No. | ライダー | 国 | タイム/差 |
---|---|---|---|---|
1 | 9 | 埜口遥希 | 日本 | 2'16.941 |
2 | 7 | マリオ・アジ | インドネシア | 2'17.698 |
3 | 3 | 西村硝 | 日本 | 2'17.723 |
4 | 5 | タットチャコーン・ブアラシ | タイ | 2'18.568 |
5 | 21 | ダニエル・シャリル | マレーシア | 2'18.717 |
6 | 19 | ビル・ヴァン・エールデ | オーストラリア | 2'18.812 |
7 | 17 | ニティポン・セインサワン | タイ | 2'18.824 |
8 | 23 | コップチャイ・セイリゥ | タイ | 2'18.921 |
9 | 11 | 松山拓磨 | 日本 | 2'18.962 |
10 | 10 | 千田俊樹 | 日本 | 2'19.032 |
11 | 4 | アフリザ・ムナンダル | インドネシア | 2'19.118 |
12 | 22 | アグン・ファクルール | インドネシア | 2'19.173 |
13 | 12 | セナ・アギアス | オーストラリア | 2'19.447 |
14 | 18 | トロイ・アルバート | フィリピン | 2'20.081 |
15 | 13 | ラッキー・ヘンドリアンシャー | インドネシア | 2'20.111 |
16 | 14 | 山田尚樹 | 日本 | 2'20.377 |
17 | 24 | ダニエル・エル・ファヒーム | マレーシア | 2'20.771 |
18 | 20 | イブラヒム・パウィ | マレーシア | 2'20.876 |
19 | 15 | ベンジャミン・ベイカー | オーストラリア | 2'22.250 |
20 | 2 | ハリス・ハズィーク | マレーシア | 2'22.944 |
21 | 16 | アデナンタ・プトラ | インドネシア | 2'26.405 |
22 | 6 | ユセス・アル・ダルウィッシュ | カタール | 2'30.961 |
今シーズンの世界グランプリMoto3クラスには5名のアジア・タレント・カップ出身ライダーがレギュラー参戦する。
アジア・タレント・カップが始まって4シーズンを終えたが、各ライダーとも、タレントカップを卒業したあとは、Moto3ジュニア世界選手権、MotoGPルーキーズ・カップで優秀な成績を残し、世界グランプリ参戦のチャンスをつかんだ。『Road to MotoGP』のスローガンのもとで始まったタレントカップだが、アジアで撒かれた種は、ヨーロッパで揉まれて育ち、世界グランプリで花を咲かせようとしている。
グランプリ参戦3年目となるアダム・ノロディンは、マレーシア出身の19歳。アジア・タレント・カップ1期生で2014年にランキング7位、15年にランキング8位を獲得。同年にはMoto3ジュニア世界選手権にも参戦し、16年より世界グランプリへのフル参戦を開始した。1年目はランキング28位。2年目の昨年は18戦中8戦で入賞し、ランキング17位と躍進したマレーシア期待のライダーだ。
ノロディンのチームメートである佐々木歩夢は、神奈川県横須賀市出身の17歳。アジア・タレント・カップ1期生で14年にランキング4位、15年にチャンピオンを獲得。16年にはMotoGPルーキーズ・カップでチャンピオンとなり、Moto3ジュニア世界選手権でもランキング6位を獲得し、17年から世界グランプリ参戦のチャンスをつかんだ。1年目は18戦中8戦で入賞し、ランキング20位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。2年目は大きく飛躍することが期待されている。
鳥羽海渡は福岡県福岡市出身の17歳。アジア・タレント・カップ初代チャンピオンで、15年と16年はMoto3ジュニア世界選手権、MotoGPルーキーズ・カップに参戦し、両レースで優勝を経験している。17年より世界グランプリにフル参戦、1年目は10位をベストリザルトにランキング30位。2年目の今年は巻き返しを図る。
真崎一輝は福岡県福岡市出身の17歳。タレントカップには2期生として15年から2年間参戦。16年よりMoto3ジュニア世界選手権にも参戦開始。17年はMotoGPルーキーズ・カップでタイトルを獲得し、ワイルドカード参戦したバレンシアGPで10位入賞。今シーズンから世界グランプリのMoto3クラスにレギュラー参戦する。
ナカリン・アティラプワパはタイ出身の22歳。タレントカップ1期生で、16年のMoto3ジュニア世界選手権を経て、17年より世界グランプリMoto3クラスにレギュラー参戦している。今年初開催されるタイGPに向けても、タイ人ライダーとして期待を一身に背負うライダーだ。
Moto3クラス参戦3年目となるマレーシア人ライダーのアダム・ノロディン。2017年はATC卒業生トップとなるランキング17位を獲得した
Moto3クラス参戦3年目となるマレーシア人ライダーのアダム・ノロディン。2017年はIATC卒業生トップとなるランキング17位を獲得した
Moto3クラス2年目の佐々木歩夢は2017年ランキング20位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。今年は飛躍が期待される
鳥羽海渡もMoto3クラス2年目。1年目の2017年は苦戦しランキング30位に留まったが、今年は巻き返しのシーズンとなる
2017年MotoGPルーキーズ・カップチャンピオンの真崎一輝は、急きょMoto3レギュラー参戦が決定。1年目の活躍に期待がかかる
タイ人ライダーのナカリン・アティラプワパはMoto3クラス2年目。2017年はランキング25位を得た。今年初開催となったタイGPでは、母国でのレースに臨む
世界グランプリへの登竜門、Moto3ジュニア世界選手権とMotoGPルーキーズ・カップにもアジア・タレント・カップの卒業生が参戦。Moto3ジュニア世界選手権には、アジア・タレント・チームから小椋藍と國井勇輝が参戦。2016年タレントカップチャンピオンのタイ人ライダー、ソムキャット・チャントラも17年に続いて継続参戦する。また、17年のタレントカップチャンピオンのデェニス・オンジュとランキング3位のカン・オンジュのオンジュ兄弟の参戦も決定。16年の佐々木、17年の真崎と2年連続でアジア・タレント・カップ出身ライダーがチャンピオンを獲得しているMotoGPルーキーズ・カップには、山中琉星とオンジュ兄弟が継続参戦。國井とゲリー・サリムが初参戦する。アジア・タレント・カップからは、数多くの優秀なライダーが次のステップに進んでいる。次のグランプリライダー候補はここにいる。
2017年はMoto3ジュニア世界選手権で1勝を記録した小椋藍。今年はチャンピオン争いに加わることが期待されている
2017年はMoto3ジュニア世界選手権で1勝を記録した小椋藍。今年はチャンピオン争いに加わることが期待されている
2017年はMoto3ジュニアとIATCに参戦するも、ケガに苦しんだ國井勇輝。今年はMoto3ジュニア、ルーキーズ・カップでの活躍に期待がかかる
IATCを卒業し、2年目のルーキーズ・カップ参戦となる山中琉星。昨年は3位に2回入賞しており、今年はタイトル争いが期待されている
2017年IATCチャンピオンのデェニス・オンジュ。昨年に続いてルーキーズ・カップと、新規参戦となるMoto3ジュニアに参戦する