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Honda 純正アクセサリー

開発のこだわり

開発のこだわり

株式会社 ホンダアクセス
川村朋貴 開発部 AD1ブロック 研究員

“20年目のMMC”をグランドコンセプトに開発された、20周年記念アイテム。
                 開発チームは、どのような想いでこのプロジェクトに関わり、アイテムを通じて、何をオーナーの皆様にお届けしたかったのか。
                 開発責任者に話しを聞いた。 “20年目のMMC”をグランドコンセプトに開発された、20周年記念アイテム。
                 開発チームは、どのような想いでこのプロジェクトに関わり、アイテムを通じて、何をオーナーの皆様にお届けしたかったのか。
                 開発責任者に話しを聞いた。

開発の背景

はじまりは、個人の想い。はじまりは、個人の想い。

2013年のことです。東京オートサロンに出したS2000のショーカーがあって、
会社としてもS2000の記念イヤーに向けて動き出すのかなぁと思っていたんです。
NSXやビートも20周年のプロジェクトがあったので。ところが、
話がパタリとなくなってしまった。私自身、S2000のオーナーでもあるので、
これはもう、自分でやるしかないと。
そこで役員にプロジェクトを立ち上げたいと直談判しに行ったんです。
立ち上げることはOKをもらったのですが、
それと同時に、このプロジェクトがどれだけオーナーの
皆さまの気持ちに沿えているのか、社内に示す必要が出てきました。

オーナーの声が、プロジェクトを動かした。オーナーの声が、プロジェクトを動かした。

そこで異例のことなんですけど、
プロジェクトが正式にスタートする前、
2019年4月にオーナーズクラブのイベントがあって、
その場にデザインを持っていったんです。
それをオーナーの皆さまに見せて
20周年でこういうことをやりたい。
これを見ていいと思ったら賛同して欲しい。
これはオーナーの皆さまと一緒に
作り上げるプロジェクトなんです、
とプレゼンしたんです。
結果、皆さまから賛同の声をいただき、
イベントでの反響を社内報告した後に
プロジェクトが本格的にスタートすることになりました。

提案したデザイン画

●提案したデザイン画

オーナーからのメッセージ

●オーナーからのメッセージ

イベント風景

●イベント風景

グランドコンセプト

オーナーの気持ちを探り、生まれたコンセプト。オーナーの気持ちを探り、生まれたコンセプト。

プロジェクトがスタートしてまず最初に考えたのが、オーナーの気持ちです。
何を大切にして、何を求めているのか。そこでチームで、ツーリングをしながら
山籠りに出かけました。昼間はオープンにしてワインディングを走り、
夜はミーティングをして、オーナーの気持ちを探りながら、まずはコンセプトを決めようと。
そこで出たのが、S2000のオーナーはフルモデルチェンジは望んではいないという考え。
なぜなら、自分のS2000が一番だから。できれば、愛車をアップデートしながら
永遠に乗り続けたいのではと。このような議論からマイナーモデルチェンジという
キーワードが出て、プロジェクトのグランドコンセプトである
「20年目のMMC」ができたんです。

夢の30アイテムから、8アイテムをセレクト。夢の30アイテムから、8アイテムをセレクト。

コンセプトが固まってからは、チームメンバーそれぞれが思い描く
夢のラインアップを出し合いました。まぁ、みんな出るわ、出るわという感じで、
30を超えるラインアップができ上がりました。でも、現実的にすべてを
開発することはできません。そこでコンセプトを指針に収束させていきました。
MMCというからにはフェイスリフトは、やらなければならない。
もちろん動的性能もテコ入れしなくてはならない。こんな感じで大物のバンパーと
サスペンションが決まり、後は20年分の進化ということで、当時なかった
フットライトを入れたり、オーナーに響く20周年の記念となるもの、
困りごとや愛車のリフレッシュに対応するアイテムなど、
最終的に8アイテムをセレクトしました。

動的コンセプト

めざしたのは、美しく・しなやかに曲がること。めざしたのは、美しく・しなやかに曲がること。

S2000のオーナーといえば、昔はバリバリにチューニングして、サーキットを
ガンガン走って、一般道は我慢という方が少なくなかったと思うんです。
でも、20年経った今は変わってきているはず。その現状を踏まえ、
動的性能をどのようにテコ入れするべきか議論を重ねました。
その結果生まれた動的コンセプトが、「ワインディングマスター」です。
S2000の醍醐味は何といってもコーナリング。
コーナーに進入してから走り抜けるまで、人車一体感を感じながら、
しなやかに気持ちよく曲がるコーナリング性能を究めながらも、
街乗りでの快適性も犠牲にしないクルマをめざしました。
それは、刀を抜き、切り、収める一連の動作に流れる美しさと余裕を感じさせる
剣の達人のように、S2000のコーナリング性能を達人の域まで
到達させるチャレンジでした。

コーナリング概念図

●コーナリング概念図

フロントバンパーについて

デザインと性能を、高次元で両立するために。デザインと性能を、高次元で両立するために。

今回のプロジェクトで、「20年目のMMC」を最も具現化しているアイテムが、
フェイスリフトと動的性能の両方に関わるフロントエアロバンパーです。
それだけに開発もひと筋縄ではいきません。デザインと性能を高次元で
両立させなければならないからです。そこで今回は、初期のデザインからFRP
(繊維強化プラスチック)で試作を作り、空力処理をして、テストコースを
走り込みました。性能を上げると、見た目が悪くなる。見た目を良くすると、
性能が落ちる。走り込んで導き出した空力に効く造形を採り入れて、
さらにCG上で何回もデザインを修正し、また走る。そんな作業を積み重ね、
エアロ研究部門とデザイン部門が一体となって、デザインと性能の両立を突き詰めていきました。

フロントエアロバンパー

●フロントエアロバンパー

20年分の実効空力の進化を、随所に注ぎ込む。20年分の実効空力の進化を、随所に注ぎ込む。

デザインを守りながら、めざすべき性能を達成できたのは、
今まで私たちが取り組んできた「実効空力」のノウハウが大いに役立っています。
例えばフロントエアロバンパーを付けると、ノーマルより全長が約24mm
長くなります。フロントノーズを伸ばすことで、バンパーの先端から
両端に向かう曲線をスムーズにすることができ、デザインの自由度も増えるため
フロントバンパーサイドにも空力に効く形状を採り入れることができました。
具体的には、ステアリングを30°切ったときに、前方から見て、
バンパーからはみ出るタイヤをカバーするラウンド形状です。
さらにその形状の上下の高さ、アンダー部の形状も工夫し、
ホイール周辺の空気を整流することで、ステアフィールの向上を狙いました。

また、最新のModulo Xの開発で生まれた造形も採り入れています。
それが、フロントエアロバンパーの下面の中心部に設けたBOX形状です。
これは車両下面の空気の流れを整え、車両の後方まで導くことで、
前後のリフトバランスの改善を目的としています。
さらに、新しい研究の成果としてフロントエアロバンパー下部の
ホイールハウス前には、複数の細かなスリット(切れ込み)を入れています。
これを私たちはギザ研(ギザギザ研究)と呼んでいますが、
このスリットによって、ホイールハウス周辺の空気を清流することで、
空力性能のさらなる向上を狙っています。

空力向上達成手法

●空力向上達成手法

下面のBOX形状

●下面のBOX形状

ギザ研

●ギザ研

粘りの、+5mm。粘りの、+5mm。

2020年1月の東京オートサロンで20周年記念アイテム装着モデルを展示しましたが、
実はこのモデルのバンパーに比べて、販売する商品はバンパーの左右の端、
バンパーサイドの部分が厚くなっています。
先に紹介した通り、バンパーサイドのラウンド形状が
ステア初期の応答性の良し悪しに関わるのですが、
バンパーサイドに向かう途中の形状もまた非常に重要になります。
オートサロン用でデザインとしてはほぼ完成でしたが、
金型を作ると修正が難しくなるので、最後の最後に、もう一度検証しよう
ということになり、バンパーサイドに被せるパーツを
厚さ違いで何種類か、3Dプリンターで作って走ったんです。
そうしたら5mm盛ると旋回時のステアリングフィールが全然違う。
それで、皆んなで、これだねと。最終的に、5mm厚くしました。

厚盛りしたバンパーサイド

●厚盛りしたバンパーサイド

スポーツサスペンションについて

タイヤの進化に合わせて、チューニング。タイヤの進化に合わせて、チューニング。

スポーツサスペンションは、好評を得ていた従来品がベースです。
それに対して新しいサスペンションも、「これはこれで良いね」と
言われなければ意味がありません。そこで、「ワインディングマスター」という
動的コンセプトを念頭に置きつつ、高性能化しているタイヤの進化に
フォーカスしてサスペンションのチューニングを考えました。
具体的には、バネレートと減衰力を変えたものを前後で数パターン用意して、
色々な組み合わせで走り込みを繰り返しました。そうする中で、突き上げ感が少なく、
フラットライドな快適な乗り心地とコーナリング時の素直な回頭性、
旋回トレース性に優れたセッティングに辿り着きました。
Moduloが大切にしてきた意のままのコントロール性、4輪で舵を切る感覚を継承しつつも、
従来のサスペンションが「限界がわかりやすい」のに対して、
今回は「とにかく曲がるのが楽しい」というのが特徴です。
従来品との違いもしっかりと出せて、操る楽しさもある。
そんなサスペンションができたと思っています。

スポーツサスペンション

●スポーツサスペンション

エンディング

ホンダアクセスって、長くクルマを大事に乗ってくれているお客様も大切にしているんです。ホンダアクセスって、長くクルマを大事に乗ってくれているお客様も大切にしているんです。

今回のプロジェクトは、時代の進化で叶えられたこともありますが、
時代の変化の前に、立ちすくむ場面も少なからずありました。
例えば、復刻品のトランクスポイラーやリアストレーキですが、
すぐにできるわけではないんですよね。すでに発売後10年も経っていて、
協力会社さんに当時の型が残っているかわからない。
残っていてもきちんと保管されているかもわからない。
そんな手探りの状態からのスタートを余儀なくされました。
サスペンションの場合、型はあっても当時と同じ赤白で色が塗れないと言われたんです。

協力会社さんの方も、10年で環境や色々なことが変わってたりして。
そうなると黒いサスペンションを出すしかないか…と判断をせざるを得ない状況だったのですが、
オーナーの方から「やっぱりModuloのサスペンションといえば赤白だよね」という声を聞くと
チームのメンバーも社内の各領域の担当者も、やはり赤白にしたいって熱くなるじゃないですか。
それに私たちは、長くクルマを大事に乗ってくれている
お客さまも大切にしたいという想いがあります。
そこで協力会社さんと色々と話をさせていただき、尽力いただいたことで、
ようやく当時と同じ赤白の塗装が実現したという経緯がありました。
こうして振り返ると、最初にオーナーズクラブのイベントでオーナーの皆さまに
賛同をいただいて、開発や生産の段階ではいろんな協力会社さんの理解があって、
ようやくでき上がったと思うんです。私たち開発者だけではない、
まさにS2000を愛する、みんなの想いでカタチにしたプロジェクトです。