ハグロトンボ

学 名
Calopteryx atrata
分 類
トンボ目カワトンボ科
アオハダトンボ属
似たような種類
カワトンボの仲間は似たような形態をしているが、本種は翅(はね)が黒いことで見分けがつく。
見つかる場所は?
おもに平地から低山地のヨシなどの挺水植物(ていすいしょくぶつ)や、エビモ、バイカモなどの沈水植物(ちんすいしょくぶつ)などが茂る、ゆるやかな流れの川に生息する。翅が黒いのが特徴で、斑紋はない。オスは体色が全体的に黒く緑色の金属光沢があるのに対し、メスは黒褐色である。ほかのトンボのように素早く飛翔したりホバリングしたりせず、チョウのようにひらひらと舞うように羽ばたく。その際「パタタタ……」と翅が小さな音を立てる。
分布
本州、四国、九州、屋久島。
大きさ
成虫の体長は57~67mm、後翅長(こうしちょう)35~44mm。
見られる時期
成虫は5~10月まで見られ、とくに7、8月に多い。
生活史
交尾後、メスは水面近くの水中植物に産卵する。幼虫は1年で成長し、翌年成虫になると推測されている。6、7月に羽化する。羽化後の若い個体は薄暗いところを好み、水域から離れて林の中で生活する。成熟すると再び水域に戻り、明るい水辺の石や植物などに止まりナワバリをつくる。
エサ
小さな昆虫などを捕まえて食べる。
特徴
本種の生息は、 水生植物(特に沈水植物)の茂る安定したゆるやかな流れと 、薄暗い林が隣接した環境の存在を示す。かつては普通に見られたが、 生息環境の減少により、 個体数が減っている。東京では絶滅危惧I類、青森では絶滅危惧II類に指定されている。
  • ハグロトンボのヤゴ

    ハグロトンボのヤゴ

監修者

大庭 伸也(おおば しんや)

大庭 伸也(おおば しんや)

2007年岡山大学大学院自然科学研究科博士課程修了、博士(学術)現在の所属は、長崎大学教育学部准教授。水辺環境に棲む水生昆虫類を対象に、生態学的な視点から食性、繁殖行動、生物種間の相互作用について研究しています。平成22年度日本環境動物昆虫学会奨励賞受賞

監修:大庭伸也
写真提供:稲谷吉則、岡田賢祐、加賀田秀樹、川野敬介、後藤直人、
世古智一、中西康介、橋本洸哉、政所名積、渡部 宏(50音順)