OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2016.10.28
名匠一族の新たなる挑戦 8

強度を保つために、
取り付けが終わった縦通材と、起工式

2016年10月22日、22本の縦通材がフレームに取り付けられ、
サノ31ランナバウト「RIGBY」の船体の全貌が見えてきた。
2016年10月22日、船の骨格が完成。この写真を説明すると、前回も説明したとおり、作業工程上、船底が上になっている。そして右端が船首(舳・みよし=ステム)。その舳から船尾に向かって延びるのがキールで、その下に何本もの構成材が組み込まれているが、これが縦通材だ。キール下に7本の縦通材があり、その下がチャイン。さらにチャインの下に4本の縦通材があり、一番下で美しい曲線を描くのがシアーラインである。
10月22日、縦通材の取り付けが終わり、起工式が行われた。左から佐野龍太郎社長、佐野龍也氏、佐野稔氏。
ひっくり返されたまま建造が進む「RIGBY」の船底に上がった龍也氏。まず船首を御神塩で清め、米を供えて御神酒で清める。降りる時は登ったのと反対側の舷側に降りるのがしきたり。つまり右舷から上がったら左舷から降りるということだ。このあと船体中央部と船尾も、同様のお清めをする。これが佐野造船所の長い社歴の中で、守り続けられてきた起工式の作法だ。
2015年の12月、佐野龍也氏の手によって原図が描かれることで始まった31フィート・ランナバウト「RIGBY」の建造は、およそ10カ月の作業工程を経て、10月22日に起工式を迎えた。 工程的には、舳(みよし=ステム)、キールの取り付けのあと、シアーラインとチャインが取り付けられ、さらに片舷11本、両舷で22本の縦通材がフレームに固定されたところだ。この後、2層で構成される外板の張り付けが行われていくのだが、その作業を前に安全と成功を祈念して起工式が執り行われた。

ここまでの作業を振り返って、佐野龍也氏が言った。
「今回、自分の船をはじめて造ることになって、原図の段階で多少の修正があったりして、思い描いた通りの船ができるか不安でした。でも、ようやく船体の全貌が見えてきたので、ひと安心しています」生みの苦しみの中で、造り上げる喜びを再認識している。

そして龍也氏の師匠である佐野龍太郎社長は、「彼は(龍也氏は)担当者としてひとりで船を造り上げるということは、はじめてですからね。そこは違うぞ、という指摘は何度かしてきました。でも、そういう失敗があってこそ成長していくものなんです。今回、自分自身の船を造って、良い経験をしていると思いますよ」と期待を寄せる。また龍也氏の叔父の佐野稔氏も、「わたしが始めて船を造ったのは20歳のころですけど、その頃と比べて彼は上手に作っていますよ。経験と実績がありますからね。楽しみです」と、張り巡らされた縦通材を眺めながら語った。
取材協力:(有)佐野造船所
文・写真:大野晴一郎
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