OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2016.05.27
名匠一族の新たなる挑戦 6

ホンジュラス・マホガニーの
舳(みよし=ステム)にチークのキール

RIGBYの骨格となるフレーム組み立ては終了。
さらに26尺のチーク材を使って、キールを製材。
佐野造船所の桟橋に、木造の美艇が3艇並んでいた。
いずれも佐野造船所が建造した船だ。
1艇は、前回の船人紀行の大横川お花見クルーズ編に使われたサノ24ランナバウト。そして新艇のように磨き上げられた船齢32年の22フィートのスループ。さらにクルージング艇として人気が高い全長11mドーバーの3艇だ。24ランナバウトはマホガニー艇だが、スループとドーバーはチーク艇だ。
この3艇を見てあらためて感じたのは、佐野造船所が造り出す木造艇は長く乗れるということだ。
22フィートのスループが、その象徴である。磨くことによって新艇のような輝きを取り戻すのだから凄い。もちろん長く乗りこむことによって醸し出される渋み、つまり潮っ気は残される。
佐野造船所が造り出す船の一部が桟橋に揃った。
左上:サノ24ランナバウト。
左手前:22フィートスループ。右:全長11mのチーク艇、ドーバー。
手前に見える22フィートスループの船齢は30年を超す。メンテナンスが施され、新艇のような美しさだ。永く、美しく乗れることこそが佐野造船所が造る木造船の魅力といえる。
今年4月、佐野造船所の桟橋にHondaのBF船外機搭載艇が並んだ。左から和船+BF115、シーバスハンター+BF225、24ランナバウト+BF225、ボストンホエラー・ガーディアン+BF150。さらにメンテナンスのために上架中の他社製ボートにも、BF115とBF15が搭載されている。
稀少艇、ボストンホエラー・ガーディアン。数年前、オーナーの依頼で龍也氏がフルレストアを行い、さらに木部を追加装備した。この4月、メンテナンスのために佐野造船所に預けられた。
そういえば佐野造船所におじゃましていて、「形がよい(なりがよい)」という言葉を聴いたことがある。もともと江戸前の和船というのは、「なりがよい」ことを売りにしていた。つまり粋なわけである。佐野造船所も粋な船造りを江戸時代から続けてきたことは言うまでもないが、その心意気は、現代のボートやヨットなどのいわゆる洋船建造にも生かされているような気がする。要するに生粋の江戸っ子らしく、粋で恰好の良い船を造るという心意気を感じるのである。佐野造船所の船は全てカスタムメイドでワンオフ艇と言える。オーナーの意向をくみ取って建造する船に、造り手側の前向きな心意気があることもまた、船寿命を延ばす大事な要因となる。

さて、RIGBY建造の進捗状況だが、フレームの組み立ては終わり、キールの製材に入った。 前回は2月までの製作工程をご紹介したが、今回は4月、5月の建造工程をまとめてみた。
取材協力:(有)佐野造船所
文・写真:大野晴一郎
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