OCEAN MASTER STORY

世界のプロが選んだHonda

世界で活躍するHonda船外機の
知られざるストーリー

2016.06.27
BF90が搭載された「第2もがみ丸」

川御座船を思わせる
紅花色の豪華新造船、
最上川で運行開始。

左の赤い船体の船が、この4月に進水した新造船「第2もがみ丸」。
右は、昨年船人紀行でご紹介した「第1もがみ丸」。
どちらも主機としてBF90(90馬力)と、補機のBF30(30馬力)が搭載されている。
船客となった俳人・松尾芭蕉が、川波に揺られながら最上川をくだり、「五月雨をあつめて早し最上川」という名句を残したことは、以前この船人紀行でご紹介した。(2015年9月)
芭蕉が最上川を下ったのは、大阪で客死する5年間の元禄2年(1689)のことで、現・山形県新庄市の本合海から小船に乗りこんだ。梅雨時の勢いを増した川水が、川船の薄い底板をゴツゴツと打つのを尻で感じながら、戸澤藩の船番所があった戸沢村の古口を経て、景勝地・最上狭を下っていった。
最上川の本合海は、松尾芭蕉が弟子の曾良とともに、船客となった地だ。その乗船地にはふたりの像と記念碑が立つ。一昨年の平成26年(2014)は、芭蕉の没後320年にあたり、重要文化財「奥の細道元禄七年初夏素龍書写奥書」の記念復刻版が刊行された。ちなみに芭蕉が「おくのほそ道」という旅に出た元禄2年(1689)という年は西行の500回忌に当たる。西行の歌枕を辿る旅でもあった。
今、最上狭で18隻の船による川下りを観光客に提供しているのが、最上狭芭蕉ライン観光(株)だ。通常航路として乗船所のある古口港から下流の草薙港までの12kmを、約60分かけて下っていく。また貸切り専用航路として、芭蕉が乗船したのと同じ本合海から古口港までの8.5kmを下るコースや、本合海から草薙港までの20.5kmを下る貸切りコースもある。いずれも芭蕉が眺めた風雅な風景を楽しめるとあって、人気の高い川下りコースだ。
その最上狭芭蕉ライン観光(株)が、新たな船を進水させた。
船は「第2もがみ丸」と命名され、山形県の県花である紅花をイメージして、船体が赤く塗装された。遠目にも鮮やかな船だ。
同社の運行管理者の南條裕司氏によると、乗船所が戸澤藩船番所を再現する形を取っていることに合わせ、「第2もがみ丸」のデザインは江戸時代風にまとめたのだそうだ。
たしかに上部構造物である屋形の屋根には船印の代わりに藩紋が描かれているし、よく見れば船首先端に突き出た水押し(みよし)を模った舳先にも藩紋がある。このこだわりで、江戸時代の藩主が御座する川御座船に見えるから面白いものだ。
山形県の県花である紅花をイメージし、船体を鮮やかな赤色に塗装した「第2もがみ丸」。スポーツフィッシングのために建造されたOceanMaster31。
乗客定員は25名。黒い屋根に、天窓として装備されたロールブラインドが見える。
「第2もがみ丸」には主機としてHondaのBF90(90馬力)が搭載され、補機としてBF30(30馬力)が付く。
耐久性と燃費の良さ、それに静粛性を買って、Hondaの4ストローク船外機と長年付き合ってきたという南條氏によると、Hondaの船外機を導入したのは平成10年ごろのことだそうだ。それまでは2ストローク船外機を主機として使っていた。しかし2スト特有の青白い排煙が客室部に漂い、風雅な川下りを楽しんでいるはずの船客が不快そうな面持ちでいるのを目の当たりにし、クリーンな4ストローク船外機への換装に踏み切った。当時、選ばれたのはHondaのBF50(50馬力)だった。
人に優しくあるためのエンジンとしては、唯一の選択肢だった。もちろん環境にも優しく、天下の名川を油で汚すまじという企業理念も、4ストローク船外機への換装を後押しした。
主機としてBF90(90馬力=写真左側)。
補機がBF30(30馬力=同右側)。
「船外機はどうしても酷使してしまいます。25人ほどのお客様をお乗せして12kmをゆっくり下り、下船されたあとは空船状態で流れの早い川を全速で遡っていきます。それを日に何度も繰り返すわけですから、タフな使いかたですよね」そう語ったのは南條氏。 さらに舵利きの良さとティラーハンドル(船外機の部分名称はこちらをご参照ください)の軽い操作感を船外機に求めていると教えてくれた。川を行く船の底はフラットだ。そのために強い横風を受けると「スッと、5mくらい横滑りする」こともあるそうだ。そうなったときにはティラーハンドル操作で素早く船のポジションを修正する必要がある。「Hondaの船外機はティラーが軽く操作できて、素早く位置を修正できるので使いやすい」とのことだ。
BF90のティラーハンドルを握る南條氏。
特注の長いティラーで船外機を操作する。
これが由良氏自作のタイラバ。60グラム、80グラム、100グラムと三種類ある。
愛用するLOWRANCE(ローランス)のGPS魚探でポイントを確認する。
「第2もがみ丸」の内装は格子柄を駆使して和風にまとめられた。ひと言で印象を表すならきらびやかという言葉に尽きる。屋形側面は大型の窓がはめ込まれているのに加え、天井にはロールブラインドが装備され、採光性は抜群。明るさがきらびやかさを際立たせているといえる。
後部デッキには、正弦波インバーターが搭載されたHondaの発電機、EU55isが積まれ、エアコンを装備。それにより季節を問わず快適な船旅が楽しめる。
いずれ、自称・風雅な仲間に声を掛け、本合海からこの「第2もがみ丸」を仕立てて、俳諧を楽しみながら最上川を下ってみたいと思っている。
取材協力:取材協力:最上峡芭蕉ライン観光株式会社
本社&古口港(戸沢藩船番所)
〒999-6401 山形県最上郡戸沢村大字古口 86-1 TEL:0233-72-2001 FAX:0233-72-2003
文・写真:大野晴一郎
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