第3回実釣編②:ルアー五目釣り
西伊豆の松崎沖で自由気ままなルアー五目釣りに挑戦

マイボートを使った釣りは、「手前船頭(自分自身が船長)」で、好きな場所に出向き、自由度の高い釣りができる。なかでも動力を利用しながら、免許不要で楽しめる「2馬力ボート」は、必要な機材の購入や保管もしやすく、これから挑戦してみたい人にも人気だ。これまでお伝えしてきた「基礎知識&準備編」「実釣編①:シロギス釣り」に続き、今回は静岡県の西伊豆を舞台に、2馬力ボートを使ったライトタックルでのルアーフィッシングの楽しみ方を紹介する。

丸山 剛さん
丸山 剛さん
1962年生まれ。神奈川県厚木市在住。フィールドフォトグラファーとして、国内外のさまざまな海や山に出掛ける。釣り、ツーリング、沢登り、山スキーと幅広い外遊びに精通し、海では東京湾や相模湾に自身の2馬力ボートを浮かべて旬の魚を釣るのが得意。

山と海が接する
西伊豆の海に、
2馬力ボートで出艇!

ルアーならエサ要らず。
釣れる魚はその日しだいの
気ままな釣りを楽しむ

今回、丸山さんが選んだ行き先は、静岡県賀茂郡松崎町の松崎港。「2馬力ボートからルアーを使った五目釣りを楽しむならココ!」という、おすすめの釣り場だ。当地を含む西伊豆エリアは、最深部で1000mを超える水深を誇る駿河湾に面し、太平洋からの黒潮の分流の影響を強く受ける。そのため季節ごとに多種多彩な魚が回遊してくる。また居着きの魚もいる。

その中で松崎港は、自由に使える駐車場や広いスペースがあり、事前の利用申請や使用料も不要。2馬力ボートの発着も隣接する砂浜からできるので人気なのだ。

松崎港は隣が海水浴場になっており、夏のハイシーズン以外は好きな時にボートが出せる

「五目釣り」とはその名のとおり、あえて本命を絞らず、その時に釣れる魚を何でも楽しもうというスタイルのこと。その日の状況によって「何が釣れるかはお楽しみ」という性格の釣りだ。

丸山さんはジギング、タイラバ、キャスティングという、ルアーフィッシング用の3セットのタックルを携え、波静かな砂浜から沖を目指した。

まずはジギングからスタート!

この日は10月中旬。松崎港は西伊豆の景勝地と知られる堂ヶ島もすぐ近くにあり、海は青く、緑の山並みがすぐ近くまで迫っていて、波に揺られながら周辺の景色を眺めていると、日々の雑踏を離れ自然の中に身を置いていることを実感する。

カヤックフィッシングでも人気の松崎沖だが、2馬力ボートならさらに楽に広範囲を移動できる

この日はまず、水深40mほどのエリアでエンジンを止め、ジギングから始めてみた。釣りの組み立てとしては、青物に追われた小魚が水面に跳ねたり、それを目掛けて海鳥が海面に集まるようなら「キャスティング」、それ以外の時間帯は「タイラバ」もしくは「ジギング」でねらう。

釣りをする際は、魚探に出る反応や周囲の船の釣れ具合など、あらゆる情報に目を配るのも忘れない。あとは根や海底に変化のある場所で粘るもよし、魚探から得られる魚の反応を追いかけながら釣るもよし。もちろん、水面に青物が跳ねているようなら、そのエリアに急行する手もある。限られた時間を有意義かつ柔軟に遊び尽くすなら、2馬力ボートの機動力は大きな助けとなる。

ジギングを試しながらも、小魚の跳ねの有無などをチェックする丸山さん。気ままな五目釣りだからこそ、海の変化には常に気を配る

メタルジグにガツン!
掛かっていたのは…

海上は晴天無風、波もほとんどない絶好のボート釣り日和だが、しばらくは潮流もほとんどなかった。風に加えて潮流もないと、まずはボートが1つのポイントから動かないため、新しいポイントを効率よくねらいにくい。また、魚の活性も上がりにくくなる。周囲のカヤックや遊漁船を見ても、スローな反応が続いてるようだった。

とはいえ、こうした状況下でこそ、自分の思いつくままに移動とサオだしを繰り返せる“手前船頭”の強みが生かせる。ルアーのアクションや探る層(タナ)に変化をつけながら無心で釣っていると、中層でアクションさせていたメタルジグにガツン!と何かが食いついた。

【動画】
待望の初ヒット!その正体は?

掛かっていたのは食卓でもおなじみのサバ。秋の西伊豆らしい釣果に、丸山さんもひと安心のようすだ。

掛かったサバはエイッとボートの上に抜き上げた。魚が大きければランディングネットを使う
ファーストフィッシュは魚探に映った群れを見逃さずに捉えたサバ!

2馬力ボート×ルアーフィッシングの
魅力を堪能!

その後、タイラバも試してみるが、この日はジギングのほうが明らかに反応がよい。途中、丸山さんが「ああ、バレた。今のは取りたかった~」と思わず声を上げる。聞けば底に落としたジグを、2回ほど大きくしゃくったところで、いいサイズ感の魚がヒット。大きく頭を振ったような感触があったが、残念ながらハリから外れてしまったという。「おそらく根魚だね」とのことだが、その言葉を証明するように、次のチャンスでうれしい魚が釣れた。

タイラバも試してみたが、この日はジギングのほうに反応がある。魚探で根のある場所を確認しながら仕掛けを下ろす

少しずつねらうポイントを変えながら、海底付近を探っていたところゴゴゴン!という手応え。

【動画】
ジギングを信じて掴んだチャンス!

メタルジグにアタックしてきたのは良型のオオモンハタだった。

近年、伊豆半島周辺では、根魚の中でもアカハタ、オオモンハタといった、暖かい海水温を好むハタの仲間がよく釣れるようになっている。ハタ類はタイラバでもジギングでも釣れるのだが、どちらか一方に反応が偏ることもある。その点でも、この日のように、両方のタックルを用意したほうがチャンスをより逃しにくい。

上の動画でカメラマンが撮影していた写真がこちら。掛かったあとは力強い引きを見せたオオモンハタ。ただし「ばらした一尾はもっと大きかったかも(笑)」と丸山さん

ルアーフィッシングは、エサのように匂いなどで魚を食いつかせることはできないが、魚の反応や潮流の変化を見て、ルアーの形状や色、重さ、動かし方などを変え、一尾の魚にたどり着くところが面白い。2馬力ボートで自らの操船でポイントを選ぶ手前船頭の楽しみに、さらに釣り人の操作で魚に食いつかせるルアーフィッシングの楽しみが加わると、時間を忘れてついのめり込んでしまう。

「今日はオオモンハタが楽しませてくれましたが、松崎沖はマダイの魚影も濃いところ。日が違えばタイラバにガツンと大ダイが来た可能性も充分にあります。何が釣れるかはその日のお楽しみですね」と丸山さん。2馬力ボートがあれば、そうした海に自分のタイミングで出かけることができる。

次ページからはタックルや釣り方といった、ボートからのルアー五目釣りの具体的な方法を紹介していこう。

※このコンテンツは、2023年11月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。