SCOOTER - 1981.07

SCOOTER
SCOOTER
 
“スクーターとは何か”について

 昭和28年10月、スクーターを輸出することに関して通商産業省、日本小型自動車工業会及び各スクーターメーカーなどの関係者が集まり協議した際に、スクーターの定義について決められたものがある。
 それによると「スクーターとは原動機を座席の下に設け、前方に足踏台のある、車輪の直径が22インチ以下であるような2輪自動車を指す」とある。
 スクーター(SCOOTER)正しくはMOTOR SCOOTERであるが、わが国では昔から一般的にスクーターで通用している。
 このスクーターの意味・定義を辞書で探してみると
OXFORD DICTIONARY
  SCOOT 急いで行く、早く行く
SCOOTER 水と氷上を走る帆舟BOAT
Foot boardのついた小径車輪付の片足で蹴って走る子供用の玩具
 
広辞苑(岩波書店)
  小型オートバイの一種、自動変速装置を有し車体に跨らず、腰を掛ける形式のもの
 
自動車用語辞典(山海堂出版)
  モータースクーターの略、比較的小さな車輪をもつ2輪自動車で、足を置く床板と腰掛けがあり、跨ぐ必要がないのが特徴。スケーターから進化したもの。

 スクーターとは何か、そのルーツをたどってみるとスクーターとしては世界で最初と思われる1910年のAUTOPEDから、1919年のKRUPP,NORLOWまではいずれも子供用玩具のスケーターにエンジンを取りつけたスタイルである。シートを備えたのは1919年のKRUPP以降とみられる。1923年のSKOOTAMOTAになり、いまのスクーターの原型をみることが出来る。そして今日においてスクーターのイメージを確立させるに至るスタイルを完成させたのは、1946年のVESPAのプロトタイプではあるまいか。
 
 一部に1923年のSKOOTAMOTAをスクーターの起源とする説もあるがこれとて1910年のAUTOPEDなくしては生まれなかったコンセプトではないかと考える。
 
 スクーターの語源については、誕生初期の頃のスタイルが子供用玩具のスケーターに似ていることも関係ありと思われるが、むしろ1923年のSKOOTAMOTAの方が影響つよしの感がする。少なくともSKOOTA(スクーター)という言葉がつけられた二輪車は、現在知りうる限りにおいてこれが最初と思われる。いずれにせよ語源を定かにした説は見当らない。
 
 スクーターのスタイルも時代の流れにつれて様々に変化していることはその変遷が物語っている。誕生の頃のスケーターにエンジンを付けたものから、模索の時代を経てVESPAのプロトタイプ以降にみられるスクーターの基本的スタイル要素は
エンジンなどメカニズムがまる出しにならぬようカバードされ、しかも乗り降りにじゃまにならぬ位置にレイアウト
燃料タンクの位置はシート下、又はシート後方
足元からひざ部分をカバーするレッグシールド
シートを跨ぐのではなく座るかたち
など、おおよその基本レイアウト要素は確立されているが、これとても今後時代の流れでどう変化してゆくか予測はむずかしい。
 昨年来再登場した国産スクーターは、12年前迄生産されていたものと比べ飛躍的に向上した動力性能を備え、小型軽量でパワフルに走るスクーターとなっている。
 いずれにしてもスクーターは、自動車やモーターサイクルなど"のりもの"の中で、存在する価値をもった"便利で楽しいトランスポーター"であることは間違いない。




← 前ページへ--- 目次へ--- 次のページへ →