NSX - 1990.09

NSX

NSX
 
ENGINE


チタン・コンロッドに代表される、
ホンダの高回転テクノロジー。
NSXは、バルブ有効面積が最大にとれ、吸・排気効率に優れた、1気筒当り4バルブの、24バルブ・クロスフロー・DOHCエンジン。しかも、吸気側φ35mm×2、排気側φ30mm×2の広いバルブ有効面積に加え、充分なリフトを与えることのできるスイングアーム方式です。ホンダがF-1マシーンや市販車を通じて磨きあげてきたこの方式は、そもそもバルブ1本当りの重量が軽くできるという、高回転化のための多くの利点をもっています。これをベースに、高性能スポーツマシーンにふさわしく、さらに高回転化技術に磨きをかけました。
その代表ともいえるのが、チタン・コンロッドです。
チタンは、鉄の7.85に比べ4.48と比重が軽く、また鉄の50kg/mm2に比べ65kg/mm2と引っ張り強度にも優れた金属です。しかしながら、コストが遙かに高く、また鍛造と切削に困難がつきまとうため、宇宙開発用のロケットなど、特殊な用途に限られていたものです。
そのためホンダは、鍛造成形性と切削性とを大幅に改善した新しいチタン、3アルミ・2バナジウム・サルファーを開発し、ついに実用化に成功しました。これにより、約700回転分の高回転化を実現したわけです。また、コンロッドのスラストの部分には、クロムナイトライトという特殊な表面処理を実施。クランクシャフトとコンロッドが接触した場合も、鉄の約2倍の耐焼付き性をもつなど、耐久性にも優れています。
そのほか、材料技術と製造技術によって、バルブステムを通常のφ6.6mmからφ5.5mmへと細径化。ウルトラフィニッシュ加工で鏡面仕上げを施した、高信頼性のクランクシャフト軸受。さらにはカムシャフトを、リフトが高い吸気系の剛性を高めるために中実とし、排気系を中空に設計。これにともない、スプリングにも高強度材を使用して限界回転数を高めるなど、細部にわたり徹底した高回転化・高出力化を図っています。

チタン・コンロッドに代表される、ホンダの高回転テクノロジー

アルミ合金とマグネシウムを多用するなど、
可能なかぎり贅肉をそぎ落とした、
軽量・高剛性エンジン。
クルマ全体の軽量化は、NSX開発の核であり、ボディとともに主要なコンポーネントであるエンジン本体の軽量化、コンパクト化、高剛性化は、いわば絶対条件でもありました。
新エンジンは、アルミシリンダーヘッドをはじめ、オープンデッキのエンジンブロックにもスリーブを除いてアルミを使用。また、インテークマニホールドのチャンバー部分、ヘッドカバー、トップカバーには、従来のアルミと同等の耐蝕性をもち、アルミよりも軽いマグネシウムを。さらには、1本当りで約190g、トータルで鉄の約30%もの軽量化を果たした、チタン・コンロッドや、NC43VCという高強度材を起用しコンパクト化を図った、クランクシャフト。
またニッケル・クロム・モリブデンを採用し、ホンダVTECの吸・排気系ともにチルという熱処理を加え、吸気側のHi側にリメルト処理も行なったカムシャフト。シリコンを添加し高強度化を図り、モリブデンをコーティングしてフリクションを低減したピストンなど、これらが有効に働きあい、徹底した軽量化と、コンパクト化を実現し、ムダのない、しかも高剛性のエンジンをつくりあげています。
軽量・高剛性エンジン

確実で、より安定した点火をもたらす
デスビレスのダイレクト点火方式。
高回転に対応し、従来のデストリビュータからハイテンションコードでプラグに高圧電流を送る方法ではなく、各プラグに直接小型イグニション・コイルを取り付けたダイレクト点火システムを採用しました。この方式では電子制御によりダイレクトに点火信号を各気筒に送ることができるため、電流がコードを流れる場合の電圧ロスを抑え、より強力で安定した点火が得られるとともに、冷寒時のエンジン始動も速やかに行なうことができます。また、電波障害タフネスも向上させています。プラグは白金製で、100,000kmまでメンテナンスフリー。耐久信頼性にも優れています。

排気効率を高め、
しかも快いスポーツ・サウンドを奏でる、
大容量サイレンサー&デュアルエキゾーストシステム。
ハイパワーエンジン実現のために、排気ガスの圧力を下げ、それをいかにスムーズに流すかを追求。そのために、7つの部屋をもち、約28Lの大容量をもつ大型のサイレンサーを用いると同時に、デュアルエキゾーストシステムを採用。フロントバンクとリアバンクを途中で集合させ、低回転域では静かな昂まりを、高回転域ではよりクリアに、回転域に応じたリニアなスポーティ・サウンドを生みだしました。   大容量サイレンサー&デュアルエキゾーストシステム




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