これは、自然吸気エンジンの〈共鳴効果〉と〈慣性効果〉を利用し、回転域に応じてこれを切り換えることで、シリンダー内に、より多くの混合気を吸入することのできる、画期的なインテークマニホールドシステムです。
共鳴効果とは、たとえば、フラスコのような容器の入口に、スピーカーの音を近づけるとします。すると、内部の空気がふるえ始めるように、ある特定の周波数を与えると音が共鳴し、空気の振幅が最大となります。この共鳴の原理をエンジンの吸入過程に利用し、低・中速域のトルクアップを図ったものが、いわゆる共鳴効果です。
多気筒エンジンの場合、一つ前のシリンダーの吸気行程で発生した圧力波によって、インレットバルブが閉じる直前のポート先端の圧力を正圧にして、充填効果を高めることができます。
この共鳴効果を最も効率的に用いるためには、インレットバルブの開弁状態が重ならず連続するという条件が必要であり、NSXはV6エンジンの前後バンクそれぞれ3気筒ごとの2つの吸気チャンバーに分けることで可能としています。このシステムでは、インテークマニホールドに内蔵するシャッターバルブを閉じることで、各バンク独立したチャンバーとしています。
また、4,800回転あたりからは、チャンバー内部にあるシャッターバルブを開くことによって慣性効果が働きはじめ、高速域での出力アップを生んでくれます。
具体的には、エンジン回転数を検知したECUの指令を受けてシャッターバルブを開き、チャンバー内の容量が変化する構造となっています。
つまり、低・中速域では閉じられたままになっていたバルブが、高速域になって開いて大きな慣性効果を生み、さらにはVTECのバルブタイミングが高速用に切り換わることと相まって、いっそう大きな効果が得られるわけです。
高性能DOHCエンジン、そしてVTEC。さらには新開発の共鳴チャンバー容量切換えインテークマニホールドシステムが、絶妙に連係し、かつてない全域ハイパフォーマンスを実現しました。 |