Honda CIVIC CVCC - 1973.12

CIVIC
CIVIC CVCC 1973.12
開発にあたって
 アメリカのロスアンゼルス市では、1940年ころからすでにスモッグ発生の問題がではじめ、とくに、1943年9月8日、同市は一日中スモッグが暗く立ち込め、多数の人々が目を刺激されたり、鼻、咽喉にも被害を受けました。その後、1947年10月3日にも同様のスモッグが発生し、住民の半数以上も被害を受けるという事件が起きています。
 これらの事件が契機となり同市では、1947年からスモッグ発生に対する防止と原因の調査が開始されました。
 1955年に、なってカリフォルニア工科大学のHaagen Smit博士が、ロスアンゼルスのスモッグが、25℃以上の高温度の日中に多く発生する事実から、その原因が酸化窒素と炭化水素の光化学反応である事を示しました。
 ロスアンゼルスのスモッグ防止対策としてはまず、工場、発電所などの固定発生源に対する規制が行なわれ、その後、自動車も大きな発生源とされて、カリフォルニア州では排気ガスに関し1966年から、法規制が開始されました。
 アメリカにおける以上のようなスモッグ発生は、公害問題の重大さを喚起し、1970年には公害対策を重要課題とする連邦政府の方針も打ち出され、それまでは、健康・教育・厚生省(HEW:Dept of Health Education and Welfare)が所管していた環境保護行政を、新設の環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)に移管されると共に、より積極的な活動が開始されました。
 このような状勢の中で、1970年、アメリカで1963年から施行されてきた大気清浄法(Clean Air Act)を大幅に修正したいわゆるマスキー法が可決されました。提案者は有名なマスキー上院議員です。このマスキー法の中で自動車に関係する規制内容は非常に厳しいもので、当時どの自動車メーカーでも、それは不可能に近い数字であるとされていました。
 すなわちその内容は排気ガスのCO、HCについて、1975年型車からは1970年型車の1/10とし、76年型車からさらにNOxについて1971年型車の1/10とすることを骨子とした一連の排気ガス規制が示されているのです。
 この法案が可決されるや、各国の自動車メーカーは、この厳しい目標に到達するため、一斉に排気ガス対策に乗り出し、その解決に全力を投球してきた、と思われます。
 その具体的な方法としては、従来エンジンに対して多少の改良を加えると共に、後処理装置として触媒コンバーターや、サーマルリアクターを付設する一般的な方法、あるいは、従来エンジンから離れて、層状給気エンジン、あるいはバンケルエンジンといった代替エンジン(Alternative Engine)をベースとして対策を進める方法など、各社各様の最大の努力が認められます。
 われわれも、はじめは、できれば従来型エンジンで解決策を見出すべく、考えられるすべての方策を検討してみました。
 しかしながら、従来エンジンでは、CO、HC、NOx三者を同時に低減するためは、当然空燃比の濃い混合気を使用するいわゆるリッチアプローチとなり、そのため二次空気を供給する空気ポンプの付設、さらに再反応させるための後処理装置も必要となる上に、とくに燃費節減はこのアプローチでは到底困難である事が、予想されたのです。
 CVCCの開発は、この困難を克服するところから始まったのです。

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