世界ツーリングカー選手権 2016シーズンプロローグ ー堀内大資が語る今季の展望ー

車体、エンジン両面で性能向上を果たしたマシンを投入

世界ツーリングカー選手権(WTCC)にワークス体制で挑むHondaは、フル参戦4年目となる2016年シーズンを迎えます。

昨シーズン、欧州仕様の量産型Civicのモデルチェンジに合わせて、Honda Civic WTCCはその外観を大きく変更しました。2016年シーズンに向けて、外観こそ大きく変わらないものの、車体、エンジンともに大幅な改良を加えた新バージョンを開発し開幕戦から投入、マニュファクチャラーズ・チャンピオン獲得を目指します。

昨シーズン後半から、新たなマシンの開発は始まっていました。HondaはJAS Motorsportと、HRD Sakuraの協力体制を強化し、車体の解析を実施。本田技術研究所の持つ量産開発技術も導入して、ボディー剛性やサスペンションの仕様を細部に渡り分析しました。これらで得られたデーターを基に、より高いボディー剛性と効果的なサスペンションのセッティング、精度の高いボディーワークを実現したニューバージョンの車体を完成。シーズンオフのテストでは、コーナリング、ハンドリングに大きな成果を確認しています。

エンジンについては、昨シーズン後半に投入したパワーアップ仕様のさらなるポテンシャルアップを図りました。その結果、パワーアップとともに高回転域での特性を改善し、最高速とドライバビリティの向上を実現しています。

堀内大資 Honda WTCC開発プロジェクトリーダーのコメント

堀内大資

「2016年シーズンに向けて、JASと一緒にマシンのポテンシャルアップに力を注ぎました。特に車体面では、Hondaの持つさまざまな解析技術と研究成果を生かし、高剛性のテスト車を開発してオフのテストを行いました。制約の多いツーリングカーレースのマシン開発においてはHondaの量産車の開発技術も有効で、車体、サスペンションの改善に大きな役割を果たしています。エンジンについては、燃焼を中心に改善を進め、より高いパワーとなめらかで扱いやすい特性を発揮することができました。シーズン後半に向けて、さらに戦闘力を上げた仕様の開発を行う予定です。 これらの新たな仕様は、シーズンオフのテストで成果を確認しました。開幕戦には、3月下旬のシェイクダウンテストを経て、3台とも新仕様のCivic WTCCを投入します」

新たにチャンピオン・ドライバーが加入し、ワークス3台体制で戦いに挑む

2016年シーズン、Hondaはワークスとして3台のHonda Civic WTCCを投入します。これまで通り2台の「カストロール・ホンダ・ワールド・ツーリングカー・チーム」と、チームを運営するJAS Motorsportからもう1台がエントリー。「カストロール・ホンダ・ワールド・ツーリングカー・チーム」からは、2012年にチャンピオンを獲得したロブ・ハフ選手と、Honda参戦開始以来ドライブしているティアゴ・モンテイロ選手が参戦。昨年ヨコハマ・トロフィーを獲得したノルベルト・ミケリス選手が、今シーズンからワークスの一員となり、JAS Motorsportに加わることとなりました。
イギリス人のロブ・ハフ選手は、WTCCに2005年から参戦を続け、2012年にはチャンピオンを獲得するなど、輝かしい実績と経験を持つトップドライバーです。WTCCで29回の優勝を果たし、今後Honda Civic WTCCでさらに勝利を重ねることが期待されます。

堀内大資 Honda WTCC開発プロジェクトリーダーのコメント

堀内大資

「ロブ・ハフ選手は実績あるすばらしいドライバーで、一緒に戦えることをうれしく思います。テストでも安定した、的確なドライビングをみせてもらいました。彼の加入によって、レースでの結果はもちろんですが、Civic WTCCのポテンシャルがさらに引き出されることを期待しています。今シーズンから、ワークスとして3台を投入します。それぞれに個性と実力あるドライバーですので、お互いの切磋琢磨がチーム全体として好結果を生んでくれると思います」

レースフォーマットが変更され、より接近戦が予想される2016年シーズン

2016年のWTCCはレースフォーマットが変更され、これまでの「レース1・レース2」から「オープニングレース・メインレース」として開催されます。予選トップ10のリバースグリッドで行われていた従来のレース2が、オープニングレースとして最初に行われ、その後に予選結果通りのグリッドからスタートするメインレースとなり、昨年までとは逆の順番でのレースとなります。メインレースはオープニングレースよりも周回数を多く設定し、その名の通り実力通りの白熱した戦いが展開されます。
この大きな変更によって、レース戦略も変わることが予想されます。昨年まで、レース2での好グリッドを狙い予選でタイムをコントロールする戦略も見られましたが、それもメインレースに重点を置く新たなフォーマットでは、あまり効果的とは言えなくなります。また、リバースグリッドで行われるオープニングレースでアクシデントを起こすとメインレースに影響するため、予選上位の選手にとっては難しい戦いとなります。
これ以外にも、ワークスチームには3台によるタイムトライアルが新設され、マニュファクチャラーズ・ポイントが与えられることになりました。また、これまで60kgを上限としていたウエイトハンデが80kgに引き上げられるなど、より接近し白熱するレースとなるような施策が加わっています。
2016年シーズンは、4月2〜3日フランス・ポールリカールで開幕し、前半7戦をヨーロッパとロシアで、8月に南米アルゼンチン、9月からの後半4戦は日本でのラウンドから始まりアジアと中東で開催され、全12ラウンド24レースが予定されています。

エンジンについては、昨シーズン後半に投入したパワーアップ仕様のさらなるポテンシャルアップを図りました。その結果、パワーアップとともに高回転域での特性を改善し、最高速とドライバビリティの向上を実現しています。

堀内大資 Honda WTCC開発プロジェクトリーダーのコメント

堀内大資

「2016年シーズンは、まず開幕から2戦、全力で勝利を目指します。この2戦はウエイトハンデからも有利な戦いとなり、テストでの性能アップ、ドライバーのラインアップからもCivic WTCCにとって勝たなければならないレースだと思っています。 レースのフォーマットが変わったり、新たなタイムトライアルが行われるなど、戦う側にはやってみなければわからないこともありますが、よりエキサイティングなイベントになることは間違いないので、ツーリングカーレースらしい、緊迫したおもしろいレースをお見せできると思います。 テストでのライバルたちの様子から予想すれば、今シーズンはかなりの接近戦になるでしょう。僅差の戦いこそ、マシン、ドライバー、チームなどすべての総合力が勝負のカギとなりますので、我々もしっかりと準備を整えタイトル奪還に向け全力を尽くします。ファンの皆さまの応援を、よろしくお願いします」