HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

2017.08.09 Vol.173 Round 10
HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

予測困難な“フラッグ・トゥ・フラッグ”の中、チームが団結して最高の結果を得る

シーズン後半戦のスタートとなった第10戦チェコGPは、“フラッグ・トゥ・フラッグ”ルールが適用され、今季4回目のポールポジションから決勝に挑んだマルク・マルケス(Repsol Honda Team)が、シーズン3勝目を挙げました。

“ウエットレース”が宣言されて始まった決勝レースで、マルケスはただ一人、リアタイヤにソフトコンパウンドをチョイス。序盤にプッシュして後続とのリードを広げた上で、スリックタイヤを装着したマシンにチェンジするという作戦でした。

しかし、思いのほか路面が乾くのが早く、そのため、好スタートからホールショットを奪うも、オープニングラップが終わるときには2番手にダウン。2周目には次々に抜かれて大きくポジションを落とします。そこでマルケスは、予定よりも早くマシンチェンジを行うことを決断し、2周を終えてピットへ。マシンチェンジを終えてコースに出たときには、19番手となっていましたが、スリックタイヤを履いたマシンで猛烈に追い上げ、6周目にはトップを奪取。それからも快調にラップを重ね、後続に20秒以上の大量リードを築くと、それからはレースをしっかりコントロールしました。終盤はペースを落としながらも、2位フィニッシュしたチームメートのダニ・ペドロサに、12秒差をつけてチェッカーを受けました。

これで、2戦連続今季3勝目を挙げたマルケスは、大会3位でランキング2位のマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)に14点差、今大会6位でランキング3位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)に21点差、大会4位でランキング4位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)との差を22点差としました。マルケスは後半戦の最初のレースにおいて、チャンピオンシップでわずかにリードを広げることに成功しました。

ペドロサも好調で、予選では2戦連続3番手。今季4回目のフロントローを獲得すると、“フラッグ・トゥ・フラッグ”となった決勝レースでは、4周を終えてピットへ。この時点で7番手だったペドロサですが、多くの選手がこの周回にマシンチェンジを行ったことからポジションダウンはほとんどなく、そこから追い上げのレースに挑みました。そして、9周目に2番手に浮上すると、3番手以下に大きなリードを築き、安定したペースで22周のレースを走りきりました。この結果、総合5位で順位は変わりませんが、総合2位から4位までのライバルたちとのポイント差を縮めることに成功しました。

チームとしては第4戦イタリアGPに続き、今季2回目の1-2フィニッシュ。“フラッグ・トゥ・フラッグ”というチームの総合力を問われるレースを最高のかたちで締めくくったRepsol Honda Teamのリビオ・スッポ監督が振り返ります。

―難しいコンディション、そしてレースになりました。今大会のレース戦略はどういうものでしたか?

「今日は天気が大きく変わったため、戦略を立てることは非常に困難でした。レース直前のコースはまだ濡れていましたが、気温はかなり高く、ウエットからドライへコンディションが変化する中で、フラッグ・トゥ・フラッグのレースになることは明らかでした。しかし、路面があれほどのスピードで乾くことはだれも予想できませんでした。マルクはリアタイヤをグリッド上で変えました。レース序盤にアドバンテージを得ようと、リアにソフトオプションを選んだんです。ところが、タイヤがあっという間にオーバーヒートしてしまい、好スタートを切ったにもかかわらず、ポジションを失ってしまいました。そこで彼は早い段階でピットイン。マシンを交換する作戦に変更しました。これが今日の勝利のカギとなる、すばらしい出来事でした。ダニもすばらしい仕事をしました。マシンをチェンジするタイミングも遅すぎず、滑りやすいコンディションの中、スリックタイヤで最初から積極的に走りました」

―今大会のポジティブポイントと、もしネガティブポイントがあれば教えてください。

「正直なところ、今日のレースでネガティブなポイントを見つけることは難しいですね。チームは1-2フィニッシュを果たし、完ぺきなレースとなりました。だから、ポジティブなポイントは、両ライダーともにすばらしいレースを披露してくれたこと。クルーもマシンチェンジなど、フラッグ・トゥ・フラッグのレースでとてもいい仕事をしました。今日はすべてが完ぺきでした」

―レース中、ピットウオールから見ていた感想はどういうものですか?

「マルクがオープニングラップにグリップを失っていったのを見たとき、ソフトコンパウンドのリアタイヤを選んだのはいい選択ではなかったと思いました。しかし、レースは長いと思っていたし、だれもがマシンを交換しなければならないことは分かっていたので、あまり心配していませんでした。マルクがスリックを履いたマシンでコースに出たとき、彼のラップタイムは最初からとても速く、それからレースの主導権を握り、大きなアドバンテージを築いたことをうれしく思いました。またダニも、これまで彼が苦労してきたフラッグ・トゥ・フラッグで、すばらしい走りをしたことを非常に喜びました」

―ハードなスケジュールになっている2017年シーズン。7月の夏休みをライダーたちはエンジョイしましたが、チームスタッフは休暇を取ることができましたか?

「もちろん、すべてのスタッフが休みを取りましたが、夏休みの期間中には、ブルノで2日間のテストも実施しました。今年はハードなスケジュールですが、今大会から11月まで、後半戦も非常にタイトなカレンダーになっています」

―今大会のインサイドストーリーを教えてください。

「マルクとダニは、開幕の数日前に亡くなったアンヘル・ニエト(世界選手権軽量級クラスで何度もチャンピオンに輝いたスペイン人ライダー)に、好結果を捧げたいと思っていました。両選手からは特別なモチベーションを感じていたし、2人ともその目標を達成できたことを、非常にうれしく思っています」


後半戦のスタートとなった第10戦チェコGPを終えて、Repsol Honda Teamは、月曜日にはブルノ・サーキットで行われた公式テストに参加しました。このテストでは、連戦となる第11戦オーストリアGPに向けて、さまざまなセットアップにトライしました。昨年のオーストリアGPは、マルケスが5位、ペドロサが7位と、シーズンを通して苦戦した大会の一つですが、チェコGPを最高のかたちで終えたチームは、高いモチベーションで今年のオーストリアGPに向かうことになります。

昨年の雪辱に燃え、全力で挑戦を続けるRepsol Honda Team。タイトル獲得に向けて、次戦も優勝を目指します。

» チェコGP レポート

マルク・マルケス(#93)、ダニ・ペドロサ(#26) マルク・マルケス ダニ・ペドロサ マルク・マルケス(左)、ダニ・ペドロサ(右) ダニ・ペドロサ(左)、マルク・マルケス(右)

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