Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 ホルヘ・マルティン Del Conca Gresini Racing Moto3

Moto3 ホルヘ・マルティン Del Conca Gresini Racing Moto3
Profile
生年月日
1998/1/29
出身地
スペイン
身長・体重
168cm・63kg
チーム(マシン)
Del Conca Gresini Racing Moto3
(NSF250RW)
2016年の成績
Moto3 総合16位
Vol.2

Honda陣営に加入した2017年、ホルヘ・マルティン(Del Conca Gresini Racing Moto3)は開幕からすばらしいポテンシャルを発揮しました。開幕戦カタールGPでポールポジションを獲得すると、第3戦アメリカズGPまでのすべてで表彰台を獲得。さらに、第4戦スペインGPから第8戦オランダGPは、すべてのレースで予選トップタイムをマークする圧倒的な速さを披露しました。

しかし、シーズン前半戦を締めくくる第9戦ドイツGPで、19歳のマルティンは大きな試練に見舞われます。金曜日午後に行われたフリープラクティス2でハイサイドから転倒を喫し、即座にメディカルセンターに搬送されたマルティンは右足首の骨折と診断され、バルセロナで手術を受けました。3時間に及ぶ手術の末、骨折部位をスクリューで固定。靱帯損傷がないと判明したのは吉報でしたが、さらにかかとにも骨折があることが判明しました。

夏休み期間はリハビリに集中したマルティンは、第10戦チェコGPからレースに復帰。走行前日の木曜にメディカルディレクターによるチェックを受け、走行許可を得て、金曜のフリープラクティスに臨んだマルティンは、初日の順位を31番手としました。しかし、痛みが激しいために2日目以降の走行は見合わせ、2週連続開催となる次週の第11戦オーストリアGPで、改めて復帰初戦として挑むことになりました。

金曜日午前のフリープラクティス1はトップから1.177秒差の14番手。午後のフリープラクティス2はウエットセッションになったため、マルティンはリスクを避けて走行を見合わせました。結局この日の総合順位は午前のタイムで決定し、マルティンは初日の順位を14番手としました。

土曜日のセッションでは、フリープラクティスで10番手という順位ながら、トップからわずか0.300秒差というきわめて水準の高い走りを披露。午後の予選では13番手となり、日曜の決勝レースは5列目13番グリッドからスタートすることになりました。


Moto3クラスの決勝レースは、8月13日(日)の午前11時から全23周で争われました。好スタートを決めて序盤周回に順位を上げたマルティンは、トップグループの中で最後までライバルたちと激しい順位争いを繰り広げ、最後は3位でチェッカー。2位の選手とは0.332秒差、4位の選手とは0.008秒差という数字が、バトルの激しさを物語っていました。パルクフェルメに戻ってきたマルティンは、痛む足を引きずりながらチームスタッフに歩み寄り、メカニックたちと熱い抱擁をかわしました。

「本当に感動的なレースでした」涙を指で拭い、マルティンは話し始めました。「夏休みの間ずっと、復活するために懸命に取り組んできました。今日はとても厳しいレースで、グループの中で激しい戦いになりましたが、負けないよう全力でがんばりました。いいペースで走れていたので、(ホアン)ミル選手(Leopard Racing)を捕まえられそうだと思ったのですが、グループ内のバトルから抜け出せませんでした。この週末は6周しか連続ラップをこなしていなかったので、最後まで走りきることができるかどうかも分かりませんでした。これは僕のレース生活の中でも、最高の表彰台です。優勝と同じくらいの重みがある表彰台なんです」

この感動的なレースから2週間後、第12戦イギリスGPがシルバーストーン・サーキットで開催されました。右足の傷は完全に癒えておらず、マシンから降りて歩く姿はまだ痛々しげでしたが、それでもこの高速サーキットで勇敢な走りを披露したマルティンは、再び3位に入る大健闘を見せました。

ケガそのものは不幸な出来事でしたが、その不運をバネに、マルティンはますます逞しいライダーへ、そして逞しい人間へと成長しました。マドリード出身のこの若者は、シーズン終盤の戦いに向けてますます力強いレースを続けていくでしょう。