シーズン前半戦では苦戦を強いられていたエネア・バスティアニーニ(Estrella Galicia 0,0)が、いよいよ彼本来の高いパフォーマンスを発揮し始めました。
若干19歳のバスティアニーニは、2015年にMoto3クラスの年間ランキングで総合3位、2016年には同クラスで2位を獲得。2017年シーズンは、開幕前からチャンピオン争いの有力な一角と考えられていました。しかし、第3戦アメリカズGPと第7戦カタルニアGPでの4位が前半戦のベストリザルトで、それ以外のレースでは苦戦の連続でした。
その厳しい流れが大きく変わりはじめたのは、8月下旬の第12戦イギリスGPでした。5列目15番グリッドという後方からのスタートでしたが、決勝レースでは力強い走りを披露し、レース終盤には優勝を射程距離に収めます。しかし、ラスト2周の後半セクションで転倒が発生したために、最終ラップに赤旗が提示されてレースが終了。結果、バスティアニーニは2位でレースを終えることになりましたが、赤旗がなければ優勝も狙えていたかもしれない、と決勝後に語りました。
「今年は厳しいシーズンだったので、今日はとてもいい順位でした。チームにも、僕にとってもとても意義の大きいリザルトです。今朝のウォームアップでマシンを微調整したので、レースでもいい走りができました。最終ラップでは(ホルヘ)マルティン(Del Conca Gresini Racing Moto3)選手にピタリとつけていたのですが、赤旗で状況が大きく変わってしまいました。結果は2位でしたが、ハッピーです。最後の2つのコーナーでオーバーテイクして勝ちに行くプランだったのですが、狙った通りには運びませんでした。次戦のミサノ(第13戦サンマリノGP)は僕の地元で、大好きなコースです。好リザルトを狙えると思います」
その言葉通り、第13戦サンマリノGPでバスティアニーニは予選最速タイムを記録。しかもミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリのラップレコードを塗り替えるというおまけつきでした。
「ポールポジションを取れてハッピーです。シルバーストーン(イギリスGP)の結果は偶然ではない、と示すことができました。この通り、どんどん改善も進んでいます。このコースは僕のライディングスタイルに合っていて、それがアドバンテージになりました」
しかし、トップタイムで予選を終えたバスティアニーニにとって最も気がかりなのは、翌日曜日の天候でした。
「もし、明日が雨になるなら、ウエット用のいいセットアップを見つける必要があります。ポールポジションはうれしいのですが、やはりそれよりも気になるのは、明日いいレースをする、ということです」
この不安は的中してしまい、日曜は大荒れのレースに。雨の中で16名の選手たちが転倒リタイアを喫し、バスティアニーニもこのコンディションの犠牲になりました。2度転倒しながらも、バスティアニーニはマシンを引き起こして最後まで走りきり、14位でゴール。2ポイントを獲得しました。
その2週間後に行われた第14戦アラゴンGPもイレギュラーなレース展開になりました。決勝レースが行われる日曜の朝に濃霧が発生。そのためにスケジュールが遅れ、Moto3クラスのレースは当初に予定されていた20周から13周へと変更になりました。最終ラップは同じHonda陣営のホアン・ミル(Leopard Racing)、ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Del Conca Gresini Racing Moto3)との三つ巴の激闘となり、バスティアニーニは優勝したミルからわずか0.051秒差の3位でチェッカーフラッグを受けました。
シーズン前半の苦戦と対照的に、後半戦で大きく復調してきた理由について、バスティアニーニは、マシンに気持ちよく乗れるようになってきたからだと話します。
「今年のマシンに合うように自分自身の乗り方を変え、苦手だったレース序盤でいいバトルをできるように、セットアップも見直しました。今日はフルタンクの状態でも、ほかの選手たちをかなり楽にオーバーテイクしていけました。その結果、レース最後の数ラップでさらに力を発揮できました」
次戦日本GPの舞台となるツインリンクもてぎは、バスティアニーニにとって非常に相性のいいコースです。
「昨年は優勝しましたからね。週末を通して安定感を発揮することが重要です。レースでも全力で臨みますよ」
