Honda Riders Close Up ~ワークスマシンを駆って、世界に挑むライダー~

Moto3 アーロン・カネット Estrella Galicia 0,0

Moto3 アーロン・カネット Estrella Galicia 0,0
Profile
生年月日
1999/09/30
出身地
スペイン
身長・体重
169cm・62kg
チーム(マシン)
Estrella Galicia 0,0(NSF250RW)
2016年の成績
Moto3 総合15位
Vol.2

Estrella Galicia 0,0からMoto3クラスに参戦する17歳のスペイン人ライダー、アーロン・カネットは、2年目の世界選手権シーズンで高い安定性を発揮しています。第11戦オーストリアGP終了時点でのランキングは3位。第3戦アメリカズGPと第9戦ドイツGPではポールポジションを獲得し、地元開催となった第4戦スペインGPでは初優勝も達成しました。続く第8戦オランダGPは、大混戦のレースを巧みな戦略で制して、シーズン2勝目を挙げました。

こうしたシーズン前半の戦いぶりについて、カネットは自分たちが続けてきた努力のたまものだと振り返ります。

「僕たちは、いい結果を目指してがんばってきたし、チームも僕をずっと信じてくれていました。トップグループでいつも優勝争いを繰り広げることができる、という確かな手応えはつかんでいました」

さらに自分自身をたくましくしたのは第3戦アメリカズGPでの苦い経験だった、とカネットは話します。

「オースティンでは、ほぼ全セッションでだれよりも圧倒的な速さで走れていたので、簡単に勝てそうだという自信がありました。でも、その自信こそが自分をよく分かっていない証拠だったんです。決勝レースでは、トップを走っているときに転倒してしまいました。優勝はできませんでしたが、自分を成長させるための貴重な経験になりました。なにより、レース中は地に足をつけて戦いに集中し、優勝を想像して浮き足立たないことの大切さを学びました。あのときは(ロマーノ)フェナティ選手(Marinelli Rivacold Snipers)とのトップ争いで気持ちが落ち着かず、転倒する結果になってしまいました。でも、あの出来事があったおかげで、レースの戦い方について学習することができました」

カネットは現在、年間ランキングで3位につけていますが、チャンピオン争いは念頭になく、王座獲得も特に気にする様子はありません。

「タイトル獲得は気にしていません。もちろん可能性はゼロではないと思いますが、今の僕はそこを目指しているわけではないんです。僕の目標は、シーズンを通してしっかりと学習を続けることです。今年は〈チャンピオンを獲りに行く〉のではなく、〈チャンピオンの獲り方を学ぶ〉シーズンだと考えています。この学習過程の最中にチャンピオンを獲れれば、それはもちろんとてもうれしいことです。でも、チャンピオン獲得を気にしすぎて寝られなくなったり、自分のレースに対する向き合い方が変わってしまうようなことになれば、それこそ本末転倒です。今シーズンの結果がどうであれ、一生懸命戦って、多くのことを学び取るシーズンにできれば、僕はそれで大満足です」

カネット自身が上でも述べている通り、今シーズンの彼の健闘は、オースティンでの失敗から得た大きな教訓によるものです。

「今年のレースでは、開幕前から目標にしていた通り、いつもトップグループで表彰台争いができています。オースティンで転倒をしなければもっといい成績を望めていたのかと言うと、僕はそうは思いません。むしろ、あの失敗から学んだことによって、ヘレスやアッセンで勝つことができたのだと思います」

夏休みが明けてシーズン後半戦の端緒を切った第10戦チェコGPでも、カネットはすばらしい走りを披露しました。17番グリッドという後方からのスタートであったにもかかわらず、落ち着いた走りで着々と順位を上げてゆき、最後は3位でゴール。今季4回目の表彰台獲得となったのです。2週連続開催となった第11戦オーストリアGPのレッドブル・リンクでは、5位でチェッカーを受け、11ポイントを獲得してランキング3位の座をさらにしっかりと固めました。

「レース中は集団内でのレイトブレーキ競争が激しく、我慢比べのような厳しい戦いでした」

レースを終えたカネットは、そう言って全23周のバトルを振り返ります。

「レース序盤はマシンのフィーリングがあまりよくなく、難しい展開になりそうだったので、乗り方を工夫して対応しました。次第にうまく走れるようになり、集団に追いつくことができました。残念ながら表彰台は獲得できませんでしたが、ランキング2位の選手とのポイント差を詰めることはできました。次のレースでは、さらにがんばっていい結果を目指したいと思います」