Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 162

し烈さを増すタイトル争い。すべての決着は最終戦へ持ち越し

日本、オーストラリアからの3連戦となった第17戦マレーシアGPは、前戦のオーストラリアGP同様、3日間を通じて不安定な天候の中で行われました。午前中はところどころで青空が広がる天候となり気温も30℃を超え、熱帯の国マレーシアらしい天候となりますが、午後にかけて雲が多くなり、断続的に雨が降りました。そのため、ドライコンディションで走れたのは、金曜日、土曜日の午前中のフリー走行だけ。その他のフリー走行、予選、決勝はウエットコンディションとなりました。

3連戦最初の戦いとなった第15戦日本GPで2年ぶり3度目のタイトルを獲得しているマルク・マルケス(Repsol Honda Team)は、第16戦オーストラリアGPでは今季7度目のポールポジション(PP、歴代第1位となる通算65度目)を獲得し、決勝でもトップを快走する活躍をみせましたが、転倒による痛恨のリタイア。3連戦最後の戦いとなる今大会は、チャンピオン獲得後、初優勝、初表彰台を目標に挑む大会となりました。しかし、開幕前に胃腸炎になり体調を崩します。そのため金曜日午後のフリー走行をキャンセルするなど万全の状態ではありませんでした。

それでも、予選では2列目4番手。激しいスコールのため20分遅れでスタート進行が始まった決勝では、レース中盤までアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)に続き4番手を走行しトップグループに加わりました。

序盤はコースに溜まっている水の量が多く難しい状況でしたが、雨が上がっていることから次第にペースが上がることが予想され、マルケスはタイヤを温存し、終盤の戦いに備えていました。そして、これからトップグループの戦いに加わろうかというレース中盤の12周目11コーナーでフロントのグリップを失い転倒。優勝戦線から脱落しました。しかし、再スタートを切ったマルケスは、15番手でコースに復帰すると、転倒前と変わらないペースで追い上げ、19周のレースで11位でフィニッシュしました。

負傷欠場のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)の代役として、日本GPに続き2戦ぶりに出場した青山博一は、フリー走行、予選では、ブレーキングの安定性に苦しみ17番グリッド。決勝は、後方からのスタートだったため、序盤の雨量の多いコンディションでは視界が悪くペースを上げられず苦戦し、さらに後方集団の混戦を抜け出すのに時間がかかり大幅にタイムロス。本来のペースに戻ったときには前のグループとの差が大きく16位でフィニッシュするのがやっとでした。

―今大会も3日間を通じて不安定な天候になりました。Repsol Honda Teamの決勝の戦略は?

「マルクの戦略は、レース序盤はあまりプッシュしすぎないようにして、終盤のためにタイヤを温存することでした。彼はすばらしい仕事をしていましたが、残念ながら突然11コーナーで転倒してしまいました。しかしながら、彼はマシンを起こしてレースに復帰、再びすばらしいペースをみせ、ポジションもいくつか取り戻し、転倒したにもかかわらず11位でフィニッシュしました。ヒロ(青山博一)は前半は苦戦しましたが、終盤でラップタイムを更新しました。残念ながら、彼がいいフィーリングをつかんだときには、前のグループとは離れすぎていました。そのためポイント圏外の16位でフィニッシュとなりました」

―マルケス選手が11位、青山博一選手が16位。残念な結果でしたが、今大会のよかった点、悪かった点は?

「ポジティブなことはマルクがドライでもウエットでもレースウイークを通して表彰台争いができるスピードをみせたことです。2月のウインターテストで走ったときよりも、かなり前進していました。これはシーズン中にエンジニアたちがすばらしい仕事をした結果です。ネガティブなことはチームタイトルで大きくポイントを失ったことです。Movistar Yamaha MotoGPの後ろに下がってしまいました。バレンシアではこれらのポイントを取り戻せるようにベストを尽くします」

―レース中、ピットウォールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「序盤はマルクが状況をコントロールしていたし、うれしかったです。彼は雨にも関わらずカーボンフロントブレーキディスクを選びました。通常、雨のときに使うスティールブレーキよりも、今大会はカーボンの方がブレーキング時の温度が高く、感触もいいと感じたからです。これはいい選択となり、レース終盤のラップタイムはとてもよかったです。転倒後に、マシンを起こして、きちんと結果を持ち帰ったことはうれしかったですね」

―マルケス選手がウエットレースでカーボンブレーキを使用したのは初めてですか?

「はい、そうです。今回が初めてです。マルクはこのサーキットのハードブレーキングエリアでもっと強くなれるようにカーボンブレーキを選びました。また、スタート前に雨が止んだことと、このサーキットの路面温度がウエットでも高いためです。彼はこの選択について満足しています。そして転倒したことと、このブレーキを選んだことは関係ありません」

―今大会のサイドストーリーを教えてください。

「土曜日の夜、マルクとヒロは Honda Asian Journeyという企画でセパンに到着したHondaファンにあいさつに行きました。これは大きなイベントで、公道でHondaの大型バイクを楽しんでもらうというものです。今シーズン初めてマレーシアで600kmのツアーが企画されました。イベントにはHondaの顧客やディーラー、そしてジャーナリストも約50人くらいが参加しました」

第15戦日本GPでマルケスが個人タイトルを獲得。Hondaはコンストラクターズタイトルでも王手をかけていますが、決定は最終戦バレンシアGPへと持ち越しました。首位のHondaは17戦を終えて、349点。2番手のヤマハに21点差をつけています。17戦を終えてHondaは9勝を上げており、最終戦のタイトル決定の条件は、Honda勢が12位以上(4点以上獲得)でフィニッシュすれば自力でコンストラクターズタイトル決定というものです。2年ぶり22度目のタイトル獲得に期待されます。

また、チームタイトルは、Movistar Yamaha MotoGPが444点。総合首位につけていたRepsol Honda Teamは434点で2番手となり、10点差を追う展開となりました。最終戦バレンシアGPでは逆転を目指しチーム一丸となって戦うことになります。また、最終戦では、負傷欠場中のペドロサが復帰する予定です。Repsol Honda Teamは、今季のラストレースで1-2フィニッシュを目指します。

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