Livio Suppo Track Report Livio Suppo Track Report

Vol. 159

マルケスが今季4勝目を挙げ、Hondaの3冠が現実味を帯びる

今年で7回目の開催となった第14戦アラゴンGPでは、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)が、今季4勝目を挙げました。フリー走行、予選、ウォームアップでトップタイム。万全の状態で決勝に挑んだマルケスは、その走りを見事に再現し、第9戦ドイツGP以来、5戦ぶりの優勝を達成しました。

生まれ育ったサルベラからモーターランド・アラゴンのあるアルカニスまで約170km。地元ファンが大挙して詰めかけた今大会において、マルケスはファンの期待に応えるすばらしい走りを披露し、大きな拍手を送られました。

初日のフリー走行はタイヤテストに集中。チームメートのダニ・ペドロサに続く2番手でした。2日目のフリー走行では快調に連続ラップを刻み、予選Q2にトップタイムで進出。予選前に行われるフリー走行(FP4)でも、決勝を想定した連続周回をこなし、トップタイムをマークしました。セッションをこなすごとに調子を上げたマルケスは、Q2でもライバルを圧倒。2番手のマーベリック・ビニャーレス(スズキ)に0.631秒差をつけて今季6度目のポールポジションを獲得しました。

決勝では、2周目にトップに浮上するも、3周目の7コーナーで転倒寸前の滑りを経験してオーバーラン。それで5番手まで順位を落としますが、先行するアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ)、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)、ビニャーレス、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)を次々にパス。レース中盤にトップに浮上すると、後続を引き離して優勝しました。

これでマルケスは2013年以来、3年ぶりにアラゴンGPを制覇。Hondaとしては、11年にケーシー・ストーナー、12年にペドロサ、13年と今年にマルケスとなり、4度目の優勝でした。

これでマルケスは、大会3位で総合2位のロッシとの差を52点に広げ、大会2位で総合3位のロレンソとの差は66点としました。

前戦サンマリノGPで今季初優勝を達成し、意気が上がるペドロサは、初日のフリー走行でトップタイムをマーク。好調なスタートを切りました。ところが、フロントローの獲得が期待されていた予選は、自己ベストを更新しているラップに転倒を喫すなどし、7番手止まりでした。3列目からのスタートとなりましたが、決勝に向けての連続ラップでは、十分に表彰台を狙えるアベレージを刻んでいただけに、追い上げのレースが期待されました。

そうして迎えた決勝では、フロントタイヤにトラブルが発生し、5番手争いの集団の中で苦戦しました。その結果、中盤はカル・クラッチロー(LCR Honda)の後塵を拝し、終盤はアレイシ・エスパルガロ(スズキ)に先行を許しますが、最終ラップに逆転し、苦しい戦いを6位でフィニッシュ。地元ファンを喜ばせました。

―フリー走行と予選は順調だったと思いますが、今大会の戦略はどんなものでしたか?

「両選手ともに、2日間のプラクティスはとてもポジティブで、決勝レースに向けての戦略も同じようなものでした。マルクは、プラクティスセッションのペースがとてもよかったので、表彰台争い、優勝争いができると思っていたんです。そこでマルクの戦略は、序盤からトップグループについていき、タイヤマネージメントに取り組み、最後にアタックするというものでした。レース序盤、フロントが滑ったときにポジションをいくつか落とし、その遅れを取り戻さなければいけなくなりましたが、期待通りの結果を出しました。残念ながらダニにとっては、とても難しいレースになりました。ただ、フロントタイヤに問題を抱えながらも彼の走りはすばらしく、完走して一日を終えられました。タイヤに関しては、ミシュランが調査するようです」

―マルケス選手が今季4勝目。タイヤにトラブルを抱えながら、ペドロサ選手が6位。今大会のよかった点などを教えてください。

「ポジティブな点は明らかです。マルクが優勝してチャンピオンシップでリードを広げたことですね。ネガティブな点はダニがフロントタイヤに苦しみ、前戦ミサノのように才能を発揮できなかったことです。残念でした」

―レース中、ピットウオールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「マルクがフロントを滑らせたとき、私たちは心臓発作を起こしそうになりました。でも、それから彼は一つずつポジションをばん回していくことになります。すばらしい追い上げが見られてよかったです。フリー走行、予選の走りを見事に再現しました。ダニに関しては、本来のポテンシャルにほど遠い走りだったし、なにか問題があることは分かっていました。ただガレージに戻ってくるまで、なにが起きたのかは分かりませんでした」

―今大会のサイドストーリーを教えてください。

「青山真二二輪事業本部長が、今週末にアラゴンを訪れ、決勝では表彰台に上がって、コンストラクターズトロフィーを受け取りました。マルクと一緒にシャンパンファイトを楽しんだと思います」

―レッドブルルーキーズカップに出場する佐々木歩夢選手が、日本人として初めてタイトルを獲得しました。Hondaがサポートする若い選手の活躍について、感想を聞かせてください。

「佐々木さんの活躍は、とてもうれしいことです。2015年にアジアタレントカップでチャンピオンになった彼が、今年はルーキーズカップのチャンピオンになったからです。アジアタレントカップが、将来のGPライダーたちにとって、とてもよく準備されたものだということが証明されました。アルベルト・プーチ(元GPウイナー)と彼のチームは、ドルナやHRCとともに、アジアのモーターサイクルレースのPRに貢献しています。そしてこのプロジェクトをとてもうれしく思っています。佐々木さんと彼の周囲の人々におめでとうと言いたいです。若いアジアの選手たちが、彼の優勝に刺激を受けることを願っています」

第14戦アラゴンGPを終えて、シーズンは残り4戦となりました。タイトル争いは、これから大詰めを迎えることになりますが、日本、オーストラリア、マレーシアと続く3連戦が、タイトル争いの大きな山場となります。

2年ぶり3度目のタイトル獲得に大きな注目が集まるマルケス。今季7勝目を挙げたHondaは、コンストラクターズランキングにおいて291点を獲得し、2位のヤマハに13点のリード。チームランキングでは、Repsol Honda Teamは403点を獲得して、2位のMovistar Yamaha MotoGPに25点差をつけて首位をキープ。HondaとRepsol Honda Teamは、2年ぶりの3冠に向けて、また一歩前進しました。

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